12月5日(水)ヒラリー・ハーン(Vn)
~ソナタ&パルティータ 全曲演奏会Ⅱ~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV1003
2. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006
3. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
【アンコール】
バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番~第3曲「サラバンダ」
2005年にオペラシティで初めてヒラリー・ハーンのリサイタルを聴いたときの感動と衝撃は、今でもリアルに記憶に刻まれている。翌年の来日時、もらえるはずだったサインを不覚にももらい損ねてしまったショックがしばらく後をひくほど惚れ込んだヴァイオリニストは、その後の演奏活動で様々な試みを重ねてきた。そうした活動の全てに賛同していたわけではなく、オーソドックス路線に戻って欲しいというのが本音だった。そんなハーンが、オーソドックス中のオーソドックス路線であるバッハの無伴奏全曲を引っ提げてきた。
収録用のマイクも、テレビカメラも、譜面台も何ひとつないオペラシティのまっさらな広いステージに独り登場したヒラリーは、バッハの孤高の名作をホールいっぱいに開放していった。 最初はソナタ第2番。繊細で豊かに、多彩な表情を織り成して行く。フーガも丁寧に各声部を描き分け、落ち着いた奥行きを感じさせ、大人の味わいを醸し出す。
ただ、僕が惚れ込んだヒラリーのヴァイオリンは、こうした味わい深さより、もっと冷静沈着に突き進んで行く演奏。強音でも弱音でも音楽のパーツをブレることなく緻密に積み上げて行くことで、壮麗で美しい建造物を作り上げてしまうスケールの大きさなんだけど、と思っていたら、それが第4楽章で実現した。大海原に漕ぎ出した船が、小気味よく小さな波を次々と乗り越えながら、巨大な海流に乗って進む姿。遥か水平線の彼方までズンズンと連れていかれる推進力と躍動感!会場はブラボーと大喝采。
続いて演奏されたパルティータの3番、鮮烈な印象を与えるプレリュードを、ヒラリーはまたアゴーギクとダイナミクスの変化に富んだ演奏で聴かせた。音の粒と輝きを揃えて整然と並べる以前の録音とは異なる、もっと開放され、自由度が高く、多彩な表情に富んだ演奏。有名なメヌエットも、遊び心が入った舞曲を感じた。
最後の曲目はソナタの3番。これも非常にデリケートで表情豊か。そして、静謐に支配されつつ、迷うことなく前進していく姿勢が感じられた。ソナタ第2番の終楽章を大海原の船に例えたが、ここでも揺るぎなく進む船の舳先にスッと立ち、遥か彼方の行き先を見つめる女神のよう。荒波に船が激しく揺れても、舳先に立つ女神は動じることなく表情ひとつ変えずに遥かな目標を真っ直ぐと見据えている。それは天空にあるのだろうか。そんな無限の彼方を目指すバッハだった。
今夜のリサイタルで最も忘れがたい印象を残したのは、しかしながらソナタ第2番の終楽章だった。もちろん他も素晴らしかったが、僕のヒラリーへの期待は限りなく高いのだ。終演後にはサイン会の長蛇の列が出来た。かなり遅れて登場したヒラリーは、相変わらずとても気さくで飾らない表情。12年前と変わっていなかった。
ヒラリー・ハーン ヴァイオリンリサイタル 2013.5.14 東京オペラシティコンサートホール
♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
~ソナタ&パルティータ 全曲演奏会Ⅱ~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV1003
2. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006
3. バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
【アンコール】
バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番~第3曲「サラバンダ」
2005年にオペラシティで初めてヒラリー・ハーンのリサイタルを聴いたときの感動と衝撃は、今でもリアルに記憶に刻まれている。翌年の来日時、もらえるはずだったサインを不覚にももらい損ねてしまったショックがしばらく後をひくほど惚れ込んだヴァイオリニストは、その後の演奏活動で様々な試みを重ねてきた。そうした活動の全てに賛同していたわけではなく、オーソドックス路線に戻って欲しいというのが本音だった。そんなハーンが、オーソドックス中のオーソドックス路線であるバッハの無伴奏全曲を引っ提げてきた。
収録用のマイクも、テレビカメラも、譜面台も何ひとつないオペラシティのまっさらな広いステージに独り登場したヒラリーは、バッハの孤高の名作をホールいっぱいに開放していった。 最初はソナタ第2番。繊細で豊かに、多彩な表情を織り成して行く。フーガも丁寧に各声部を描き分け、落ち着いた奥行きを感じさせ、大人の味わいを醸し出す。
ただ、僕が惚れ込んだヒラリーのヴァイオリンは、こうした味わい深さより、もっと冷静沈着に突き進んで行く演奏。強音でも弱音でも音楽のパーツをブレることなく緻密に積み上げて行くことで、壮麗で美しい建造物を作り上げてしまうスケールの大きさなんだけど、と思っていたら、それが第4楽章で実現した。大海原に漕ぎ出した船が、小気味よく小さな波を次々と乗り越えながら、巨大な海流に乗って進む姿。遥か水平線の彼方までズンズンと連れていかれる推進力と躍動感!会場はブラボーと大喝采。
続いて演奏されたパルティータの3番、鮮烈な印象を与えるプレリュードを、ヒラリーはまたアゴーギクとダイナミクスの変化に富んだ演奏で聴かせた。音の粒と輝きを揃えて整然と並べる以前の録音とは異なる、もっと開放され、自由度が高く、多彩な表情に富んだ演奏。有名なメヌエットも、遊び心が入った舞曲を感じた。
最後の曲目はソナタの3番。これも非常にデリケートで表情豊か。そして、静謐に支配されつつ、迷うことなく前進していく姿勢が感じられた。ソナタ第2番の終楽章を大海原の船に例えたが、ここでも揺るぎなく進む船の舳先にスッと立ち、遥か彼方の行き先を見つめる女神のよう。荒波に船が激しく揺れても、舳先に立つ女神は動じることなく表情ひとつ変えずに遥かな目標を真っ直ぐと見据えている。それは天空にあるのだろうか。そんな無限の彼方を目指すバッハだった。
今夜のリサイタルで最も忘れがたい印象を残したのは、しかしながらソナタ第2番の終楽章だった。もちろん他も素晴らしかったが、僕のヒラリーへの期待は限りなく高いのだ。終演後にはサイン会の長蛇の列が出来た。かなり遅れて登場したヒラリーは、相変わらずとても気さくで飾らない表情。12年前と変わっていなかった。
ヒラリー・ハーン ヴァイオリンリサイタル 2013.5.14 東京オペラシティコンサートホール
♪ブログ管理人の作曲♪
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け