オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

全米シングル・チャート No.1分析

2023-06-07 | チャート解析

 

ジャスティン・ティンバーレイク。

超有名人なのに、なぜか自分の中で影が薄い。

知ってるヒット曲の90%以上は好きなのに、いつも「そういえば、あんな人いたな」って...。

新譜リリースが頻繁じゃないから、というのもあるかも(最新アルバムから、もう5年!)。

相変わらずのことで慣れているからか、新作が長く出てないのをメディアがいちいち取り立てないのも、面白い。

 

(記事の原稿...!)

 


 

分析系の記事です!

全米シングル・チャートの1位について、5~6年間でいろいろ指標をまとめてみました。

概観しながら、軽くコメントしていきたいと思います!

 

 

①1位獲得曲数と、そのうち初登場(1週目)で1位を獲得した曲の数

 その年に新しく1位を獲得した曲に限ります。過去に1位獲得済みの曲が、リバウンドして1位をとった場合はカウントしません。

 

  1位 うち初登場 初登場の割合
2017 10 2 20.0
2018 12 4 33.3
2019 14 3 21.4
2020 20 12 60.0
2021 17 11 64.7
2022 12 6 50.0

 

 1位の絶対数に関しては、だんだん増えてきて2020年に急増したものの、2022年には平均的な曲数に戻ったことが読み取れます。ではなぜ急増したのかというと、初登場で1位を獲得する曲が急増したことがその要因にありそうです。相関係数は約0.8で、散布図を作ったら下図のようになりました。

 初登場1位の全体に占める割合も、全体的に、年々高まっています。1位の獲得の仕方が変わってきていることが分かりますね。下から上がってきてついに1位に到達!という形から、デビュー1週目に全力を尽くして初登場1位を狙う形です。ラジオが主流でみんながラジオを情報源に音楽を消費していた時代は、局ごとに新曲を紹介するスピードに違いがあったり、音楽消費に走るタイミングに個人差があったりして曲がヒットするのは徐々にだったかもしれませんが、情報社会で音楽へのアクセスがより簡単になった現代では、アーティストの新曲情報はすぐに広まるしすぐに試聴することができます。そのため、特に有名アーティストは新曲の発表直後に消費が殺到することが珍しくなくなって、その現象の影響も年々拡大していってチャートでは1位をとれるほどになりました。初登場で1位がとれる!と分かれば、レーベルが戦略的にそれを狙うことが考えられるので、そうした戦略も相まって初登場による1位獲得が増えたのだと思います。2023年も、1月に早くもマイリー・サイラスが1位デビューしていました。

 

 

②1位獲得曲のジャンル構成

 ジャンルについて、しつこいかもしれませんが、あくまで「アーティスト」で判断していますし、賛否両論を承知の上で個人的に判断しているところもあります。ご了承願います。...下図がぼやけていて見にくいところも。

 

 

 ①で見たように1位獲得曲数が毎年違うので、円グラフでまとめました。全体的なことが何か言えるか考えてみましたが、特にいえることがなさそうです。1位をとるジャンルの数が増えている!と言おうと思いましたが、実は2017年はポップ・R&B・ラップ・ラテンの4ジャンルが1位をとっていて、よく見たら2018年が異常なだけでした。

 個別具体的に軽く見ていくと、ポップ・ミュージック(赤)のシェアは年々減少していっている感じがあります。その理由の一つに、他ジャンルの勢力が強まってきたことがあるといえるでしょう。一方ラップ(黒)は、安定して高シェアを維持しているといえます。初登場1位の増加がこの下支えになっていて、2018年はNo.1ラップ・ソング8曲のうち3曲が初登場によるものでしたが、2022年は5曲のうち4曲がそうでした。R&B(水色)も低水準ながら一定のシェアを維持していて、つまり1年に1曲はNo.1R&Bソングが出る感じになっています。今年も、シザの "Kill Bill" が1位に到達しました。

 

 

③週数別・1位のジャンル構成

 1年は52週ですが、その52週のうちどのジャンルがどれぐらい1位を確保していたか、という話です。注意してほしいのは、ジャンルが必ずしも②と完全一致しないということで、2020~2022年は「ホリデー」(薄い灰色)が増えています。2019年に初めて1位をとったマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」は、2020~2022年のホリデー・シーズンにもリバウンドして1位をとりました。つまり、その分は①や②でカウントされていません。

 

 

 ここもやはり全体的にいえることが少なそうなので、具体的に、分かりやすいところから見ていきます。まず、ラップ(黒)のシェアが激減しました。曲数はそんなに減っていないのに、実際に1位を獲得した週数はどんどん短くなっていっています。1曲あたりの1位獲得週数というのを出してみたところ、以下のようになりました。ラップは、明らかに年々下がっています。

 その一方でポップ(赤)は、2020年に一旦弱まったものの全体的にはどんどん強くなっていっています。曲数が下がる一方で週数は上がっているので、1曲あたりの1位獲得週数はすごいですね。また、R&B(水色)も若干強まっているように見えます。今年はザ・ウィークエンドの "Die For You" もすでに1位をとってました。ロック(オレンジ)やK-Pop(紫)は単発的でしょうが、カントリー(緑)は今後どうなるか分かりません。カントリーのストリーミング人気がどこまで爆発するかによるでしょう。

 

 

④1位の価値

 最後に、非常に主観的な指標です。1位獲得曲について、チャート上でピークの9週を断定し、その平均値を求めました。1位獲得曲の、ピーク2か月間における平均順位です。これが1~3なら◎、4~10なら○、11~20なら△、21~なら✖と勝手にレーティングしました。1年間で1位を獲得した曲について、◎の曲が多いほど価値の高い1位が多くて望ましいが、✖の曲が多ければ単発的で価値の低い1位が多いことになり、その年は総じて1位の価値が低い年だと判断することになります。2018~2022年は、以下の通りです。

 

  ◎1~3 〇4~10 △11~20 ×21~
2018 10 1 1 0
2019 8 3 2 1
2020 10 2 2 6
2021 9 4 1 3
2022 9 2 1 0

 

 基本的にどの年も獲得曲数の半分は◎で安心なのですが、それにしても2020年はひどかったですね。1位獲得曲には少なくとも○までには入ってほしいとよく思っているのですが、2020年はそれ以下の水準のナンバーワン・ソングがあまりにも多かったです。1位を獲得しても、すぐに取り返されたり別の曲に負けたりして結局数週しか1位に滞在できないことはよくあります。それはいいんですけど、よくないのは上位からもすぐに転落してしまうケースで、上位における粘り強さがない、いわゆる「1位とっただけ」のケースが個人的にすごく嫌いです。そしてこれらは、100%初登場1位獲得曲によるチャート・アクションです。1位にデビューした後、勢いが落ちてチャートをどんどん転落していってしまうパターンですね。5年間で△と✖の数は合計17曲ですが、すべてそのパターンでした。もちろん初登場1位獲得曲のすべてがそうなるわけではなく、◎や○になるものも毎年けっこうあるのですが、△と✖が生じた原因は100%初登場1位が増えたことだといえるでしょう。①の最後で触れたように、初週にセールスやストリーミングを全力で稼ぎに行く戦略がとられると、このようなことが起こります。

 ...とはいえ、(1位の価値について辛辣なことを言ってしまいましたが)2021、2022年にはそれらは改善していて、1位の価値が再び元の水準に戻ってきています。今後も、その水準が維持されることを願います。

 

 

サマリー

①1位獲得曲数と、そのうち初登場(1週目)で1位を獲得した曲の数

> 登場1週目で1位をとる曲が増えたことにより、1位獲得曲数が一時的に増加した!

②1位獲得曲のジャンル構成

> シェア・・・ポップは縮小、R&Bとヒップホップは維持!

③週数別・1位のジャンル構成

> シェア・・・ラップが明らかに激減! & ポップが勢力拡大!

④1位の価値

> 2020年に暴落!だけど翌々年には元の水準に完全回復した!

 



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