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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ストラスブール ~カテドラルを仰ぐアルザスの州都~

2011年02月03日 | 夏のヨーロッパ家族旅行2010
STRASBOURG

8月18日(水)~8月19日(木)のち

4日間過ごしたドイツの黒い森地方をあとにして、フランス・アルザスのストラスブール(Strasbourg)に向かう。

ストラスブールはまだ黒い森の西端に近く、東風が吹けば黒い森からの息吹が届きそうなところにある。ストラスブールは4年前にも訪れたが、このときは滞在時間が短かったうえに、ホテルが中心から遠く、川を巡るクルージングは予想以上に長時間かかり、その上思わぬハプニングにも見舞われ、満足に見ていない。良い町だったし、アルザスの料理やワインにも惹かれる。トリベルクからさほど遠くないので、今回もう一度ストラスブールへ行くことに決めた。

トリベルクからストラスブールまでは、途中、オッフェンブルク(Offenburg)で乗り換えて、所要時間は1時間20分。オッフェンブルクで乗ったおもちゃみたいな1両編成の電車内は、チャリンコ族が大勢乗り込んで来て大混雑。自転車をそのまま乗せられるヨーロッパの鉄道システムはいいと思っていたが、これだけ窮屈な思いをすると迷惑気分。。。

ライン川を渡れば、そこはフランス。駅の表示もフランス語に変わる。でも、ストラスブール駅のツーリストインフォメーションではドイツ語が普通に通じ、さすが国境の町という感じ。アルザス地方は過去に何度もドイツとフランスの間で領土を奪い合い、ここの住民は何度も国籍を変えたという複雑な事情もある。更に、アルザス語と呼ばれるこの地方の人々がしゃべる言葉はドイツ語に近い言語だという。

前回、大きな工事をやっていた駅はすっかり真新しくなっていた。


エスカレーターで地下のトラムのステーションへ運ばれ、おなじみのスマートなトラムでホテルのある、クレベール広場(Place Kleber)へはほんの2駅。


明るい雰囲気のクレベール広場

クレベール広場はトラムの路線が集まるターミナルにもなっていた。ホテル・ル・クレベールは、そのターミナルのすぐ前にあり、部屋の窓からは行き交うトラムが良く見える。息子は大喜び。でもトラムを眺めるのはほどほどに、ストラスブールのリベンジ観光に出発だ。


ホテルの部屋の窓から見えるターミナルの円屋根

今回のホテルは、観光するのに最適の場所で、殆ど徒歩でまわることができる。アルザス民俗博物館、カテドラルとその周辺、プティト・フランスあたりを見て周り、おいしいアルザスの料理やワイン、アルザスのお菓子などの味覚も楽しむことができた。

アルザス民俗博物館 Le Musée Alsacien
ストラスブールの旧市街はイル川という川の本流と支流で囲まれていて、旧市街を歩いていると川によく出会う。川沿いの、カテドラルを望む橋のすぐそばにアルザス博物館がある。建物は木造で、古い民家を改装して博物館にしたという。


アルザス博物館の前からカテドラル方面を望む

エントランスロビーとロッカールームは近代的だが、ゲートから導かれた中庭はとても古い民家の雰囲気がプンプン漂っていた。

中庭を取り囲む建物を見上げると、バルコニーには木彫りの彫刻が施され、花が飾られ… 時空を遡った気分に浸れる。



各フロアの内部には、昔のアルザスの人々の生活を伝える家具、丁度類、衣装、日用品や台所用品、仕事の道具… 様々な品が展示されている。

当時の様子がそのまま再現されている部屋もいくつかあり、そこの椅子に座ってぼーっとしていると、アルザスの古き良き時代の主人公になった気分になれる。


たくさん展示されていたミニチュアルームのひとつ

地下室もあって、そこにはワイン作りの道具や大きなワイン樽などが置かれていた。今夜はアルザスワインを飲むぞ!

博物館からカテドラルの塔を目指してヴィユ・マルシェ・オ・ポアッソン通り(Rue du Vietue-Marché-aux-Poissons)を歩く。


アルザスのお菓子・クグロフの型が植木鉢に
ドイツの黒い森地方、ゲンゲンバッハで見たような木組みの家がたくさん並んでいるが、壁の色とか看板とか、バルコニーの飾りなどがドイツとはどことなく違って小洒落ている・・・ 



広場に出たら、そこにグーテンベルクの銅像を発見。活版印刷を発明したグーテンベルクはここストラスブールに亡命したのだ。

グーテンベルクはドイツのマインツ出身。明日はそのマインツに行って、グーテンベルク博物館を訪れる予定。

カテドラル Le Cathédrale
広場を右に曲がり、おみやげ屋の並ぶアルバルド通り(Rue de Hallebardes)に入ると、目の前にいきなりドドーンと巨大な大聖堂が現れた!

4年前に初めて見たときと同じ驚きと感動。142mの塔を持つカテドラルの大きさ自体驚きだが、周りのせいぜい4~5階建ての建物群のなかに、このカテドラルだけが異様にデカイところが、驚きを倍増させる。

明るい色の外壁とファサードの細かい装飾が、その大きさに気高さを与えている。まさに神々しい姿。中世の人々は、この大聖堂に神を感じ畏怖したことだろう。





今回はこの大聖堂の内部をゆっくり見学できた。バラ窓のステンドグラスをはじめ、四方の高い壁に埋め込まれたステンドグラスの美しさは息を呑むほどだし、高い天井を支える連続するゴシックのアーチが織り成す造形美も素晴らしい。


祭壇の右奥には有名な天使の柱や天文時計がある。

コインを入れたときだけ、数分間ライトアップされるというのはちょっとセコイが、息子がとてもやりたがっていたので20セントを入れて照明を点灯した。周りの人達が待ってましたとばかり集まってきて、写真を撮り始めた。

大聖堂の前に高い鉄骨の構造が組み立てられ、照明器具が取り付けられている。4年前に見たライトアップのアトラクションが夜10時から行われるらしい。これは必見!

プティット・フランス La Petite France
旧市街を散策しながらプティット・フランス地区を目指す。プティット・フランスの近くにはカラフルな木組みの家がたくさん並んでいる。大きくて風格があり、上の階が道に迫り出したものもあり、それが独特の雰囲気を作り出している。








おしゃれなお菓子屋さんを見つけ、そこでおいしそうなお菓子を買った。写真はクグロフ。



近くのベンチでそのお菓子を食べていたら、久しぶりに日本人観光客グループを見かけた。そのうちの一人が突然立ち止まり、上空を見つめて指差し「あっ!」と叫んだ。「なんだ?」指差している空を見ると… ツルのような鳥が何羽も飛んでいた。コウノトリだ!コウノトリはこの町のシンボルのようで、お土産屋ではコウノトリのぬいぐるみや絵葉書などたくさん売られている。実物のコウノトリなんて初めて見た。



川辺に並ぶ木組みの家々のこの風景、前回は雨だったが今回は晴天!水辺の風景はやっぱり陽光に照らされているのがいい。


川には遊覧船が行き交っている。前回来たときはうちらも乗った。これは予想以上に所要時間が長かった…

乗船時間を必要以上に長くしているのは、支流と本流の間の水位の差だ。船は水位の異なるポイントをいくつも通過するのだが、このポイントに来る度に水門を閉じて、そこに水を引き込んだり、排出したりして、行く先の川の水位と同じになるまでじっと待っているのだ。1回ぐらいならおもしろいが、何度もこれがあるとだんだんうんざりしてくる。今回は外からこの様子を眺めた。船が水門内に入ると面白いように水位が変わっていく。



オランダでよく見かける跳ね橋もそうだが、日本でこんなことやってたらきっと「なんとかならないのか!」と苦情がくるに違いない。これはゆったりライフのヨーロッパならではの風物詩だろう。

プティット・フランスから再びカテドラル前に戻ってきた。そろそろファサードに夕日が当たり始めている。ストラスブールで1枚スケッチをしようと思って、良さそうな場所を探していたのだが、カテドラルのスケッチに挑戦することにした。

しかし、この巨大な建造物をどうやって小さなスケッチブックの紙におさめていいのやら、全く困ってしまった。描いては消し、描いては消ししているうちに、とんでもないものをモチーフに選んでしてしまったことを後悔… 

スケッチと格闘していたら中国人のツアーの一行が覗き込んできた。「很難!」(むずかしい!)、と一言中国語を発したら、「中国人(チョンゴウリェン)?」と訊いてきた。中国という広い国、方言も多種多様。日本人のこんなヘタな中国語を聞いて、「中国人か?」なんて思うところがおもしろい。「太好了!(上手にできたね)」と言われたけれど… 

どうしていいかわからず、細部を省略してできるだけ大ざっぱに短時間で仕上げたら、時間をかけた絵よりうまくいった… かな?

スケッチしている間に夕日がカテドラルのファサードを照らし、明るい桃色がかった砂岩の壁が黄金色に燃え上がった。この瞬間はただ立ちすくんで見つめ、祈るしかない。


前回もこのシーンに出くわしたが、夕日が当たることを計算に建てられたことは間違いないだろう。堂内に入ればきっとバラ窓から七色の光が内部を照らしていることだろう。神様の存在を感じさせずにはおかない自然の現象を利用した最高の演出!

スケッチを終えて家族と合流し、マロカン通り(Rue de Maroquin)に並ぶ古いレストランの1つを選び、テラスで夕食にした。フランス語はわからないが何とか食べたいものを注文した。ベッコフ、シュークルート、キッシュにエスカルゴ・・・ ワインはもちろんアルザスの白ワインで、ゲヴュルツトラミネルとミュスカ!


ベッコフはジャガイモと肉をやわらかく煮た鍋料理

アルザス料理はドイツ的、シュークルートは言ってみればザウアークラウト、「ゲヴュルツトラミネル」なんてまるでドイツ語だが、やっぱりドイツのものとは違う気がする。柔らかいフランス語が飛び交い、きれいなおねえさんが料理を運んでくれ、食器もおしゃれだと、味も違って感じるのかな… ま、どれもおいしいことに変わりはない。



”C’est tres bon!! Au revoir!” 数少ない言えるフランス語で挨拶をしてお店を出たあと、近くのスタンドでアイス(Glace)を買い、それをなめながら三たびカテドラルへ。もうすぐ10時。アトラクションが始まる。


大聖堂 光と音響のアトラクション

カテドラル前の広場には人が大勢集まり、アトラクションが始まるのを待っていた。鐘楼の大きな鐘が10時を告げて鳴り始めた。アトラクションは今かと待ち構えたが、鐘が鳴るばかりでなかなか始まらない。もう100回ぐらい鐘を打ったころ、ようやく鐘が鳴り止み、カテドラルのファサードを照らしていた普通のライトアップが消え、音楽が始まった。「展覧会の絵」だ。「プロムナード」のトランペットに合わせ、ライトアップのアトラクションが始まった。

色とりどりの光線が、ファサードの美しい幾何学模様の凹凸に影を落としつつ照らして行く。堂内にも照明がセットされ、内部からも光が発せられる。音楽は「展覧会の絵」を中心に、「くるみ割り人形」、「禿山の一夜」、ロシア正教の聖歌のような合唱曲などが散りばめられ(今回はロシアの音楽特集?)、音楽にぴったり呼応する光線のスペクタクルで、変幻自在に姿を変えるストラスブール大聖堂のファサードは、この世のものとは思えない美しさや、ときにおどろおどろしい姿を見せる。



最後は「キエフの大門」で堂々と華々しく終わり、突然暗闇と静寂が訪れた。拍手が沸き起こると、ファサードは何事もなかったかのように、また通常の穏やかなライトアップに戻った。

前回ここに来た2006年はモーツァルトの生誕250年ということで、モーツァルトの音楽でこのショーが行われたが、ショーはこうして毎年夏の夜に行われているようだ。夏にストラスブールに来たら、夜は絶対これを見るべき!感動すること間違いない。



ストラスブール(2006年夏のヨーロッパ旅行より)
マインツ&ヴィースバーデン
トリベルク ~黒い森のハイキング~
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