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ミッシャ・マイスキー バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会Ⅱ

2022年11月03日 | pocknのコンサート感想録2022
10月31日(月)ミッシャ・マイスキー(Vc)
サントリーホール

【曲目】
1. バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009
2. バッハ/無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008
3.バッハ/無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV1012
(アンコール)
1. バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバソナタ ト短調 BWV1029(全3楽章)
2. バッハ/コラール前奏曲「来たれ、異教徒の救い主よ」
3. バッハ/管弦楽組曲第3番~エア
Pf:マキシミリアン・マイスキー

今年の5月、アルゲリッチとの共演で久々に聴いたマイスキーが素晴らしく、長らくご無沙汰していたマイスキーをまたじっくりリサイタルで聴きたいと思い今夜の演奏会を訪れた。

以前の、全身で表現する迫真の演奏が、ある時期から羽毛のように軽やかに天上へ舞い上がる演奏に変わり、15年前のこの日にオペラシティで聴いたリサイタルではどっちとも云えない演奏に感じたが、今夜のマイスキーはまた重力を得て地上に舞い降り、濃厚で粘りがあり、熱くて気迫に満ちたバッハを聴き手に訴えかけて来た。そこには命が宿り、熱い血が通っていた。前半の3番と2番は、表現はアグレッシブだけれど音には丸みと弾力性があり、それぞれの舞曲では舞の様子を生き生きと表現したり、たっぷりと抒情と哀愁を湛えた歌を聴かせたりしつつ、全体を俯瞰した組曲としての貫禄と存在感も具えていた。

そんな安定した演奏が、後半の6番ではスリリングな白眉の名演となった。崖っぷちのギリギリのところで踏みとどまっているような緊迫感が全曲を支配し、聴き手のテンションをグングンと高めて行った。内なる声と厳しく自問自答を繰り広げるプレリュード、体の奥底に脈打つ熱い血流が込み上げてくるようなアルマンドやサラバンド、一音一音に魂を込めて全身全霊でぶつかってくるクーラントやガヴォット、そしてジーグは組曲の集大成のような貫禄をそなえながらも魂は叫び続け、一瞬たりとも気を弛めることなくエネルギー全開のフィナーレとなった。深い彫塑の芸術が息づく真剣勝負の演奏にマイスキーの風貌も重なり、神々しささえ感じた。

そんな凄みのある無伴奏を堪能したあとのアンコールは、ステージの隅に準備されていたピアノが中央に運ばれ、マイスキー氏の息子のマキシミリアンさんが登場してピアノを弾き、リサイタルの第3部とも云えるような親子のデュオによるアンコールステージが始まった。ソナタではまだ18歳という青年の鋭く生き生きしたタッチが冴え、疲れを知らない父のエネルギッシュに切り込むチェロと共に熱いバトルが繰り広げられた。第2楽章ではミッシャの愛情の温もりも伝わってきた。それからお馴染みのアンコールピースが2曲。無伴奏では厳しさが勝っていたマイスキーのチェロが、温かく深い温もりある優しい歌をしみじみと奏でた。リサイタルを通して、バッハの音楽の多様性、懐の深さを改めて感じることもできた。

マイスキーは常に変化し続けるアーティストだと15年前の感想に書いていたが、それを証明するようなまた新たなマイスキーが聴けて、また目が離せなくなった。

別府アルゲリッチ音楽祭2022 アルゲリッチ&マイスキー 2022.5.16 東京オペラシティコンサートホール
マイスキー バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲演奏会 I 2007.11.1 東京オペラシティコンサートホール

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