10月3日(水)フェルメール・クァルテット ファイナルステージ
~ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会第4日~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第1番ヘ長調Op.18-1
2.ベートーヴェン/大フーガ 変ロ長調Op.133
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第15番イ短調Op.132
先週金曜日に続くフェルメール・クァルテットの演奏会、今夜も期待に違わぬ素晴らしいベートーヴェンだった。
ベートーヴェンの最初の弦楽四重奏曲が柔らかく穏やかに始まった。透明感のある落着いた響きが美しく、上澄みを掬い取ったピュアーなエッセンスが凝縮されたような幸福感を感じる。初期の作品でありながら、円熟味のある音楽に感じさせてしまうのはフェルメールの真骨頂に違いない。とりわけアダージョ楽章は、比類のない美しさと深みを湛えていた。
前回の演奏会で聴いた作品130の四重奏曲のもともとの終楽章だった「大フーガ」が、今夜単独でプログラムの真ん中に据えられた。ここではそれまでのフェルメールSQから紡ぎだされていた穏やかで高雅な演奏とは打って変わって非常に生々しく苦悩する音楽の姿を見た。跳躍が連続するポリフォニーの音楽からは深い魂の叫びを聞くようで、静まり返った湖があたりの景色を鏡のように映す中間部との鮮やか対比に圧倒された。
今夜一番楽しみにしていたイ短調のカルテット。学生時代にラサールカルテットの超名演に接して以来、この曲はベートーヴェンのカルテットの中でも僕の一番のお気に入りのひとつ。
フェルメール・カルテットは弱音を基調にしながら、長い息で深くたっぷりと歌い上げる。リチャード・ヤングの凛としたヴィオラが、柔らかく溶け合ったアンサンブルの美しい響きにキラリとした一種硬質の輝きを与えるのもいい。
この曲のひとつの聴き所である第3楽章のアダージョ。指揮者だったら左手を手招きするように震わせて熱く煽るところだろうが、フェルメールはここでも落ち着いた静かで深い祈りの音楽を展開する。後半、小節の頭のアクセントの連続は大きな振幅と重みを持って心に深く訴えてくる。そしてまた静かな祈りとなり消えていく様は静謐という言葉がぴったり。3楽章が終わったあとの静まり返った会場… 聴くものは息をも呑み込むしかない。
続く楽章でもフェルメールは節度のある成熟した大人の音楽を繰り広げる。フィナーレの最後の方で長調に転じる前に見せる高揚する場面も落着き払っていたが、個人的にはこっちは焦燥感を煽るように熱く盛り立ててくれたほうがいいのだが…
でも澄み切った泉の深い底を見るような透明感に満ちたコーダは他には替え難い魅力を湛えていた。
フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第2日(9/28)
フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第5日(10/6)
~ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会第4日~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第1番ヘ長調Op.18-1
2.ベートーヴェン/大フーガ 変ロ長調Op.133
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第15番イ短調Op.132
先週金曜日に続くフェルメール・クァルテットの演奏会、今夜も期待に違わぬ素晴らしいベートーヴェンだった。
ベートーヴェンの最初の弦楽四重奏曲が柔らかく穏やかに始まった。透明感のある落着いた響きが美しく、上澄みを掬い取ったピュアーなエッセンスが凝縮されたような幸福感を感じる。初期の作品でありながら、円熟味のある音楽に感じさせてしまうのはフェルメールの真骨頂に違いない。とりわけアダージョ楽章は、比類のない美しさと深みを湛えていた。
前回の演奏会で聴いた作品130の四重奏曲のもともとの終楽章だった「大フーガ」が、今夜単独でプログラムの真ん中に据えられた。ここではそれまでのフェルメールSQから紡ぎだされていた穏やかで高雅な演奏とは打って変わって非常に生々しく苦悩する音楽の姿を見た。跳躍が連続するポリフォニーの音楽からは深い魂の叫びを聞くようで、静まり返った湖があたりの景色を鏡のように映す中間部との鮮やか対比に圧倒された。
今夜一番楽しみにしていたイ短調のカルテット。学生時代にラサールカルテットの超名演に接して以来、この曲はベートーヴェンのカルテットの中でも僕の一番のお気に入りのひとつ。
フェルメール・カルテットは弱音を基調にしながら、長い息で深くたっぷりと歌い上げる。リチャード・ヤングの凛としたヴィオラが、柔らかく溶け合ったアンサンブルの美しい響きにキラリとした一種硬質の輝きを与えるのもいい。
この曲のひとつの聴き所である第3楽章のアダージョ。指揮者だったら左手を手招きするように震わせて熱く煽るところだろうが、フェルメールはここでも落ち着いた静かで深い祈りの音楽を展開する。後半、小節の頭のアクセントの連続は大きな振幅と重みを持って心に深く訴えてくる。そしてまた静かな祈りとなり消えていく様は静謐という言葉がぴったり。3楽章が終わったあとの静まり返った会場… 聴くものは息をも呑み込むしかない。
続く楽章でもフェルメールは節度のある成熟した大人の音楽を繰り広げる。フィナーレの最後の方で長調に転じる前に見せる高揚する場面も落着き払っていたが、個人的にはこっちは焦燥感を煽るように熱く盛り立ててくれたほうがいいのだが…
でも澄み切った泉の深い底を見るような透明感に満ちたコーダは他には替え難い魅力を湛えていた。
フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第2日(9/28)
フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第5日(10/6)