2月4日(木)幸田浩子(S)/河原忠之(Pf) 
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王子ホール
【曲目】
1.グノー/『ロメオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」
2. オッフェンバック/『ホフマン物語』より 「森の小鳥はあこがれを歌う」
3. オッフェンバック/『ホフマン物語』より 「舟歌」 (ピアノ独奏)
4. ベッリーニ/『清教徒』より「私は愛らしい乙女」
5. ベッリーニ/『清教徒』より「あなたの優しい声が」
6. プッチーニ/『ジャンニ・スキッキ』より 「わたしの愛しいお父さま」
7. ヴェルディ/『リゴレット』より 「慕わしい人の名は」
8. マスカーニ/『カヴァレリア・ルスティカーナ』~間奏曲 (ピアノ独奏)
9. ドニゼッティ/『ランメルモールのルチア』より「あの方の声の優しい響きが~香炉がくゆり」
【アンコール】
1.オッフェンバック/ホフマンの舟歌
2.マスカーニ/アヴェ・マリア
オペラにコンサートにと活躍目覚ましいソプラノの幸田浩子が王子ホールという贅沢な空間でオペラの超有名アリアを集めたリサイタルを聴いた。幸田さんの歌にはこれまでもリサイタルやオペラの公演で接してきて、明るく香り高い歌声に魅了されてきたが、昨年11月にリリースされたCDの曲目を中心に彼女が恐らく今最も得意とし、心から共感しているであろう曲が並んだ今夜のリサイタルでは幸田浩子の本領が花開いた。
ステージに立つ幸田さんのチャーミングな容姿や表情、それに立ち居振る舞いにはお客の視線と心を惹き付ける華があり光が当たっているのを感じる。そして聴こえてくる歌も、視覚から伝わってくるイメージとぴったりで端麗で瑞々しくチャーミング。見ても聴いても人を惹きつける魅力はプリマ・ドンナとしての条件。これは幸田さんの持って生まれた天性のものもあろうが、その表情から謙虚ながらも伝わってくる自信には、日々たゆまぬ努力を積み重ねてきていることの証が刻まれている。
どんな音域でも淀みない瑞々しい美声を聴かせ、細かいところにも常に神経が行き届いた歌唱は、それぞれの曲の登場人物の感情をデリケートに表現する。オランピアのアリアや「リゴレット」からのアリア、「清教徒」の「私は愛らしい乙女」など、華やかで愛らしい歌は、幸田さんの持ち前の清澄で香り高い美声と愛らしい表情がぴったりでまさに適役だが、2つの「狂乱の場」のようなシリアスな歌でも、ステージと客席の距離をぐんと縮めるような並々ならぬ感情移入と集中力で、聴く者をオペラの場面の中へと引き込んでいった。自ら組み立てたプログラムとは言え、あの華奢そうな体つきの幸田さんがこれだけボリュームある曲を並べたうえに、アンコールまで楽々と歌いきるスタミナにはやっぱり感服。
これ以上幸田さんに望むことがあるとすれば、男を惹きつける魅力に加えて無条件で包み込んでしまうような大きな包容力とか、歌の末端にときおり見られる「わずかな努力の痕跡」に至るまで、全て空気に溶け込む香りに変えて欲しい、といった贅沢なこと。大きな包容力をコロラトゥーラソプラノに求めるのは酷かも知れないが、こんな贅沢な望みも幸田さんならきっと叶えてくれるように思う。
このリサイタルでは河原忠之のピアノ伴奏の功績も大きい。このピアノを一言で表現すると「劇場型」。まるでオペラ劇場のオーケストラピットの底から沸きあがってくるような臨場感が伝わってきた。線の太い表情豊かなバス、色彩鮮やかな高音域、温かなハーモニーに満ちた中音域が見事に一体となって、奥行きと広がりのある表情と響きを作り出し、歌を活き活きと羽ばたかせていた。
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王子ホール
【曲目】
1.グノー/『ロメオとジュリエット』より「私は夢に生きたい」
2. オッフェンバック/『ホフマン物語』より 「森の小鳥はあこがれを歌う」
3. オッフェンバック/『ホフマン物語』より 「舟歌」 (ピアノ独奏)
4. ベッリーニ/『清教徒』より「私は愛らしい乙女」
5. ベッリーニ/『清教徒』より「あなたの優しい声が」
6. プッチーニ/『ジャンニ・スキッキ』より 「わたしの愛しいお父さま」
7. ヴェルディ/『リゴレット』より 「慕わしい人の名は」
8. マスカーニ/『カヴァレリア・ルスティカーナ』~間奏曲 (ピアノ独奏)
9. ドニゼッティ/『ランメルモールのルチア』より「あの方の声の優しい響きが~香炉がくゆり」
【アンコール】
1.オッフェンバック/ホフマンの舟歌
2.マスカーニ/アヴェ・マリア
オペラにコンサートにと活躍目覚ましいソプラノの幸田浩子が王子ホールという贅沢な空間でオペラの超有名アリアを集めたリサイタルを聴いた。幸田さんの歌にはこれまでもリサイタルやオペラの公演で接してきて、明るく香り高い歌声に魅了されてきたが、昨年11月にリリースされたCDの曲目を中心に彼女が恐らく今最も得意とし、心から共感しているであろう曲が並んだ今夜のリサイタルでは幸田浩子の本領が花開いた。
ステージに立つ幸田さんのチャーミングな容姿や表情、それに立ち居振る舞いにはお客の視線と心を惹き付ける華があり光が当たっているのを感じる。そして聴こえてくる歌も、視覚から伝わってくるイメージとぴったりで端麗で瑞々しくチャーミング。見ても聴いても人を惹きつける魅力はプリマ・ドンナとしての条件。これは幸田さんの持って生まれた天性のものもあろうが、その表情から謙虚ながらも伝わってくる自信には、日々たゆまぬ努力を積み重ねてきていることの証が刻まれている。
どんな音域でも淀みない瑞々しい美声を聴かせ、細かいところにも常に神経が行き届いた歌唱は、それぞれの曲の登場人物の感情をデリケートに表現する。オランピアのアリアや「リゴレット」からのアリア、「清教徒」の「私は愛らしい乙女」など、華やかで愛らしい歌は、幸田さんの持ち前の清澄で香り高い美声と愛らしい表情がぴったりでまさに適役だが、2つの「狂乱の場」のようなシリアスな歌でも、ステージと客席の距離をぐんと縮めるような並々ならぬ感情移入と集中力で、聴く者をオペラの場面の中へと引き込んでいった。自ら組み立てたプログラムとは言え、あの華奢そうな体つきの幸田さんがこれだけボリュームある曲を並べたうえに、アンコールまで楽々と歌いきるスタミナにはやっぱり感服。
これ以上幸田さんに望むことがあるとすれば、男を惹きつける魅力に加えて無条件で包み込んでしまうような大きな包容力とか、歌の末端にときおり見られる「わずかな努力の痕跡」に至るまで、全て空気に溶け込む香りに変えて欲しい、といった贅沢なこと。大きな包容力をコロラトゥーラソプラノに求めるのは酷かも知れないが、こんな贅沢な望みも幸田さんならきっと叶えてくれるように思う。
このリサイタルでは河原忠之のピアノ伴奏の功績も大きい。このピアノを一言で表現すると「劇場型」。まるでオペラ劇場のオーケストラピットの底から沸きあがってくるような臨場感が伝わってきた。線の太い表情豊かなバス、色彩鮮やかな高音域、温かなハーモニーに満ちた中音域が見事に一体となって、奥行きと広がりのある表情と響きを作り出し、歌を活き活きと羽ばたかせていた。