リル・ウージー・ヴァ―ト "Just Wanna Rock"
リル・ウージー・ヴァ―トのシングル・ヒットは、約5年ぶり。
なんというか、秩序がめちゃくちゃな曲で、なのになぜか楽しい。
個人的にゲーム音楽が好きなのもあるけど、ゲームっぽいバック・ミュージックがけっこう楽しい。
彼、もはや歌唱すらまともにしてないんだよね、この曲。
年間チャート(イヤー・エンド・チャート)はオールジャンルのもの以外にもたくさんあって、
ロック、オルタナティブ・ミュージックの専門チャートであるこの「ロック / オルタナティヴ・ソングス・チャート」にもそれはあります。
今回は、昨年に引き続きそれをレビューしました。
(※ #1~10 と #11~20 は、別々の日に書きました...)
title | artist | genre | |
1 | Heat Waves | Glass Animals | Rock |
2 | abcdefu | Gayle | Pop |
3 | Enemy | Imagine Dragons × J.I.D. | Soundtrack |
4 | Running Up That Hill ( A Deal With God ) | Kate Bush | Rock |
5 | Sunroof | Nicky Youre, dazy | Pop |
6 | Bad Habit | Steve Lacy | R&B |
7 | Something In The Orange | Zach Bryan | Country |
8 | Happier Than Ever | Billie Eilish | Pop |
9 | Meet Me At Our Spot | The Anxiety | Rock |
10 | Son Of A Sinner | Jelly Roll | Country |
#1> 「ヒート・ウェーヴス」が堂々の1位!2021年9月に同チャート(週間チャート)で初めて1位をとって、そこから半年以上その座を維持していた覚えがあります。去年のこの年間チャートでは24K・ゴールデンの "Mood" に敗れ、すでにロングヒットしていたにもかかわらず2位に終わってしまっていました。2位をとった年の翌年に、巻き返して1位をとるということはほとんどありません。2年間もトップレベルの勢いを維持するのはほとんど不可能だからです。なので、同曲も去年の2位が最高位だろうと思っていて、私は残念がっていたのですが、...やってくれましたね。ヒップホップのビートも特徴的な、この弱気な「ヒート・ウェーヴス」がどんでん返しを起こしました。🌊
(※参考→去年のTop20)
#2> 2位はゲイルの "abcdefu"!この曲には何回も助けられましたね…むしゃくしゃした時によく聴いてました。ゲイルさんは曲の大ヒットからおよそ3か月ほどでデビューEP『ア・スタディ・オブ・ザ・ヒューマン・エクスペリエンス、ボリューム・ワン』を出していて、制作の速さにびっくりします。グラミー賞の主要部門にノミネートされたほか、テイラー・スウィフトのツアーの前座も決まったりで、今年イチのブレイク・アーティストかもしれません。🔤
#3> ここは予想通りでしたが、"Enemy" が3位に。このレベルの大ヒットは、イマジン・ドラゴンズにとっては約4年ぶりで、彼らの歌唱力・表現力の高さなどが改めて世間に知らしめられましたね。コラボ相手のJ.I.D.さんも("Enemy" 以外で)今年はチャートで名前を見る回数が多くて、デビューに成功していた印象です。そして "Enemy" がサントラとして起用されたアニメ『アーケイン』の、もととなったゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』からはリル・ナズ・Xの "Star Walkin'" もヒット中。彼は確か『リーグ・オブ・レジェンド』世界大会の、最高責任者たる代表者に任命されていました。
#4> 結局ほとんど聴かなかったけど...ここの週間チャートで複数週1位を記録していたケイト・ブッシュの「神秘の丘(ア・ディール・ウィズ・ゴッド)」が4位に食い込んでいます。過去曲のヒットでいえば、ニルヴァーナの「サムシング・イン・ザ・ウェイ」やメタリカの「メタル・マスター」も、一時的ではありましたがリバイバル・ヒットしました。前者は『バットマン』新作映画において、劇的なシーンで楽曲が使われたことで楽曲の注目度が一気に高騰したそうです。「神秘の丘」も「メタル・マスター」もほぼ同じような理由で再注目されたので、トレンドというものを感じましたね。🦇
#5> 明るさが尋常じゃないニッキー・ユーアのメジャー・デビュー曲、"Sunroof" が5位!ここの週間チャート首位は1年を通して「ヒート・ウェーヴス」、「神秘の丘」、「バッド・ハビット」がほとんど牛耳っていたので "Sunroof" は結局1位をとれませんでしたが、それでもすごくいい勢いでした。確かに軽い曲ではありますが、よく聴くとプレ / ポスト・コーラスの工夫(?)がすごく良くて、飽きられないように作られています。間奏も、最近のポップ・ソングではけっこう珍しいです。
#6> スティーヴ・レイシーね~...。「バッド・ハビット」は、流れるような音楽が最高で、また新しいジャンルが生まれたような気すらしてしまう名曲だと思うのですが、アウトロで壊れたようなオルタナ・ロックが入る部分がかなり好きです。アメリカの音楽番組『サタデー・ナイト・ライブ』でスティーヴさんがこの曲をパフォーマンスしているのを見ましたが、やっぱり最後の部分で彼は壊れて、クレイジーさ満載の挙動(パフォーマンス)でライブを終えていました。
#7> "Something In The Orange" で、カントリー・シンガーが初めてロック / オルタナティブ・ソングス・チャートに進出!!同曲はその意味で今後重要な曲になっていくかもしれません。ターニング・ポイント、みたいな。個人的にはまだピンとこない曲ですが、カントリーの主張が強いというふうでもなく、かといってロックの主張もそんなに強くない、少し不思議なヒット曲です。🌇
#8> ビリー・アイリッシュのセカンド・アルバム『ハピアー・ザン・エヴァー』(2021) から、タイトル曲がチャートでややロング・ヒットしました。去年のこの年間チャートでは11位で、これも最高位は11位で終わるかなと思っていましたが、「ヒート・ウェーヴス」同様順位は前年を超えてきました。う~ん、『ハピアー・ザン・エヴァー』は曲を全然知らないんだよな~...。先行シングルの "Therefore I Am" くらい...?よく聴いたのは。🏺
#9> おそらく、個人的に今年一番好きになった曲です。サビが一回しか歌われないとか、音が昔っぽいとか、ウィロー・スミスの声が分かりづらいとか、思ったことはいろいろありましたが、それらひっくるめて今は曲のすべてが好きです。チャート的にピークは去年でしたが、今年に入ってからも粘り強く上位を維持していて、去年のこの年間チャートでの20位から大幅上昇!もちろんこれからも聴き続けますが、本当に気持ちいい曲でした。🚩
#10> 10位はジェリー・ロールの "Son Of A Sinner"、ルーク・コムズを思わせる力強い歌唱によるバラードです。彼についてはまだ全然詳しくないのですが、アルバム『バラーズ・オブ・ザ・ブロークン』(2022) がチャートでそこそこ良い成績を残していたのは記憶に新しいです。ただ、2発目が出るかどうかはちょっと怪しい気もしますね。
title | artist | move | |
11 | Drunk ( And I Don't Wanna Go Home ) | Elle King, Miranda Lambert | Rock |
12 | Bones | Imagine Dragons | Rock |
13 | Beggin' | Maneskin | Rock |
14 | Until I Found You | Stephan Sanchez | Pop |
15 | I Love You So | The Walters | Rock |
16 | My Universe | Coldplay, BTS | Rock |
17 | Tek It ( I Watch The Moon ) | Cafune | Rock |
18 | Romantic Homicide | d4vd | Rap |
19 | Toxic | Boywithuke | Rock |
20 | World's Smallest Violin | AJR | Rock |
#11> "Drunk ( And I Don't Wanna Go Home )" がランクイン。去年の夏ごろからなので、思いの外長くチャートに残ってるな~と思っていたら、「残っている」ということではなく上昇中でした。去年のヒットの残り香かと思いきや、ひそかに去年のヒットを上回ろうと、さらに力をためていた感じです。全体的にメロディックで聴きやすく、ミランダさんもエル・キングのロック・スタイルに100%はまっていますね。🍷
#12> イマジン・ドラゴンズ "Bones"。彼らはサントラとして "Enemy" を大ヒットさせましたが、その "Enemy" のヒットから半年後に自分たちの(自分たちが完全に所有権を持する)新曲もしっかりヒットさせました。重苦しくて辛い『マーキュリー - アクト・1』(2021) の続編的な楽曲で、ところどころ痛々しい歌詞を意識してしまうのですが、それでもサビでは悠々と「俺の骨には魔法がかかっているから、俺は最強だ」と歌っているのが救いでした。デトックス、効いているといいけど...。🦴
#13> 2023年1月にニュー・アルバムをリリースすると予告している、マネスキンの "Beggin" が13位に。これは完全に去年の大ヒットの残り香ですが、マネスキンは今年も "Supermodel" をこのチャートでヒットさせていて、それもあってか来年のグラミー賞では最優秀新人賞にノミネートされましたね。個人的には「今!?」って感じでしたが、本人たちは喜びのコメントを出していて、やっぱりグラミーはすごい権威があるんだな...と思いました。🏆
#14> 何も知らない人が偶発的にこの曲を聴いたら、絶対最近の曲だとは思わないと思います。"Meet Me At Our Spot" に続いて、まさに昔っぽい "Until I Found You" がメインストリームでヒットしました。曲のリリースは去年です。こんな「20世紀のヒット曲特集」で流れそうな曲がよくヒットしたな、と思いましたが、もしかしたらシルク・ソニックの影響もあるかもしれません。ジャンル違いではありますが。
#15> "I Love You So"、これも最近の音楽といったふうではありませんが、同曲は2022年、希少だったメインストリームにおけるロック・ヒットのひとつです。ちょっと懐かしさを感じる音楽で、というのも曲のリリース自体はなんと8年前の2014年。長い間見つからなかった曲が、TikTok によって掘り起こされヒットしました。まさに癒しの音楽ですね。
#16> "Beggin'" 同様 "My Universe" もピークは去年でしたが、年間チャートの集計期間の都合上 "My Universe" は今年の方が成績が良くなっています。今さらですが、MVが良かったですね!バンドの4人が演奏している惑星と、BTS の7人がパフォーマンスしている惑星と、さまざまな宇宙人が住んでいる惑星の3つが非科学的に混ざり合う描写がかっこいいです。宇宙の支配者らしき生命体はコールドプレイと BTS のパフォーマンスを警戒していて、良い緊張感もありました。🌐
#17> メインストリームでのヒットとまでは行きませんでしたが、"Tek It ( I Watch The Moon )" はこのチャートで長く大活躍していたイメージのある一曲です。うまくいかなかった恋愛を終わらせ、次に進む決心はできているものの、節々で(特にクライマックス)それを嘆いたり後悔していることが伝わってくる、悲しい曲です。歌詞が先かメロディが先かは分かりませんが、音楽もそんな感情を忠実に再現しているようで、すごいです。🌓
#18> 唯一聴いていないので音楽レビュー的なことはなんにも言えませんが...ティーンエイジャーのラッパー、d4vd の1発目、"Romantic Homicide" が18位です。シングルのジャケットがけっこう怖いやつですね。17位までラッパーの曲がなくて、過去2年間の記録と比べればこれは珍しいことです。キッド・ラロイの "Without You" も去年の名残で上位に再びランクインするかなと考えてましたが、21位以下でした。まあ、そもそもラッパーが「ロック / オルタナティブ・ソングス・チャート」で活躍すること自体異例なわけですが。
#19> ボーイウィズユークも Top20 入った!!オールジャンルのチャート Hot 100 にチャートインしたのは "IDGAF with ブラックベアー" で、"Toxic" は結局それを達成できなかったのですが、"Tek It" と同じようにこのチャートで超ロング・ヒットして名前を残しました。イギリスではオールジャンルでもしっかりヒットしていましたね。ロボットのようなマスク、真っ黒なフード...高そうなので結局買っていませんが、彼のグッズが欲しくなった時期がありました。独特すぎる世界観に呑まれてしまって...。"Toxic" は中毒性抜群のサビはもちろん、個人的にはゆっくりと泥沼に沈みながら呻いているかのようなポスト・コーラスが狂おしいほど好きです。
#20> 意気揚々とした行進曲のはずなのに、実は自己嫌悪の嵐だったという悲劇!!だけどそんなギャップも面白い、AJR の『OK・オーケストラ』(2021) からの3発目 "World's Smallest Violin" が現在進行形でこのチャートを上昇中です。大バズりしたクライマックスは言うまでもなく、いろんな電子音をごちゃまぜにして作ったような美しい伴奏部分も最高ですね。自分は同アルバムから3発目がなかなか出なくてもどかしさを感じていたのですが、無事ものすごい3発目が出てきてくれてよかったです。MVは1億回超え!!🎻