11月26日(水)ネルロ・サンティ指揮 NHK交響楽団
《2014年11月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. ロッシーニ/歌劇「アルジェのイタリア女」序曲

2.メンデルスゾーン/交響曲第4番 イ長調 Op.90「イタリア」
3.ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 Op.36


4.ワーグナー/歌劇「リエンチ」序曲
名匠サンティ翁がひさしぶりにN響B定期に登場した。2010年以来実に4年ぶり。足取りは更にゆっくりになったように見えたが、指揮は益々若々しく、会心の演奏を聴かせてくれた。サンティが受け持つ今月のBとCプログラムにはゲストコンマスとして岡崎慶輔氏が座った。日本人のゲストコンマスは今まで見たことがないが、岡崎はチューリヒ歌劇場オーケストラのコンマスということで、きっとサンティとは気心が知れた間柄ということでの起用だろう。
最初はロッシーニの序曲。心地よい緊迫感の中で奏でられる青山さんのオーボエのメロディーが優美に響いた後は、ロッシーニならではの溌剌した場面となるが、ここでのサンティ/N響の瑞々しさと言ったら!清流が勢いよく水しぶきをほとばしらせているような清涼感とエネルギー。弱音でもシーンがぼやけることなく、ささやく言葉が明瞭に聴こえてくる。破目を外すことなくきっちりと手綱を握り、大胆なパフォーマンスも細やかな小技も鮮やかに決めて行くのを見る爽快感!
次のメンデルスゾーンの「イタリア」では、その瑞々しさが益々冴え渡り、濃厚さを増した。南国の陽光を燦々と浴びて育ったフルーツのように、ジューシーで甘くて濃厚な味わい。それはまるで選りすぐりの玉だけを集め、ギュッと絞った出来立ての100%のフレッシュジュース。若々しいだけではなく奥が深く、気品を備えている。サンティは徒にテンポを速めたり煽ったりすることなく、ここでもやはりきっちりと手綱を握り、全体を見通して美しいフォルムに仕上げていった。それにしてもN響の弦の瑞々しさと溢れる生気にはホレボレしたし、機敏な木管とスマートな金管も素晴らしい。久保さんのティンパニは次のベートーヴェンも併せてツボを押さえて気持ちいい。
さあそのベートーヴェンは、若い気概に溢れたベートーヴェンの魂がサンティに乗り移ったような名演となった。Bプロではこれまでにもサンティの指揮で度々ベートーヴェンの交響曲を聴いている。とてもいい演奏もあったが、「でもやっぱりイタリアものが聴きたい」という気持ちが残った。しかし今回はサンティの指揮でこの2番を聴けた幸せを噛みしめた。
キリッと引き締まった美しいフォルムを崩すことなく、そこで繰り広げられる濃厚で溌剌とした音たちの饗宴!第1楽章や第4楽章でのワクワク感を伴って畳み掛けてくる能動的で密度の濃い演奏は底なしの愉悦へ導いてくれ、第2楽章での温かさは、満面の笑みを湛えたサンティの表情が見えるよう。「ベートーヴェンの魂が乗り移った」と書いたが、サンティはベートーヴェンから受け取ったメッセージを、この指揮者の魅力溢れる人間性と、天性のセンスをベースに長年積み上げて培われた素養でじっくり熟成させ、磨かれて光り輝く言葉を聴衆に伝えた。
このシンフォニーの後に序曲でコンサートを締めるというのはいかにもサンティらしいが、何のためにこれを持ってきたかは測りかねる。いずれにしても、自分の中ではベートーヴェンでこのコンサートは完結した気分。まさか、これがサンティ最後のN響への客演で、最後はできるだけ多くのN響団員が見送るという意図?いやいや、サンティにはこれからも何度も来てもらい、熱い感動を届けてほしい。
《2014年11月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. ロッシーニ/歌劇「アルジェのイタリア女」序曲


2.メンデルスゾーン/交響曲第4番 イ長調 Op.90「イタリア」


3.ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 Op.36



4.ワーグナー/歌劇「リエンチ」序曲

名匠サンティ翁がひさしぶりにN響B定期に登場した。2010年以来実に4年ぶり。足取りは更にゆっくりになったように見えたが、指揮は益々若々しく、会心の演奏を聴かせてくれた。サンティが受け持つ今月のBとCプログラムにはゲストコンマスとして岡崎慶輔氏が座った。日本人のゲストコンマスは今まで見たことがないが、岡崎はチューリヒ歌劇場オーケストラのコンマスということで、きっとサンティとは気心が知れた間柄ということでの起用だろう。
最初はロッシーニの序曲。心地よい緊迫感の中で奏でられる青山さんのオーボエのメロディーが優美に響いた後は、ロッシーニならではの溌剌した場面となるが、ここでのサンティ/N響の瑞々しさと言ったら!清流が勢いよく水しぶきをほとばしらせているような清涼感とエネルギー。弱音でもシーンがぼやけることなく、ささやく言葉が明瞭に聴こえてくる。破目を外すことなくきっちりと手綱を握り、大胆なパフォーマンスも細やかな小技も鮮やかに決めて行くのを見る爽快感!
次のメンデルスゾーンの「イタリア」では、その瑞々しさが益々冴え渡り、濃厚さを増した。南国の陽光を燦々と浴びて育ったフルーツのように、ジューシーで甘くて濃厚な味わい。それはまるで選りすぐりの玉だけを集め、ギュッと絞った出来立ての100%のフレッシュジュース。若々しいだけではなく奥が深く、気品を備えている。サンティは徒にテンポを速めたり煽ったりすることなく、ここでもやはりきっちりと手綱を握り、全体を見通して美しいフォルムに仕上げていった。それにしてもN響の弦の瑞々しさと溢れる生気にはホレボレしたし、機敏な木管とスマートな金管も素晴らしい。久保さんのティンパニは次のベートーヴェンも併せてツボを押さえて気持ちいい。
さあそのベートーヴェンは、若い気概に溢れたベートーヴェンの魂がサンティに乗り移ったような名演となった。Bプロではこれまでにもサンティの指揮で度々ベートーヴェンの交響曲を聴いている。とてもいい演奏もあったが、「でもやっぱりイタリアものが聴きたい」という気持ちが残った。しかし今回はサンティの指揮でこの2番を聴けた幸せを噛みしめた。
キリッと引き締まった美しいフォルムを崩すことなく、そこで繰り広げられる濃厚で溌剌とした音たちの饗宴!第1楽章や第4楽章でのワクワク感を伴って畳み掛けてくる能動的で密度の濃い演奏は底なしの愉悦へ導いてくれ、第2楽章での温かさは、満面の笑みを湛えたサンティの表情が見えるよう。「ベートーヴェンの魂が乗り移った」と書いたが、サンティはベートーヴェンから受け取ったメッセージを、この指揮者の魅力溢れる人間性と、天性のセンスをベースに長年積み上げて培われた素養でじっくり熟成させ、磨かれて光り輝く言葉を聴衆に伝えた。
このシンフォニーの後に序曲でコンサートを締めるというのはいかにもサンティらしいが、何のためにこれを持ってきたかは測りかねる。いずれにしても、自分の中ではベートーヴェンでこのコンサートは完結した気分。まさか、これがサンティ最後のN響への客演で、最後はできるだけ多くのN響団員が見送るという意図?いやいや、サンティにはこれからも何度も来てもらい、熱い感動を届けてほしい。