4月29日（金）伊藤 恵 ピアノ・リサイタル 
～春をはこぶコンサート ふたたび～
「ベートーヴェンの作品を中心に」Vol.3
紀尾井ホール
【曲目】
1．シューマン／6つの間奏曲 Op.4
2．ベートーヴェン／ピアノ・ソナタ第28番イ長調 Op.101
3．シューベルト／12のドイツ舞曲 D790
4．ベートーヴェン／ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
【アンコール】
♪ シューベルト／楽興の時第3番
♪ ベートーヴェン／エリーゼのために
過去2年に渡る公演中止の末に3年ぶりに戻ってきた伊藤恵さんの「春をはこぶコンサート」シリーズ。僕にとっては4年ぶりの再会となった。近年は益々深みを増してきた恵さんのピアノが、より一層深化しているのを感じるリサイタルとなった。
「ベートーヴェンの作品を中心に」と題され、ベートーヴェンの後期のソナタ2つに、シューベルトとシューマンを合わせたプログラムの最初は、シューマンの初期の作品。感情の赴くまま、夢想的にさまようアプローチではなく、むしろ淡々とした調子から紡ぎ出される語りかけや詩情が、味わい深さを静かに醸し出していた。
次はベートーヴェンの作品101のソナタ。冒頭の優しい語りかけが心に温もりを伝えてきた。飾らない親密さが、ベートーヴェンの素顔を見せてくれるよう。第2、第3楽章も含めて、パワーや激しい攻めよりも、大きな包容力で聴き手を説得する自然体の演奏。それだけに、第3楽章で再現される冒頭のモチーフがジーンと来た。
休憩の後はシューベルト。短い舞曲を次々と連ねる音楽からは、さりげない歌心や愛情が伝わってくる。僕にとっては馴染みの薄い作品だが、ショパンのマズルカから醸し出されるような純朴な風情や香りがあり、どの曲からも親しみが感じられた。終曲の静かな語りが、物語のエピローグ的にじんわりと温かな感覚を残した。
そして最後、ベートーヴェンの31番のソナタでは、このリサイタルで恵さんが伝えてきたものを総決算するような境地を聴かせた。それは、人生の苦悩や荒波を乗り越えて至った悟りの世界のような深遠で静謐な世界。全てを優しく包み込み、更に高みへと昇華して行く。ピュアで美しい高音は、天からの啓示のように穏やかな光りを放っていた。
演奏のあとのトークで、このソナタについて「写経しているような気分。「嘆きの歌」はベートーヴェン自身のプライベートな嘆きを超えた人類の嘆きを伝えている」と恵さんは語ってくれたが、まさにそうした万民の心の拠りどころとなるようなメッセージが込められ、慈愛に溢れる演奏に深い感動を覚えた。
恵さんは、歳を重ねるごとに深さと大きさを広げているが、実際の年齢より更に先を歩いているような名匠ぶり。今後の活躍に益々期待が膨らんだ。
1週間前の紀尾井ホールでのコンサートで、相変わらずの感染対策（長々とした細かいアナウンスを何度も流したり、スタッフは全員フェイスシールドを付けていたり、時差退場の最後に「会場の外でも立ち止まらず…」と余計なお世話なコメントを加えたり…）が、心豊かにコンサートを味わう上で邪魔になっているとことをアンケートに書いて送った。
すぐに対策緩和は難しいと思っていたが、スタッフさんは全員フェイスシールドを外していたのは嬉しい驚き。開演前に長々と流れていたアナウンスもなく、時差退場はあったが、最後の余計な一言はカットされていた。僕の訴えを聞いてくれての対応かどうかはわからないが、気持ちよく演奏会を楽しむことが出来て嬉しかった。今後は更に、クロークやバーコーナーを是非再開してもらいたい。
伊藤 恵 春をはこぶコンサート ふたたび 2018.4.29 紀尾井ホール
伊藤 恵 ピアノ・リサイタル 2017.3.24 ヤマハホール
伊藤 恵／新・春をはこぶコンサートVolⅦ 2014.4.29 紀尾井ホール
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～春をはこぶコンサート ふたたび～
「ベートーヴェンの作品を中心に」Vol.3
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2．ベートーヴェン／ピアノ・ソナタ第28番イ長調 Op.101
3．シューベルト／12のドイツ舞曲 D790
4．ベートーヴェン／ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
【アンコール】
♪ シューベルト／楽興の時第3番
♪ ベートーヴェン／エリーゼのために
過去2年に渡る公演中止の末に3年ぶりに戻ってきた伊藤恵さんの「春をはこぶコンサート」シリーズ。僕にとっては4年ぶりの再会となった。近年は益々深みを増してきた恵さんのピアノが、より一層深化しているのを感じるリサイタルとなった。
「ベートーヴェンの作品を中心に」と題され、ベートーヴェンの後期のソナタ2つに、シューベルトとシューマンを合わせたプログラムの最初は、シューマンの初期の作品。感情の赴くまま、夢想的にさまようアプローチではなく、むしろ淡々とした調子から紡ぎ出される語りかけや詩情が、味わい深さを静かに醸し出していた。
次はベートーヴェンの作品101のソナタ。冒頭の優しい語りかけが心に温もりを伝えてきた。飾らない親密さが、ベートーヴェンの素顔を見せてくれるよう。第2、第3楽章も含めて、パワーや激しい攻めよりも、大きな包容力で聴き手を説得する自然体の演奏。それだけに、第3楽章で再現される冒頭のモチーフがジーンと来た。
休憩の後はシューベルト。短い舞曲を次々と連ねる音楽からは、さりげない歌心や愛情が伝わってくる。僕にとっては馴染みの薄い作品だが、ショパンのマズルカから醸し出されるような純朴な風情や香りがあり、どの曲からも親しみが感じられた。終曲の静かな語りが、物語のエピローグ的にじんわりと温かな感覚を残した。
そして最後、ベートーヴェンの31番のソナタでは、このリサイタルで恵さんが伝えてきたものを総決算するような境地を聴かせた。それは、人生の苦悩や荒波を乗り越えて至った悟りの世界のような深遠で静謐な世界。全てを優しく包み込み、更に高みへと昇華して行く。ピュアで美しい高音は、天からの啓示のように穏やかな光りを放っていた。
演奏のあとのトークで、このソナタについて「写経しているような気分。「嘆きの歌」はベートーヴェン自身のプライベートな嘆きを超えた人類の嘆きを伝えている」と恵さんは語ってくれたが、まさにそうした万民の心の拠りどころとなるようなメッセージが込められ、慈愛に溢れる演奏に深い感動を覚えた。
恵さんは、歳を重ねるごとに深さと大きさを広げているが、実際の年齢より更に先を歩いているような名匠ぶり。今後の活躍に益々期待が膨らんだ。
1週間前の紀尾井ホールでのコンサートで、相変わらずの感染対策（長々とした細かいアナウンスを何度も流したり、スタッフは全員フェイスシールドを付けていたり、時差退場の最後に「会場の外でも立ち止まらず…」と余計なお世話なコメントを加えたり…）が、心豊かにコンサートを味わう上で邪魔になっているとことをアンケートに書いて送った。
すぐに対策緩和は難しいと思っていたが、スタッフさんは全員フェイスシールドを外していたのは嬉しい驚き。開演前に長々と流れていたアナウンスもなく、時差退場はあったが、最後の余計な一言はカットされていた。僕の訴えを聞いてくれての対応かどうかはわからないが、気持ちよく演奏会を楽しむことが出来て嬉しかった。今後は更に、クロークやバーコーナーを是非再開してもらいたい。
伊藤 恵 春をはこぶコンサート ふたたび 2018.4.29 紀尾井ホール
伊藤 恵 ピアノ・リサイタル 2017.3.24 ヤマハホール
伊藤 恵／新・春をはこぶコンサートVolⅦ 2014.4.29 紀尾井ホール
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