11月13日(月)尾高忠明指揮 札幌交響楽団
~2007 東京公演 第20回記念~
東京芸術劇場
【曲目】
1.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
2.武満徹/ファンタズマ/カントス
3.ドビュッシー/クラリネットと管弦楽のためのラプソディー
Cl:ポール・メイエ
【アンコール】
ソンダイム/センド・イン・ザ・クラウン
4.武満徹/遠い呼び声の彼方へ!
Vn:堀米ゆず子
5.ドビュッシー/交響詩「海」
札幌交響楽団がドビュッシーと武満という、気合いだけでは絶対できないプログラムを引っさげ、音楽監督の尾高忠明と東京にやって来た。しかもソリストにはメイエと堀米さんという名手つき。これは魅力的。
まずは「牧神」で、このオケのデリケートさを披露。フルートやオーボエやホルンなどのソロ楽器も表情豊かでとても良い。この静かな音楽の中の数少ない盛り上げ所も節度のある歌を保って、常に静けさが基調となる演奏。
続く武満の「ファンタズマ/カントス」でもそんなデリケートな札響の響きが、メイエの明晰なクラリネットを包み込む。90年以降の武満の音楽は調性的な響きが漂う。非常に心地よいハーモニーに酔い、たゆたうようなファンタジックな世界に気持ちよくなって少々ぼーっとしてしまった。
もう1つの武満作品「遠い呼び声の彼方へ!」は80年の作品。ファンタジックな中にも明晰で覚醒させるまばゆさがオケによって見事に表現されていた。堀米ゆず子のヴァイオリンはしなやかで伸びやかで気高さがあり、キラリと光るソロで大変印象深い。そんなオケとヴァイオリンの共演によって、この音楽の魅力が語り尽くされていた。
演奏会の「取り」はドビュッシーの「海」。尾高忠明はここでも音楽の繊細な部分を大切にする。水彩画のような淡い色合いと細やかなタッチで描いて行く。札響の音はとても柔らかく新鮮で、ハーモニーがよく溶け合い、音楽が淀みなく流れて行く。各プレーヤーの腕前も確かで、聞かせどころはしっかりと押さえる。
こうした繊細さを大切にする尾高さんのアプローチを聴いてくれば、3楽章で「ファンファーレ・バージョン」を使わないのは理にかなっているとしても、何か海の底から突き上げてくるようなエネルギーが欲しい気が少々した。最後の最後では目の覚めるような盛り上がりを聴かせてくれたが、尾高さんの目指したものはあくまで、淡くて繊細な「海」だったのだと思う。
終演後、楽員さんが出口に並んでお客に挨拶をしていた。オケとお客のこうした触れ合いはやっぱり地方オーケストラならではの良さかな。おまけに北海道名産の砂糖「てんさい糖」までおみやげにいただいてしまった。
演奏とは全く関係ないが、この東京芸術劇場でいつも気になることがある。エスカレーターの前後や客席入口に立ってる係員が、テープレコーダーのように繰り返し案内を大声でわめいていること。とりわけ今夜のような内容の演奏会には不似合いだ。これじゃあ田舎の公民館と変わりない。わめいているおねえちゃんにはもちろん全く罪はないのだが、こういうことをさせるお役所の偉い人の貧困な発想は何とかならないものか。サントリーホールやオペラシティのエレガントな接客を見習ってもらいたいものだ。
~2007 東京公演 第20回記念~
東京芸術劇場
【曲目】
1.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
2.武満徹/ファンタズマ/カントス
3.ドビュッシー/クラリネットと管弦楽のためのラプソディー
Cl:ポール・メイエ
【アンコール】
ソンダイム/センド・イン・ザ・クラウン
4.武満徹/遠い呼び声の彼方へ!
Vn:堀米ゆず子
5.ドビュッシー/交響詩「海」
札幌交響楽団がドビュッシーと武満という、気合いだけでは絶対できないプログラムを引っさげ、音楽監督の尾高忠明と東京にやって来た。しかもソリストにはメイエと堀米さんという名手つき。これは魅力的。
まずは「牧神」で、このオケのデリケートさを披露。フルートやオーボエやホルンなどのソロ楽器も表情豊かでとても良い。この静かな音楽の中の数少ない盛り上げ所も節度のある歌を保って、常に静けさが基調となる演奏。
続く武満の「ファンタズマ/カントス」でもそんなデリケートな札響の響きが、メイエの明晰なクラリネットを包み込む。90年以降の武満の音楽は調性的な響きが漂う。非常に心地よいハーモニーに酔い、たゆたうようなファンタジックな世界に気持ちよくなって少々ぼーっとしてしまった。
もう1つの武満作品「遠い呼び声の彼方へ!」は80年の作品。ファンタジックな中にも明晰で覚醒させるまばゆさがオケによって見事に表現されていた。堀米ゆず子のヴァイオリンはしなやかで伸びやかで気高さがあり、キラリと光るソロで大変印象深い。そんなオケとヴァイオリンの共演によって、この音楽の魅力が語り尽くされていた。
演奏会の「取り」はドビュッシーの「海」。尾高忠明はここでも音楽の繊細な部分を大切にする。水彩画のような淡い色合いと細やかなタッチで描いて行く。札響の音はとても柔らかく新鮮で、ハーモニーがよく溶け合い、音楽が淀みなく流れて行く。各プレーヤーの腕前も確かで、聞かせどころはしっかりと押さえる。
こうした繊細さを大切にする尾高さんのアプローチを聴いてくれば、3楽章で「ファンファーレ・バージョン」を使わないのは理にかなっているとしても、何か海の底から突き上げてくるようなエネルギーが欲しい気が少々した。最後の最後では目の覚めるような盛り上がりを聴かせてくれたが、尾高さんの目指したものはあくまで、淡くて繊細な「海」だったのだと思う。
終演後、楽員さんが出口に並んでお客に挨拶をしていた。オケとお客のこうした触れ合いはやっぱり地方オーケストラならではの良さかな。おまけに北海道名産の砂糖「てんさい糖」までおみやげにいただいてしまった。
演奏とは全く関係ないが、この東京芸術劇場でいつも気になることがある。エスカレーターの前後や客席入口に立ってる係員が、テープレコーダーのように繰り返し案内を大声でわめいていること。とりわけ今夜のような内容の演奏会には不似合いだ。これじゃあ田舎の公民館と変わりない。わめいているおねえちゃんにはもちろん全く罪はないのだが、こういうことをさせるお役所の偉い人の貧困な発想は何とかならないものか。サントリーホールやオペラシティのエレガントな接客を見習ってもらいたいものだ。
精神的にも非常に心休まるいいコンサートでした。
地方オケとそのオケの地元がうらやましくなる一夜でしたね。東京のオケでは地元感が出ないですから。
海があんなに新鮮に聴こえるなんて、pocknさんのご指摘のヴァージョンは正解です。貴記事を拝見して気がつきました。
そしてあの無粋な案内は、私も昨晩感じてました。
それとあのホールのエスカレーター渋滞も・・・・。
東京芸術劇場は近所のホールだけにホントに残念です。自主公演もないですし… ぼくは特に帰りはエスカレーターではなくエレベータに乗ってます。こっちの方がずっと空いてますよ。