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カーチュン・ウォン指揮 日本フィルハーモニー交響楽団

2024年01月30日 | pocknのコンサート感想録2024
1月26日(金)カーチュン・ウォン指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
第757回東京定期演奏会
サントリーホール


【曲目】
1.チナリー・ウン:「グランド・スパイラル:砂漠の花々が咲く」(1991)
2.プーランク:2台のピアノのための協奏曲 ニ短調
3.コリン・マクフィー:「タブー・タブーアン」-管弦楽と2台のピアノのためのトッカータ(1936)
4.ドビュッシー:交響詩「海」
Pf:児玉麻里、児玉桃


2022年に日本フィルの首席指揮者に就任したカーチュン・ウォンの評判がいいので一度聴きたくて、日本フィル・サポーターズクラブの特典を利用して、日本初演の現代作品が入った意欲的なプログラムによる今夜の定期演奏会に出かけた。

ウォン/日フィルは、どんな曲でもデリケートで洗練され、生き生きとした演奏を聴かせてくれた。その上、今夜の選曲には「アジアと西洋音楽の出逢い」というテーマがあるとのこと。舞台転換の時間を利用して行われたウォンさんのトークで、プーランクやドビュッシーの曲にもガムランの要素が取り入れられていると知り、聴いてみるとなるほど、と思える発見があったことも収穫だった。

2つの現代作品は、どちらも前衛音楽というよりもリズムや旋律線がはっきり感じ取れる民族的な音楽。ウォンが伊福部昭作品を積極的に取り上げることからも、この指揮者がどんな現代作品に共鳴しているかが窺える。そんな2曲のうち、後半に演奏されたマクフィーの「タブー・タブーアン」は、ミニマルミュージックが、ガムラン音楽と結びつき、音楽の深いところから情念が絡まった生命力が沸き上がってくる印象で惹きつけられた。

マクフィー作品での児玉麻里、桃姉妹のピアノはオケの1パートとして扱われているため、ピアノだけが目立つことはなかったが、前半に演奏されたプーランクの協奏曲でのピアノ・デュオは、デリケートななかに香り高いセンスと冴えが光り、作品の七変化する魅力を存分に味わわせてくれた。ウォン/日フィルも豊かな色彩とデリカシーを湛え、両者はフランス的エスプリを醸し出していた。その一方で、トークのおかげでこの作品に東洋のテイストが混じっていることを感じることも出来た。

今夜のウォン/日フィルの魅力が最大限に引き出されたのは最後の「海」だろう。余分な力が抜け、磨かれた響きで様々な波の様子を鮮やかに描写していった。大きく飛び散った細かな波しぶきがキラキラと光に反射しているような光と色彩と質感!力任せに押せ押せで攻めるのではなく、常にデリケートなタッチで音を運び、全てのパートが有機的に繋がり、無理なく壮大なクライマックスへと導いて行く。

そのうえ、クリストーフォリさんの名人芸的なトランペットが一層極上の世界へ引き上げた。例のファンファーレを入れる版を採用したが、高らかにラッパを鳴らすのではなく、優しい表情に富んでいた。クリストーフォリさんに限らず、金管セクションは無理なく美しく表現する術を心得ていて、日フィルのレベルの高さを感じた。最後の目の覚めるような輝かしい終結部ではトリハダ立ちまくりで、柔らかくかつエネルギーに溢れるしなやかな名演となった。カーチュン・ウォン、いいじゃない!

インキネン指揮 日フィル(シベリウス/クレルヴォ交響曲) 2023.4.28 サントリーホール

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