明確な定義は難しいけど、チャートでのヒットには「上昇型」と「下降型」がある。
ざっくりいうと、「上昇型」は下位に初登場して、そこから上がってくる感じで、「下降型」はその逆。
K-Pop の全米ヒットはこれまでほとんどが「下降型」だったけど、
現在 NewJeans というアイドルの "Ditto" "OMG" なる曲が全米チャートを上昇していて、すごく新鮮に感じる。
「江南スタイル」がどうだったかは分からないから K-Pop 史上初ではないかもしれないけど、いずれにせよすごく珍しい現象!
「表に出てくるプロデューサー」について、まずは具体例から...。このような人たちです。
このような人たちのことについて、色々ややこしいことになってきたので勝手に整理することにしました。
プロデューサーの表出について述べたうえで、彼らのジャンル分けを考えます。
※かなり個人的な話です!
1.「表に出てくるプロデューサー」とは
基本、楽曲のプロデューサーはいわば「縁の下の力持ち」で、他人名義の曲をプロデュースして世に出すにあたり、自分の名前を曲の正式なアーティスト名のところにクレジットさせません。例えば、米R&Bシンガー、エラ・メイの "Shot Clock" (2018) はDJマスタードというプロデューサーによって制作されていますが、楽曲のアーティスト欄には彼の名前はなく、エラ・メイのみのクレジットです。ところが、陰の実力者たるこのようなプロデューサーたちも、自分の名前を世にアピールすることがあります。それにはいろいろな方法があるのですが、ここではそれを3つに分け、そのような「表に出てくるプロデューサー」について考えました。なお、この記事の解釈はあくまで個人的なものなので、こういう風に整理する人もいる、と参考程度に読んで下されば幸いです。
1-1.特定のジャンルを持つアーティストとしてデビューするパターン
一つ目は、自身もアーティストとしてデビューするという方法です。例えばブルーノ・マーズはシンガーとしてデビューする前は、プロデューサーとして活動していました。プロデューサーから業界に入って、キャリアの途中で歌手としての活動も始めたかたちですね。チャーリー・プースもそうだった気がします。これは、歌唱力のあるプロデューサーしかできない方法に見えますが、ダンス・ミュージックを作るDJとしてデビューする道もあります。「DJ / プロデューサーの○○」という紹介がよく見られるように、DJ とプロデューサーを兼業している人は多いです。ただ...、DJ も、DJ として売れるためにはすごい技術を必要とすることに違いはなく、これもある程度才能がなければいけないものだと思います。なので、誰でも簡単に、とは当然いきません。そう考えると、よく見る「DJ / プロデューサー」の人って、よく見るけど2つの才能を持ち合わせたすごい人なんだな、と思いました。ゼッドとか、デヴィッド・ゲッタとか。
1-2.プロデューサーとして世に出るパターン
二つ目は、シンガーや DJ としてではなく、プロデューサーとしてそのまま世間にデビューするパターンです。シンガーや DJ としてデビューできない場合、こういう方法があります。これが少しややこしくて、説明が分かりにくかったらすみません。彼らはプロデューサーとして自分のために楽曲を制作し、自己名義でそれをリリースするわけですが、多くの場合彼らはボーカルをシンガーやラッパーに担当してもらいます。もちろんボーカルのない曲もありだとは思いますが、ヒットさせたいなら挿入するのが一般的でしょう。そして、担当してもらう人を選ぶにあたって、当然ですが人気アーティストを選べばヒットの可能性はさらに高まります。なので、プロデューサーとしての経験が長くて多くのアーティストとの繋がりがあるプロデューサーほど、自分がこの方法で世に名前を出していく際、人気アーティストとたくさんコラボして実際にヒットに繋げていくわけです。代表例がベニー・ブランコで、彼は長らく裏作業の実力者でしたが、2018年に突然表に出てきました。それが "Eastside feat. カリード & ホールジー" という曲で、ボーカルに旬の若手を2人起用して曲の大ヒットに成功し、自身の名前を世に知らしめることにも成功した感じです。…とまあ、偉そうに説明していますが、自分もベニー・ブランコさんについては "Eastside" で初めて名前を知りました。こういうデビューがあるのか、と思いましたね。人気アーティストのボーカルの力を借りながら、プロデューサーとしてデビューするパターンです。
1-3.他人名義の曲で自己の存在をアピールするパターン
三つ目は、自分がプロデュースした他人名義の曲で、自己の存在をアピールするという方法です。「この曲は私がプロデュースした」ということを、表立ってアピールするわけですね。他人名義の曲のアーティスト欄に自分の名前も加えるパターンと、他人名義の曲中で、自分の名前を叫ぶパターンがあります。前者は、例えばジャスティン・ビーバーの "Lonely with ベニー・ブランコ" (2020) がそうで、ベニー・ブランコは自分の名前を楽曲に正式にクレジットさせていて、彼が楽曲の制作に携わったのだということが一目で分かるようになっています。これまでは自身がプロデュースした他人の楽曲でも自分の名前を出してこなかったベニーさんですが、"Eastside" でデビューに成功して以降、だんだんこのようなことが増えてきている気がしますね。後者は、主にヒップホップのプロデュースが得意なプロデューサーがやることで、プロデュースした他人のラップ・ソング内で自分の名前を叫び、関与をアピールします。例えばリル・ナズ・Xの "Panini" (2019) では、イントロでテイ・キースというプロデューサーがビートに合わせて自分の名前を叫んでいます。他にもメトロ・ブーミンやDJキャレドがそのようなことをしていて、叫び方が決まっていたり定型句がある人もいるようですね。どちらも 1-1 や 1-2 とは違い自身が主体となってデビューするわけではないので、比較的控えめな表出ですが、増えてきた方法なので特筆に値すると思いました。
2.ジャンル分け
...それで、したかったのは、彼らのジャンル整理です。ジャンル分けにこだわってしまう自分は、プロデューサーの表出の増加に困りました。...いや、困ったというか、ジャンル分けを間違えました。なので、今一度(勝手に)再定義したいと思います。
まず、1-1 のパターンですね。この場合は、ポップ、R&B、EDM などアーティストとしてはっきり所属ジャンルが決まることがほとんどなので、問題ありません。
次に、先に 1-3 のパターンです。楽曲のメイン・アーティストの所属ジャンルで自分はひとまず楽曲のジャンル分けをするのですが、この場合は、プロデューサーが自己名義の曲を出しているわけではないので、これも問題ありません。メイン・アーティストの所属ジャンルに従えばいいだけで、ジャスティン・ビーバーの "Lonely with ベニー・ブランコ" は(ジャスティン・ビーバーの)ポップ、ミーゴスの "Culture feat. DJキャレド" は(ミーゴスの)ヒップホップにジャンルが定まります。
問題は 1-2 のパターン。プロデューサーがメイン・アーティストに定義されるパターンです。プロデューサーとして曲を出しているので、所属ジャンルがありません。なので、彼らの楽曲の音楽性は、ボーカルを提供してもらったアーティストの所属ジャンルに依存します。主旋律をポップ・シンガーに歌ってもらったらポップ・ソングに、ラッパーにラップしてもらったらヒップホップ・ソングになるわけですね。つまり、彼らは無色、無属性なわけで、自分はそれをよく理解しておらず、対象者であるベニー・ブランコさんや NEIKED さんをEDMに分類してしまっていました。...さすがに雑でしたね。ここで一旦整理(修正)して、彼らを「無属性」としたいと思います。覚えている限り無いと思いますが、もし以前の記事でこのような誤ったジャンル分けを直接記載していた箇所がありましたら、申し訳ありません。
...ただ、例外があります。DJキャレドやインターネット・マネーなどヒップホップ・ソングのプロデュースがメインのプロデューサーは、自身が主体となってデビューした場合、所属ジャンルをヒップホップにカテゴライズしています。それは、単に(プロデューサーとして)ヒップホップ・ミュージックの制作が多くてラッパーへのプロデュースが多いからというだけではなく、自身が主体となってデビューしたときもボーカルを協力してもらう人にラッパーを選ぶことが多いからでもあります。結果として、自己名義の楽曲もヒップホップっぽい曲が多くなるわけですね。最初に挙げた具体例の10人のうち、1-2 のパターンで本格的にデビューしている人は7人で、したがって下のようにジャンル分けできます。
3.混同しやすい概念
最後に、1-2 と 1-3 のパターンで表に出てくるプロデューサーたちは、DJ とちょっと混同しやすいと思います。DJ はダンス・ミュージックに大きな特徴があるので、この人どっち!?と思ったら一回聴いてみて、ダンス・ミュージックの要素が強かったら DJ でEDMアーティストである可能性が高いです。また、自分は歌わないということの関連でジャズ・ピアニストなどとも混同してしまう可能性もありますね。今後は、アーティストのジャンル分けにもう少し注意していきます。
本当に「だから何?」としかいえないようなパーソナルな記事でしたが、もし全部読んでくださった方がいらっしゃいましたら、感謝申し上げます。