6月18日(金)ペーター・ダイクストラ指揮スウェーデン放送合唱団
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.バーバー/アニュス・デイ
2.マルタン/二重合唱のためのミサ曲
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3.サンドストレーム/主を讃えよ(2003)
4.プーランク/二重合唱のためのカンタータ「人間の顔」
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【アンコール】
1.アルヴェーン/「そして乙女は輪になって踊る」
2.ステンハンマル/「後宮の庭園にて」(『3つの無伴奏合唱曲』より)
3.アルヴェーン/「私たちの牧場で」
スウェーデン放送合唱団はいろいろな意味で世界最強の合唱団だと思う。今まで何べんこの合唱団の実力を思い知らされてきたことか。今回の来日では単独のアカペラ公演があり、しかもプーランクの大曲「人間の顔」を引っさげてきた。
まずはバーバーの有名な弦楽のためのアダージョの合唱版「アニュスデイ」。出だしでわずかなほころびがあったものの、声部が重なるにつれてこの合唱団ならではの響きの淵に引きずり込まれて行く。その響きはどこまでも深く澄みきった静かな泉のようだ。合唱をしているとよく言われる「周りの声を良く聴いて音程と呼吸を合わせて」なんていう世界とは当たり前だが全く次元が異なるところにこの合唱団はいる。
スウェーデン放送合唱団のすごさは、団員一人一人の声楽家としてのレベルの高さもさることながら、空気のわずかな動きを感じ合って呼吸し、ハーモニーが最も美しく響くポイントを瞬時に見つけて合わせる驚異的なアンサンブル能力だろう。世の中の楽器の中で「人間の声」が一番美しく響きあう楽器だということに疑う余地がないことを示してくれる。何度聴いても、この響きはショックでさえある。
続くマルタンのミサは、滑らかで高貴な声楽的ポリフォニーが織りなす「キリエ」で始まり、「グロリア」や「クレド」では、言葉を敏感に捉えたマルタンの曲想が、合唱にも多彩な方向性を与え、動きが加わり、更に幅広い表現力を聴かせてくれた。終盤の「サンクトゥス」で歌われる「オザンナ」での押し寄せる波は、天から軍勢が降り下ってくるような神秘に溢れたすごい迫力。そして、「アニュス・デイ」の心の底から訴える"miserere nobis"(我らを憐れみたまえ)と、最後に1度だけ歌われる"dona nobis pacem"(我らに平安を与えたまえ)の静謐さも素晴らしかった。
後半1曲目のサンドストレームの曲はいろんな技巧がコラージュ的に散りばめられた品評会のような音楽であっけなかった。そしてお待ちかね、プーランクの「人間の顔」。この演奏を聴いて、スウェーデン放送合唱団に新たに益々心酔してしまった。それは卓越したアンサンブルのクオリティーとか、音色の美しさとか、難曲を見事にクリアする能力のすごさに加え、人間の生々しい肉声が心に訴えてきたこと。
それまでの曲目でのミサの典礼文から、歌詞が自らの戦争体験をベースに生まれた、悲惨な戦争の苦しみのなかから生命や自由を訴えるシュールな内容になると、別世界の響きを聴かせていた合唱団が、もっと聴き手にズズッと寄り添ってきて、真剣な眼差しを向け、ストレートに心を揺さぶってきた。そこには人間の様々な感情が湧き上がり、聴き手の心を掴んで離さない。そして、長大な終曲、たたみかけるように高ぶってくる気持ちが、聴き手に切ないほどに伝わってきて、最後の"Liberté"「自由」という一語で狂おしいほどの興奮へと導かれた。まさしく生きた「人間の顔」が音楽で生々しく表現された演奏だった。
アンコールはこの合唱団お得意のスウェーデン民謡のアンコールピースが3曲。ここでは、それまでの演奏で感じたものとはまた違う温かさや郷愁が伝わり、心に沁みた
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東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1.バーバー/アニュス・デイ
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2.マルタン/二重合唱のためのミサ曲
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【アンコール】
1.アルヴェーン/「そして乙女は輪になって踊る」
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3.アルヴェーン/「私たちの牧場で」
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まずはバーバーの有名な弦楽のためのアダージョの合唱版「アニュスデイ」。出だしでわずかなほころびがあったものの、声部が重なるにつれてこの合唱団ならではの響きの淵に引きずり込まれて行く。その響きはどこまでも深く澄みきった静かな泉のようだ。合唱をしているとよく言われる「周りの声を良く聴いて音程と呼吸を合わせて」なんていう世界とは当たり前だが全く次元が異なるところにこの合唱団はいる。
スウェーデン放送合唱団のすごさは、団員一人一人の声楽家としてのレベルの高さもさることながら、空気のわずかな動きを感じ合って呼吸し、ハーモニーが最も美しく響くポイントを瞬時に見つけて合わせる驚異的なアンサンブル能力だろう。世の中の楽器の中で「人間の声」が一番美しく響きあう楽器だということに疑う余地がないことを示してくれる。何度聴いても、この響きはショックでさえある。
続くマルタンのミサは、滑らかで高貴な声楽的ポリフォニーが織りなす「キリエ」で始まり、「グロリア」や「クレド」では、言葉を敏感に捉えたマルタンの曲想が、合唱にも多彩な方向性を与え、動きが加わり、更に幅広い表現力を聴かせてくれた。終盤の「サンクトゥス」で歌われる「オザンナ」での押し寄せる波は、天から軍勢が降り下ってくるような神秘に溢れたすごい迫力。そして、「アニュス・デイ」の心の底から訴える"miserere nobis"(我らを憐れみたまえ)と、最後に1度だけ歌われる"dona nobis pacem"(我らに平安を与えたまえ)の静謐さも素晴らしかった。
後半1曲目のサンドストレームの曲はいろんな技巧がコラージュ的に散りばめられた品評会のような音楽であっけなかった。そしてお待ちかね、プーランクの「人間の顔」。この演奏を聴いて、スウェーデン放送合唱団に新たに益々心酔してしまった。それは卓越したアンサンブルのクオリティーとか、音色の美しさとか、難曲を見事にクリアする能力のすごさに加え、人間の生々しい肉声が心に訴えてきたこと。
それまでの曲目でのミサの典礼文から、歌詞が自らの戦争体験をベースに生まれた、悲惨な戦争の苦しみのなかから生命や自由を訴えるシュールな内容になると、別世界の響きを聴かせていた合唱団が、もっと聴き手にズズッと寄り添ってきて、真剣な眼差しを向け、ストレートに心を揺さぶってきた。そこには人間の様々な感情が湧き上がり、聴き手の心を掴んで離さない。そして、長大な終曲、たたみかけるように高ぶってくる気持ちが、聴き手に切ないほどに伝わってきて、最後の"Liberté"「自由」という一語で狂おしいほどの興奮へと導かれた。まさしく生きた「人間の顔」が音楽で生々しく表現された演奏だった。
アンコールはこの合唱団お得意のスウェーデン民謡のアンコールピースが3曲。ここでは、それまでの演奏で感じたものとはまた違う温かさや郷愁が伝わり、心に沁みた
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