12月10日(土)MS:吉成文乃/Pf:増田桃香
~片戀~
Hall60 (原宿)
【曲目】
1.クララ・シューマン/私は暗い夢の中に立っていた
2.フォーレ/月の光
3. ムソルグルスキー/星よお前は何処に
4.グリンカ/バラキレフ編/ひばり(ピアノソロ)
5.團伊玖磨/五つの断章
♪♪♪
6.シェイクスピア作 戯曲「十二夜」より第二幕四場(演奏付き朗読劇)
♪バッハ/トッカータ ト長調より(ピアノソロ)
♪クィルター/死よ来たれ
♪ハイドン/彼女は決して語らなかった
7.ワーグナー/リスト編/イゾルデの愛の死(ピアノソロ)
8.メトネル/ミニョンの歌
9.メトネル/すみれ
【アンコール】
マックス・レーガー/素朴な歌 より
メゾソプラノの吉成文乃さんがピアノの増田桃香さんの賛同を得て、「片戀」という何とも印象的なタイトルのリサイタルをプロデュースした。シェイクスピアの戯曲も取り入れ、「片戀」にちなむ多彩な曲が並んだ。
その選曲がいい。殆どが知らない曲、名前を聞いたことのない作曲家もいて、不安と期待の入り交じった気持ちで見知らぬ世界へ入って行くと、出逢った曲も演奏も魅力的、その気分が「片戀」と重なる。有名な歌で親しんでいた詩が、他の作曲家によって別の音楽になっているのを聴くのも何か切ない。増田さんがソロで弾いた曲も悲しく熱い恋の歌。リサイタル全般に渡って、はかなく美しく、若さゆえの燃える思いがにじむプログラムを堪能した。
吉成さんはいつでも歌詞を大切にする。それは、どんな小さなコンサートでも、客演として出演するときも必ず歌詞対訳を作成して聴衆に示す姿勢からも窺える。今回も詳しい解説つきで対訳が載った素敵なパンフレットが作られた。
この姿勢は演奏にしっかり反映される。吉成さんの歌からは、今回は4種類の言語を使い分け、フランス語やロシア語はわからないが対訳にも助けられ、一つ一つの言葉が温かな情感を伴って親密に届き、大切な言葉には熱い魂が込められ、凝縮された高いテンションが芯のある声で伝えられる。これは、吉成さんがそれぞれの言語をキチンと自分のものにしている証。増田さんの柔らかく香り立つようなピアノ伴奏が、歌に優しく寄り添っているのもいい。
朗読も素晴らしかった。品のある発音とイントネーションはシェイクスピア劇に相応しく、言葉がキラリと輝き、登場人物の心情が伝わる。その合間に入ったクィルターとハイドンの歌も、静かな情熱と気高さが感じられ、登場人物の心情をくっきりと浮かび上がらせた。
リサイタルはこのシェイクスピアの朗読劇も含めて後半がとりわけ印象に残った。モーツァルトの作曲でしか知らなかったゲーテの「すみれ」が、メトネルの手によって、叶わぬ恋の熱い思いが、迫真の歌唱によって熱くねっとりと届けられた。モーツァルトの歌からは擬人化された花の精の存在を感じるが、メトネルの歌では少女の思いと、もしかするとリアルな体験までもが、花に置き換えられていることが演奏から伝わって来た。
吉成さんは来春から芸大の院へ進み、更なる研鑽を積むという。細やかな表情にも更に磨きがかかった素晴らしい歌手として大きく羽ばたくことだろう。
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
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1.クララ・シューマン/私は暗い夢の中に立っていた
2.フォーレ/月の光
3. ムソルグルスキー/星よお前は何処に
4.グリンカ/バラキレフ編/ひばり(ピアノソロ)
5.團伊玖磨/五つの断章
6.シェイクスピア作 戯曲「十二夜」より第二幕四場(演奏付き朗読劇)
♪バッハ/トッカータ ト長調より(ピアノソロ)
♪クィルター/死よ来たれ
♪ハイドン/彼女は決して語らなかった
7.ワーグナー/リスト編/イゾルデの愛の死(ピアノソロ)
8.メトネル/ミニョンの歌
9.メトネル/すみれ
【アンコール】
マックス・レーガー/素朴な歌 より
メゾソプラノの吉成文乃さんがピアノの増田桃香さんの賛同を得て、「片戀」という何とも印象的なタイトルのリサイタルをプロデュースした。シェイクスピアの戯曲も取り入れ、「片戀」にちなむ多彩な曲が並んだ。
その選曲がいい。殆どが知らない曲、名前を聞いたことのない作曲家もいて、不安と期待の入り交じった気持ちで見知らぬ世界へ入って行くと、出逢った曲も演奏も魅力的、その気分が「片戀」と重なる。有名な歌で親しんでいた詩が、他の作曲家によって別の音楽になっているのを聴くのも何か切ない。増田さんがソロで弾いた曲も悲しく熱い恋の歌。リサイタル全般に渡って、はかなく美しく、若さゆえの燃える思いがにじむプログラムを堪能した。
吉成さんはいつでも歌詞を大切にする。それは、どんな小さなコンサートでも、客演として出演するときも必ず歌詞対訳を作成して聴衆に示す姿勢からも窺える。今回も詳しい解説つきで対訳が載った素敵なパンフレットが作られた。
この姿勢は演奏にしっかり反映される。吉成さんの歌からは、今回は4種類の言語を使い分け、フランス語やロシア語はわからないが対訳にも助けられ、一つ一つの言葉が温かな情感を伴って親密に届き、大切な言葉には熱い魂が込められ、凝縮された高いテンションが芯のある声で伝えられる。これは、吉成さんがそれぞれの言語をキチンと自分のものにしている証。増田さんの柔らかく香り立つようなピアノ伴奏が、歌に優しく寄り添っているのもいい。
朗読も素晴らしかった。品のある発音とイントネーションはシェイクスピア劇に相応しく、言葉がキラリと輝き、登場人物の心情が伝わる。その合間に入ったクィルターとハイドンの歌も、静かな情熱と気高さが感じられ、登場人物の心情をくっきりと浮かび上がらせた。
リサイタルはこのシェイクスピアの朗読劇も含めて後半がとりわけ印象に残った。モーツァルトの作曲でしか知らなかったゲーテの「すみれ」が、メトネルの手によって、叶わぬ恋の熱い思いが、迫真の歌唱によって熱くねっとりと届けられた。モーツァルトの歌からは擬人化された花の精の存在を感じるが、メトネルの歌では少女の思いと、もしかするとリアルな体験までもが、花に置き換えられていることが演奏から伝わって来た。
吉成さんは来春から芸大の院へ進み、更なる研鑽を積むという。細やかな表情にも更に磨きがかかった素晴らしい歌手として大きく羽ばたくことだろう。
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