10月28日(木)ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団
《2021年10月Bプロ》
サントリーホール
【曲目】
1.ステンハンマル/セレナード ヘ長調 Op.31
2.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調 Op.67
A定期に続きサントリーホールのB定期でも、ブロムシュテットとN響は感動を届けてくれた。前半はステンハンマルのセレナード。風が揺れ、光が震え、景色が笑っている。春の息吹が溢れるなか、屈託ない憩いや楽しみが行き交う。そんなディヴェルティメント的愉悦に満ちた音楽、そして演奏。それにしてもこの生命の源から湧き出たような瑞々しさはどうだろう。ブロムシュテットは永遠の少年の若さを具えているとしか言いようがない。それに応えるN響の見事な妙技。抜群の切れと冴え、次々と奏でられるソロ楽器の巧さ、艶と輝きのあるアンサンブルが、自由で柔軟で繊細な歌を奏で、心踊る。そして祭りの後の満ち足りた気分でホッとつくため息のようなエンディングに幸せを感じた。この演奏でまた何度でも聴きたいと思った。
後半の「運命」は張り詰めた空気を破るように始まった。驚いたのは、オケの音が深く渋く重厚な響きに変わったこと。ドイツの長い伝統のあるオーケストラを聴いているよう。適度なテンポで一つ一つのフレーズが息づき、じっくり吟味しつつ進み、音を積み上げて高みへ上って行く。炭が鈍い光を発し、それが徐々に赤みを増し、静かに炎を上げるような感動。音量やアクセントで圧倒して血圧が一気に上がるのとは対極の、じわじわと体が熱くなって得られる感動。それぞれのパートが自然に呼吸し、歌を奏で、それらが美しく調和する。ここでもプレイヤーの腕前が随所で光る。吉村さんが第1楽章で奏でたカデンツァ風のオーボエは匠の技のような味わいがあったのを始め、次々に交替して歌い交わす管楽器の歌はどれも絶品。
200年もの時間を生き抜いてきたホンモノの音楽の格調と底力をリアル体験した。これは、ブロムシュテットのベートーヴェンへの愛、N響への愛情によってもたらされたものだ。掛け替えのない瞬間に立ち会っていることを実感した。名演と思える「運命」に出会ったことはこれまでにもあるが、こんな風にジワジワと静かに感情が高まり、深い感謝の気持ちで一杯になるのは初めての体験だ。
凄いヴォルテージの拍手が続き、オケが引いたあともブロムシュテット翁は2度ステージに呼び戻された。2度目はコンマスのマロさんと一緒。スタンディングオベーション。もう感謝しかない。そして燃え盛ったあとの炭のように、帰り道でもいつまでも心がじんわり熱かった。また来年の来日を心から楽しみにしている。
ブロムシュテット指揮N響2021年A定期 (2021.10.17 東京芸術劇場)
ブロムシュテット指揮N響:モーツァルト/ハ短調ミサ(2019.11.22 NHKホール)
ブロムシュテット指揮N響:「英雄」「死と変容」「タンホイザー」(2019.11.7 サントリーホール)
ブロムシュテット指揮N響:「田園」&ステンハンマル(2018.10.25 サントリーホール)
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
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サントリーホール
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1.ステンハンマル/セレナード ヘ長調 Op.31
2.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調 Op.67
A定期に続きサントリーホールのB定期でも、ブロムシュテットとN響は感動を届けてくれた。前半はステンハンマルのセレナード。風が揺れ、光が震え、景色が笑っている。春の息吹が溢れるなか、屈託ない憩いや楽しみが行き交う。そんなディヴェルティメント的愉悦に満ちた音楽、そして演奏。それにしてもこの生命の源から湧き出たような瑞々しさはどうだろう。ブロムシュテットは永遠の少年の若さを具えているとしか言いようがない。それに応えるN響の見事な妙技。抜群の切れと冴え、次々と奏でられるソロ楽器の巧さ、艶と輝きのあるアンサンブルが、自由で柔軟で繊細な歌を奏で、心踊る。そして祭りの後の満ち足りた気分でホッとつくため息のようなエンディングに幸せを感じた。この演奏でまた何度でも聴きたいと思った。
後半の「運命」は張り詰めた空気を破るように始まった。驚いたのは、オケの音が深く渋く重厚な響きに変わったこと。ドイツの長い伝統のあるオーケストラを聴いているよう。適度なテンポで一つ一つのフレーズが息づき、じっくり吟味しつつ進み、音を積み上げて高みへ上って行く。炭が鈍い光を発し、それが徐々に赤みを増し、静かに炎を上げるような感動。音量やアクセントで圧倒して血圧が一気に上がるのとは対極の、じわじわと体が熱くなって得られる感動。それぞれのパートが自然に呼吸し、歌を奏で、それらが美しく調和する。ここでもプレイヤーの腕前が随所で光る。吉村さんが第1楽章で奏でたカデンツァ風のオーボエは匠の技のような味わいがあったのを始め、次々に交替して歌い交わす管楽器の歌はどれも絶品。
200年もの時間を生き抜いてきたホンモノの音楽の格調と底力をリアル体験した。これは、ブロムシュテットのベートーヴェンへの愛、N響への愛情によってもたらされたものだ。掛け替えのない瞬間に立ち会っていることを実感した。名演と思える「運命」に出会ったことはこれまでにもあるが、こんな風にジワジワと静かに感情が高まり、深い感謝の気持ちで一杯になるのは初めての体験だ。
凄いヴォルテージの拍手が続き、オケが引いたあともブロムシュテット翁は2度ステージに呼び戻された。2度目はコンマスのマロさんと一緒。スタンディングオベーション。もう感謝しかない。そして燃え盛ったあとの炭のように、帰り道でもいつまでも心がじんわり熱かった。また来年の来日を心から楽しみにしている。
ブロムシュテット指揮N響2021年A定期 (2021.10.17 東京芸術劇場)
ブロムシュテット指揮N響:モーツァルト/ハ短調ミサ(2019.11.22 NHKホール)
ブロムシュテット指揮N響:「英雄」「死と変容」「タンホイザー」(2019.11.7 サントリーホール)
ブロムシュテット指揮N響:「田園」&ステンハンマル(2018.10.25 サントリーホール)
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