2月21日(水)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂
【曲目】
1.バッハ/カンタータ第66番「よろこべ、汝らの心よ」BWV66
A:久保田里奈/T:半田悠河/B:小河佑樹
2.バッハ/ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調 BWV1048
3.バッハ/カンタータ 第75番「貧しい人は饗せられん」BWV75
S:宮原唯奈/A:石山知佳/T:板谷俊祐、半田悠河/B:鈴木薫
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ 第184番「待ち望みたる歓びの光ぞ」BWV184~コラール
【管弦楽&合唱】
小河佑樹 指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
喜びで打ち震える66番の冒頭合唱から、至福の空気に包まれた75番のコラールまで、バッハへの温かな共感に満ち、喜びや慈しみが伝わって来くる藝大バッハカンタータクラブの定期演奏会だった。バハカンを聴きたくなるのは、毎年メンバーが卒業で交替しながらも変わらず引き継がれ、培われてきた、バッハへの愛を表現しようとする姿勢が幸せな気分にしてくれるから。
こんな素敵なバハカンのバッハに出逢えたのは久しぶりだった。昨年の定期演奏会ではマスク越しの合唱にがっかりし、マスクなしだった下谷教会でも、伏し目がちなメンバーが目立ち、かつてのバハカンの豊かな表情が後退してしまったように感じた。コロナがバハカンを変えてしまったのだろうかとも危惧したが、今日は本来のバハカンの姿を取り戻した。
全員がクリスチャンでなくとも、それぞれが信じるものに真っ直ぐに向き合い、確信を持って喜びや希望、不安や畏れを伝えてくる。今夜の合唱とオケからは、喜びや希望の表現に大きな共感を覚えた。その最たるものがコラールだ。メンバーが心をひとつにして大切なメッセージを聴衆に伝えようとするハートが伝わってくる。75番では心躍るオケの合奏付きでコラールが2回聴けるうえ、シンフォニアではトランペットによる朗々としたコラール旋律も聴けて至福感が倍増する。この曲は、去年鈴木雅明氏の講演で詳しい話を聞いた記憶が新しいため、益々入れ込んで聴くことが出来た。
どのソリストも歌の巧さもさることながら、言葉と真摯に向き合い、何を伝えたいのかという意志が感じられた。とりわけ心を捉えたのは、去年も感銘を受けた宮原唯奈さんのソプラノ。「苦悩を喜んで受け入れる」と歌うアリアと、長い苦難を経て最後に訪れる死を「良きこと(wohlgetan)」と受け入れるレチタティーヴォが、迷いのない決意表明として心に響いた。ふくよかで美しい声で抑揚豊かに歌われる表現力、言葉も命を得てクリアに伝わって来る。レチタティーヴォからコラールへの移行も感動的だった。
印象に残ったソリストをもう一人挙げると、66番の第1曲が終ってもソリストが出てくる様子がなくどうしたのかと思ったら、指揮の小河さんがおもむろに客席に振り返って、挨拶でもするのかと思ったら、続くレチタティーヴォとアリアを朗々と見事に歌ったのはインパクト大だった。
小河さんはこの3月で大学生活を終える。今年度の卒部生は6名。入学してすぐカンタータクラブに入っていれば、コロナによる苦渋の期間がまるまる学生生活に被る。プログラムには卒部生の思いが綴られていたが、皆がこの辛い時期について言及していた。小河さんはそのなかでも長いコメントを寄せ、クラブ存続の危機を指揮者として必死で乗り越えたことが記されていた。
一方会場では「コロナ対策」としてマスク着用の推奨と、マスクをしない場合の禁止行為について、未だに長々とアナウンスが入ったのには驚かされた。芸大が感染対策と称してこれまで散々過剰な行動制限を学生たちに強いてきたことを思った。今はもう、こんなアナウンスよりもこれまでのことを検証する時ではないだろうか。アナウンスがなければこんな余計なことを書くつもりはなかったのだが、なにはともあれ、バハカンが無事に本来の姿を取り戻して、また素晴らしい演奏を聴けたことは本当に喜ばしい限りだ。
2つのカンタータの間に、指揮者なしで演奏されたブランデンブルク協奏曲第3番は、ハキハキして活きがよく、メンバーがアンサンブルを楽しんでいる様子が伝わって来た。ヴィオラのソロの果敢な食いつきが特に耳と目を引いた。
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S:宮原唯奈/A:石山知佳/T:板谷俊祐、半田悠河/B:鈴木薫
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ 第184番「待ち望みたる歓びの光ぞ」BWV184~コラール
【管弦楽&合唱】
小河佑樹 指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ
喜びで打ち震える66番の冒頭合唱から、至福の空気に包まれた75番のコラールまで、バッハへの温かな共感に満ち、喜びや慈しみが伝わって来くる藝大バッハカンタータクラブの定期演奏会だった。バハカンを聴きたくなるのは、毎年メンバーが卒業で交替しながらも変わらず引き継がれ、培われてきた、バッハへの愛を表現しようとする姿勢が幸せな気分にしてくれるから。
こんな素敵なバハカンのバッハに出逢えたのは久しぶりだった。昨年の定期演奏会ではマスク越しの合唱にがっかりし、マスクなしだった下谷教会でも、伏し目がちなメンバーが目立ち、かつてのバハカンの豊かな表情が後退してしまったように感じた。コロナがバハカンを変えてしまったのだろうかとも危惧したが、今日は本来のバハカンの姿を取り戻した。
全員がクリスチャンでなくとも、それぞれが信じるものに真っ直ぐに向き合い、確信を持って喜びや希望、不安や畏れを伝えてくる。今夜の合唱とオケからは、喜びや希望の表現に大きな共感を覚えた。その最たるものがコラールだ。メンバーが心をひとつにして大切なメッセージを聴衆に伝えようとするハートが伝わってくる。75番では心躍るオケの合奏付きでコラールが2回聴けるうえ、シンフォニアではトランペットによる朗々としたコラール旋律も聴けて至福感が倍増する。この曲は、去年鈴木雅明氏の講演で詳しい話を聞いた記憶が新しいため、益々入れ込んで聴くことが出来た。
どのソリストも歌の巧さもさることながら、言葉と真摯に向き合い、何を伝えたいのかという意志が感じられた。とりわけ心を捉えたのは、去年も感銘を受けた宮原唯奈さんのソプラノ。「苦悩を喜んで受け入れる」と歌うアリアと、長い苦難を経て最後に訪れる死を「良きこと(wohlgetan)」と受け入れるレチタティーヴォが、迷いのない決意表明として心に響いた。ふくよかで美しい声で抑揚豊かに歌われる表現力、言葉も命を得てクリアに伝わって来る。レチタティーヴォからコラールへの移行も感動的だった。
印象に残ったソリストをもう一人挙げると、66番の第1曲が終ってもソリストが出てくる様子がなくどうしたのかと思ったら、指揮の小河さんがおもむろに客席に振り返って、挨拶でもするのかと思ったら、続くレチタティーヴォとアリアを朗々と見事に歌ったのはインパクト大だった。
小河さんはこの3月で大学生活を終える。今年度の卒部生は6名。入学してすぐカンタータクラブに入っていれば、コロナによる苦渋の期間がまるまる学生生活に被る。プログラムには卒部生の思いが綴られていたが、皆がこの辛い時期について言及していた。小河さんはそのなかでも長いコメントを寄せ、クラブ存続の危機を指揮者として必死で乗り越えたことが記されていた。
一方会場では「コロナ対策」としてマスク着用の推奨と、マスクをしない場合の禁止行為について、未だに長々とアナウンスが入ったのには驚かされた。芸大が感染対策と称してこれまで散々過剰な行動制限を学生たちに強いてきたことを思った。今はもう、こんなアナウンスよりもこれまでのことを検証する時ではないだろうか。アナウンスがなければこんな余計なことを書くつもりはなかったのだが、なにはともあれ、バハカンが無事に本来の姿を取り戻して、また素晴らしい演奏を聴けたことは本当に喜ばしい限りだ。
2つのカンタータの間に、指揮者なしで演奏されたブランデンブルク協奏曲第3番は、ハキハキして活きがよく、メンバーがアンサンブルを楽しんでいる様子が伝わって来た。ヴィオラのソロの果敢な食いつきが特に耳と目を引いた。
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