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アルテミス・カルテット

2018年06月11日 | pocknのコンサート感想録2018
6月8日(金)アルテミス・カルテット 
~クァルテットの饗宴2018~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第3番ニ長調Op.18-3
2. ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」
3. シューマン/弦楽四重奏曲第3番イ長調 Op.41-3
【アンコール】
1. バッハ/コラール
2.モーツァルト/弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」~第2楽章

ベルリンを拠点に世界で活躍しているアルテミス・カルテットは、メンバー交代を経ながらも30年近く活動を続けている。今夜、紀尾井ホールで聴いたこのカルテットの演奏は、正にそうした長い時間の熟成を感じた。

最初のベートーヴェンが始まってすぐに感じたのは、丁寧に練られた落ち着きと香り高い響きの美しさ。無理のない自然な息遣いで、若いベートーヴェンのファンタジーを優しく紡いでいった。第2楽章の長いロンドからは、後期の作品と思われるような深みと味わいも湛えていた。

続くヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」は、今夜の白眉と云える名演。トルストイの同名の小説に触発されて生まれたというこの作品、小説を読んだことはないが、この物語の映画を観ているような気持ちになった。美しい映像のなかで人物がクローズアップされ、疑いや苦悩、困惑や憎しみの感情が表情に表れ、悲劇へと突き進んで行く人間模様。

度々登場するスル・ポンティチェロによるトレモロが、胸をかきむしられるほど悲痛に聴こえたのは、それと対比するフレーズの表情が、あまりに穏やかで温かく演奏されたため、苦しみが余計に浮き彫りになるのだろう。ただ、聴き終わったあとは、痛みと共に、妻を殺してしまった後悔や、妻への愛しさが温もりを伴って残っているのを感じた。様々な感情が内包された作品の完成度の高さが、演奏で体現されたと云える。

後半のシューマンは、ヤナーチェクで傷ついた心を癒すように、優しく温かく歌いかけてきた。一人一人の語り口の穏やかさ、やさしさが、心を解きほぐしてくれた。4人が奏でる響きは、温かい空気をたっぷり抱いた柔らかな羽毛のように感じた。そしてアンコールの2曲、4人で和する弱音の穏やかなハーモニーの美しさ、柔らかさが、深く静かに、心の奥底に沁み渡った。

上3声のプレイヤーは立って演奏し、チェロは高い小さな台に乗って演奏する珍しい姿を見ていて、これは以前コンサートで見たことがある気がしてきた。帰ってから自分のブログを検索したら、4年前に紀尾井ホールでこのカルテットを聴いていた!その頃は、ヴィオラのヴァイグレが健在で今回とはメンバーが異なるが、その時の感想は今回の演奏にもぴったりと当てはまる。それどころか、更に完成度や深化が高まったようにも思えた。もうこのカルテットの名前も、演奏も、忘れることはないだろう。

アルテミス・カルテット 2014.5.27 紀尾井ホール
ブログ管理人作曲によるCD
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~(MS:小泉詠子/Pf:田中梢)

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