リル・ディッキーはコメディアンだったのかー。
無名ラッパーなのにR&Bスターのクリス・ブラウンとコラボしてそれがヒットになるし、
ジャスティン・ビーバーやスヌープ・ドッグらスターと曲を共作するし...怪しいとは思っていたが。
つまり、別の業界ですでに有名になっていた人だった。
いや、にしても両方で成功したのはすごい!
全米シングル・チャートをもとに、シングル曲のチャートのランクアップ要因、ランクダウン要因をまとめてみました。
実際は列挙する10項目以外にもいくつか要因があると思いますが、一応10項目は代表例のつもりです。
なお、結論から言うとランクダウン要因というのはほとんどなく、挙げるのはほぼランクアップ要因の方になります。
消費者心理を考えれば当たり前のこともありますが、ちょっと分かりにくい要因もいくつか。
面倒なので目次はなしで...。 暇つぶしに読んでみて下さい。
1.ミュージック・ビデオの公開
多くの場合MVはシングルのリリースと同時に公開されたりするものですが、たまに少し遅れて公開されることもあります。最近聴く曲はシングルでリリースから時間がたっているにもかかわらず、MVが公開されていない曲が少なくないので、個人的な考えとしてシングルがヒットしたらMVを撮影するとか、そもそもMVは積極的に撮らないというアーティストがやや増えているのかもしれません。まあ、予算もかかりますしね。話を戻して、リリースから遅れてのミュージック・ビデオ公開は有名アーティストほどチャートの大きな上昇要因となり、具体例は数えきれません。また、すでにリリースしているアルバムの収録曲を新たにシングル・カットするとき、その曲のMVを公開したりしますが、それももちろんその新シングルのランクアップ要因になりますね。最後に、MVの話題性も上昇の幅を左右し、リル・ディッキーの "Freaky Friday feat. クリス・ブラウン"(2018) のようにMVの人気が曲のヒットを生むこともありますが、話題性というのは必ずしもいい話題とは限らず、あまりよくない話題でシングルが売れた例もあります。何とは言いませんが、それを知った時はショックで、売れた理由が嬉しくないこともあると学びました。
2.リミックス・バージョンのリリース
2022年現在、これが今最も重要なランクアップ要因!すでにリリースされていたオリジナル版に、新たにゲストを加えたりEDM系アーティストによるアレンジを加えたりしてその曲のリミックス版が新たに発売されます。チャートにおける上昇効果の出やすさや上昇幅は圧倒的に前者のパターンの方が強いですが、EDMアレンジによるランクアップも確認しているので無視できません。とはいえ、やはりゲスト追加効果は絶大。これも具体例はたくさんありますが、特にリミックス効果がすごかった2020年だとド―ジャ・キャットの "Say So"、ミーガン・ジー・スタリオンの "Savage"がオリジナル版に有名ゲストを加えたリミックス版リリースの効果で1位をとっています("Say So"→ニッキー・ミナージュ、"Savage"→ビヨンセ)。最近の似たような例だと、2022年はまだありませんが去年のザ・ウィークエンド "Save Your Tears" なんかそうでしたね。アリアナ・グランデを迎えたリミックス版リリースで、ピーク・アウトしたと思われた位置から一気に1位まで行きました。リミックス効果が激しかった2020年、もううんざりしてしまい、リミックスに頼るなよ!とか思っていた時期がありましたが、これからもチャートを揺さぶる因子であり続けると思うので、仲良くやっていきたいです。
3.収録アルバムのリリース
何回か説明した気がしますが、やっぱりこれはちょっと難しい要因だと思っています。アルバムから先行してリリースされていたシングル曲が、そのアルバムのリリース時(リリースが反映される集計週)にシングル・チャートを上昇することがよくあるのですが、これはストリーミングという消費方法によるものです。ストリーミングは YouTube や Spotify などのコンテンツで、曲をダウンロードしてから聴くのではなくダウンロードしながら聴くという消費方法ですね(同時にダウンロードした音楽データも一瞬で消去しているので、データは残らない)。このストリーミングによる消費も、曲/動画の再生回数をポイント化することで、チャートの集計に2014年から組み込まれています。それで、Spotify や Apple Music ではアルバムをストリーミング再生することができるのですが、これはアルバムの全収録曲を1曲ずつストリーミングして聴くという形になります。もちろん自動で全曲続けて再生でき、通信環境がよければ次の曲の読み込みも一瞬なので、CDやレコードを再生しているのと同じような感じで聴けますが、1曲ずつストリーミングというのが重要で、つまりアルバムを1回ストリーミング再生すると収録曲すべてが1回ストリーミングされたことになり、それらは再生回数がポイント化されてチャートの集計に入ります。すでにリリースされていたシングルを、収録アルバムリリース後も単体で聴き続ける人は多いと思いますが、アルバムが出たことでアルバムごとストリーミング再生する人も出てきて、それが加わってアルバムのリリース時には先行シングルの再生回数、つまりはチャート上のポイントが一気に伸びるわけです。長くなってすみません、でもおそらく2014年以降続いてきた上昇要因で、このトピックではかなり大事だと思ってます。
4.受賞効果
これはかなり分かりやすいのでは...?ある曲が音楽アワードを受賞したことでその曲への注目度が高まり、再生回数/売り上げ枚数が伸びてチャートを上昇するというのは想像に難くないと思います。最も効果が大きいのはやはりグラミー賞で、受賞した曲がまだチャートに残っていれば高確率でその曲はランクアップするでしょう(決定的な例が思いつかず申し訳ない...)。ただ、他にもMTVアワードやイギリスではBRITアワードが受賞効果を持ちますが、基本的に効果は短期的で、あまり大きくないことがほとんどです。そもそも音楽アワードの開催時とノミネートされているヒット曲のピーク時は被ることが少なく、つまりすでにピークを終えたヒット曲が多くノミネートされ、受賞したりしなかったり。なので、消費者心理的には「あの曲が受賞したのか、じゃあ久しぶりにまたちょっと聴いてみようかな」となり、過去のピークを超えるほどのランクアップにはならないのです。それと、賞のことなんてすぐに忘れる人も多いですよね、だから効果は短期的であることがほとんどです。まあ、受賞によって新人が注目を浴びた場合は長期的効果が期待できますが。
5.アワード / TVショーでのパフォーマンス効果
やっぱりまだまだテレビの効果はすごい。「アワード / TVショー」と書きましたが、アワードのパフォーマンスもTV中継されるからこそ国民の目に留まり、ランクアップ要因になります。先述のグラミー賞やMTVアワードはもちろん、米ビルボード・ミュージック・アワードなどもTV中継され、視聴率が高ければチャートへの影響も見られるでしょう。ただ、やっぱりグラミーとMTVのパフォーマンス効果はすごい。正直受賞効果より全然すごいと思っています。例えばカーディ・Bの "Up" (2021) はグラミーでのパフォーマンスが注目され、その効果でチャートの1位にたどり着きました。TV番組ではアメリカでは「サタデー・ナイト・ライヴ (SNL)」が一強。「Tonight Show with Jimmy Fallon」など人気音楽番組はけっこうありますが、ランクアップ要因としてチャートに影響を及ぼすのは主にSNLでのパフォーマンスです。受賞効果とは違い現在進行形でヒットしている曲がパフォーマンスされることもあるので、その時は特に効果が強い!音楽番組見てて「ヒット中!」って紹介されてる曲が流れたら、気になっちゃいますからね~。
うー...そんなつもりは無かったし、あまりやりたくはなかったんだけど、
思いのほか1個1個が長くなってしまったので前編・後編に分けることにします。
ASAPで後編終わらせられますように...。