12月1日(水)ジャン=マルク・ルイサダ(Pf)
東京芸術劇場
【曲目】
1.ショパン/4つのマズルカOp.24
2.ショパン/ノクターン ロ長調Op.62-1
3.ショパン/スケルツォ第2番変ロ短調Op.31
4.ショパン/スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39
5.ショパン/スケルツォ第4番ホ長調Op.54
6.シューマン/ダヴィッド同盟舞曲集Op.6
7.ショパン/ワルツ 変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」
8.ショパン/3つのワルツOp.34
【アンコール】
ショパン/ノクターン 変ホ長調Op.9-2
ルイサダといえば、1985年のショパンコンクールのドキュメンタリー番組で、優勝したブーニンの陰で、人間味のあるとてもいい表情を見せていた映像を思い出す。最近ではNHKピアノスーパーレッスンでの、茶目っ気たっぷりで味のあるレッスンぶりが思い浮かぶ。一度聴いてみたいと思っていてようやく実現した今夜のリサイタル。ショパンのワルツ全曲とスケルツォ全曲がプログラムとして発表されていたが、行って見ると大幅に変更されていた。ワルツ全曲というのはなかなかないので残念。。。
しかし、最初のマズルカを聴いたら、残念な気持ちはどこかへ行ってしまった。それほど素晴らしいマズルカだった。ルイサダの演奏を一言で表現すれば、「哀しいほどの優しさ」だろうか。憂える人の心のなかにそっと入ってきて、さりげなく気取らない笑顔で、でも本心から同じ気持ちになって寄り添ってくれる優しさ。どこまでもデリケートな音色と語り口で紡がれる旋律に、伴奏がしっとりと絡まり、優しい眼差しが注がれる至福の調べ。演奏を終えると、譜めくりの女性にも丁寧にお辞儀をし、その譜めくりさんもガッツポーズで拍手を送るという、ステージ上での親密なやり取りからも、ルイサダの人柄が表れていて、それが演奏からも滲み出ている。
次はスケルツォのはずが、演奏されたのはプログラムでは後になっていたノクターン。これも極上の調べを奏で、深い慈しみが伝わってきた。後半のトリルの連続で奏でられるメロディーが、穏やかに満たされた気持ちで打ち震える心の律動に聴こえた。耽美的とも言える美しさだ。
その後演奏されたスケルツォでは、やはり内面から語りかけるような場面で魅力を感じたが、マズルカのような小規模な作品に比べるとダイナミックの幅が拡がるし、華やかさも求められるし、それなりの構成力もものを言ってくる。そうした観点からは、ルイサダの魅力はマズルカのような小品でより発揮されるように感じた。
シューマンイヤーにも敬意を表したのか、後半の最初にはシューマンの長い作品が取り上げられた。長いと言ってもこれはシューマンお得意の小品の集まった作品。よく知らない曲だが、ルイサダはまたデリケートで夢見るような美しい演奏を聴かせてくれた。とりわけ最後の2曲は、瞑想的な深い世界へ誘ってくれた。
最後はショパンのワルツが4曲。ショパンのワルツの中でもイ短調を除き、華やかさが際立つ曲で、ここでルイサダは、持ち前の親しみ深さにダイナミックな幅を広げた華やかな演奏を聴かせてくれたが、前半のマズルカやノクターンほどは心に訴えてこない。イ短調はちょっと入れ込み過ぎのような気も・・・ 最後のバスのアリアは、もっと淡々と歌って欲しい。
その過度な入れ込みが、アンコールの有名なノクターンでは更に強まった。ちょっと一杯やってほろ酔い気分で歌っているように、コントラストをたっぷりつけ、テンポを揺らす。アンコールということを意識した演奏だったのかも知れないが、うーむ、これもちょっと・・・
だけど、最初のマズルカの印象は変わらない。最近リリースしたという「マズルカ集」のCDは是非聴いてみたい。今度リサイタルに行くならマズルカ集かな。そのときは、当日曲目変更はダメだよ。
東京芸術劇場
【曲目】
1.ショパン/4つのマズルカOp.24
2.ショパン/ノクターン ロ長調Op.62-1
3.ショパン/スケルツォ第2番変ロ短調Op.31
4.ショパン/スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39
5.ショパン/スケルツォ第4番ホ長調Op.54
6.シューマン/ダヴィッド同盟舞曲集Op.6
7.ショパン/ワルツ 変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」
8.ショパン/3つのワルツOp.34
【アンコール】
ショパン/ノクターン 変ホ長調Op.9-2
ルイサダといえば、1985年のショパンコンクールのドキュメンタリー番組で、優勝したブーニンの陰で、人間味のあるとてもいい表情を見せていた映像を思い出す。最近ではNHKピアノスーパーレッスンでの、茶目っ気たっぷりで味のあるレッスンぶりが思い浮かぶ。一度聴いてみたいと思っていてようやく実現した今夜のリサイタル。ショパンのワルツ全曲とスケルツォ全曲がプログラムとして発表されていたが、行って見ると大幅に変更されていた。ワルツ全曲というのはなかなかないので残念。。。
しかし、最初のマズルカを聴いたら、残念な気持ちはどこかへ行ってしまった。それほど素晴らしいマズルカだった。ルイサダの演奏を一言で表現すれば、「哀しいほどの優しさ」だろうか。憂える人の心のなかにそっと入ってきて、さりげなく気取らない笑顔で、でも本心から同じ気持ちになって寄り添ってくれる優しさ。どこまでもデリケートな音色と語り口で紡がれる旋律に、伴奏がしっとりと絡まり、優しい眼差しが注がれる至福の調べ。演奏を終えると、譜めくりの女性にも丁寧にお辞儀をし、その譜めくりさんもガッツポーズで拍手を送るという、ステージ上での親密なやり取りからも、ルイサダの人柄が表れていて、それが演奏からも滲み出ている。
次はスケルツォのはずが、演奏されたのはプログラムでは後になっていたノクターン。これも極上の調べを奏で、深い慈しみが伝わってきた。後半のトリルの連続で奏でられるメロディーが、穏やかに満たされた気持ちで打ち震える心の律動に聴こえた。耽美的とも言える美しさだ。
その後演奏されたスケルツォでは、やはり内面から語りかけるような場面で魅力を感じたが、マズルカのような小規模な作品に比べるとダイナミックの幅が拡がるし、華やかさも求められるし、それなりの構成力もものを言ってくる。そうした観点からは、ルイサダの魅力はマズルカのような小品でより発揮されるように感じた。
シューマンイヤーにも敬意を表したのか、後半の最初にはシューマンの長い作品が取り上げられた。長いと言ってもこれはシューマンお得意の小品の集まった作品。よく知らない曲だが、ルイサダはまたデリケートで夢見るような美しい演奏を聴かせてくれた。とりわけ最後の2曲は、瞑想的な深い世界へ誘ってくれた。
最後はショパンのワルツが4曲。ショパンのワルツの中でもイ短調を除き、華やかさが際立つ曲で、ここでルイサダは、持ち前の親しみ深さにダイナミックな幅を広げた華やかな演奏を聴かせてくれたが、前半のマズルカやノクターンほどは心に訴えてこない。イ短調はちょっと入れ込み過ぎのような気も・・・ 最後のバスのアリアは、もっと淡々と歌って欲しい。
その過度な入れ込みが、アンコールの有名なノクターンでは更に強まった。ちょっと一杯やってほろ酔い気分で歌っているように、コントラストをたっぷりつけ、テンポを揺らす。アンコールということを意識した演奏だったのかも知れないが、うーむ、これもちょっと・・・
だけど、最初のマズルカの印象は変わらない。最近リリースしたという「マズルカ集」のCDは是非聴いてみたい。今度リサイタルに行くならマズルカ集かな。そのときは、当日曲目変更はダメだよ。