現地時間で12月1日に全米チャートの年間チャートが発表されました。
ちょっとふしだらな感じになってしまうかもしれませんが(いつも?)、
上位の結果について、レビューもしくは振り返りをしていこうと思います。
~去年の記事の引用~
年間チャートは文字通りその年の週間チャートを総括するチャートで、どの曲がその年一番ヒットしたか、などを順位付けるものです。
詳しくは調べていませんが、各週間チャートの順位がポイントとなり、そのポイントの積み重ねで年間チャートの順位が決まります。
イメージとしては、1位=100ポイント、100位=1ポイント、みたいな感じですね。
つまり、より長く上位をキープした曲が年間チャートの上位を狙えます。
ただし、集計期間という制約があり、昨年の11月から今年の10月末までが今回の集計対象となります。
~レビュー~
タイトル | アーティスト | ジャンル | 年間Top10入り | |
1 | Heat Waves | Glass Animals | ロック | 初 |
2 | As It Was | Harry Styles | ポップ | 2回目 |
3 | Stay | The Kid Laroi, Justin Bieber | ヒップホップ | 初 |
4 | Easy On Me | Adele | ポップ | 3回目 |
5 | Shivers | Ed Sheeran | ポップ | 4回目 |
6 | First Class | Jack Harlow | ヒップホップ | 初 |
7 | Big Energy | Latto | ヒップホップ | 初 |
8 | Ghost | Justin Bieber | ポップ | 4回目 |
9 | Super Gremlin | Kodak Black | ヒップホップ | 初 |
10 | Cold Heart ( PNAU Remix ) | Elton John, Dua Lipa | ポップ | 6回目 |
(コメント)
#1> 驚愕 だけど超嬉しい 長寿だったとはいえ "Heat Waves" の週間チャートでの1位は5週で、ハリー・スタイルズの "As It Was" は15週だったので2位かな~と思っていましたが堂々の年間1位でした!!!長寿、というと同曲は全米チャート100位以内にチャートインした週が合計91週(1年半以上!)で、ザ・ウィークエンド "Blinding Lights" の90週という怪物記録を抜いて歴代1位のロングヒット曲になったことが記憶に新しいです。確かに "As It Was" もすごかったけど、こっちはロングヒットの新たな怪物記録保持者でした。それで、グラス・アニマルズが1位ということは、つまり、ロックが年間1位です!!!やったー!!!🥂 ストリーミングの新時代に唯一取り残されたジャンルといわれているロックが、皮肉にも年間1位!✊ すごいことになりましたね。年間チャートでロックが1位を獲得するのは、21世紀では3回目で、1回目が2001年のライフハウス「ハンギング・バイ・ア・モーメント」、2回目が2002年のニッケルバック「ハウ・ユー・リマインド・ミー」なので、ロックの1位は実に20年振りの快挙になります。しかも、ライフハウスはアメリカ、ニッケルバックはカナダのロックバンドなのでグラス・アニマルズはイギリス出身のロックバンドとして21世紀初の年間1位を達成したことになります。上表でTop10のジャンル内訳を見ても、唯一マイノリティのジャンルになっているロックが1位をとったのは、かっこいい!最高の1位でした!👍👍👍
#2> グラス・アニマルズには敗れましたが、"As It Was" も週間チャートで1位を計15週獲得するロングヒットを記録していて、これは非コラボ曲(ゲスト・アーティストのいない曲)としては最長の1位となっています。年間1位は非常に惜しかったですが、2位に終わった原因には "Heat Waves" が強すぎたということと、"As It Was" は初チャートインが4月で集計期間の開始時点からチャートインしていた "Heat Waves" に対して不利だったということが挙げられるでしょう。いや~、でもどちらも好きな曲なので、ワンツーフィニッシュは嬉しいです!ちなみにハリー・スタイルズは2020年にも「アドア・ユー」が年間Top10入りしていて、それは6位だったので今回で完全にランクアップですね。
#3> "Stay" も長かったな~...。去年の年間チャートですでに12位を記録していて、週間チャートの記録から判断しても同曲のピークは明らかに去年なのですが、今年に入ってからもかなり長く上位を維持していて、とにかく超粘り強かった印象。なので3位は想定内でしたが、上位2曲ともいい勝負だったと思います。同曲、最初は「キッド・ラロイ、かなりポップにいったな~」と思いましたが、リスナーにうまくはまったどころか後に「定番」とも言われ得る大ヒットになってしまいましたね。
#4> これは、正直まったく予想していませんでした。この "Easy On Me" は全米チャートで合計10週の1位を獲得していて、それだけ聞いたら年間でもTop10どころか1位候補なのでは?と思うかもしれませんが、自分はTop10に入ることすらないと思っていました。というのも、同曲は全米チャート100位以内にランクインした週が合計でたった31週で、集計期間内に31週以上チャートインした大ヒット曲なんてたくさんあるし、1位獲得週が多かったというだけでTop10に入れるほど、年間チャートは甘くないだろうと思っていたからです。現に去年同じく10週の1位を獲得したBTSの "Butter" は去年の年間チャートで11位で、Top10入りを逃しています。なのに、Top10入りを達成できたどころか、4位までいくとは ❕❕ もちろん曲が嫌いというわけではなく、むしろ好きなので「よかった~」となるはずなのですが、驚きが勝ってしまいました。アデルはアルバムの方の年間チャート2022でも『30』が2位になっていて、こっちも同じような理由で驚きましたね~。
#5> エド・シーランは "Bad Habits" と "Shivers" が年間Top10入り候補として考えられていて、自分は両方入るにしろどっちかしか入らないにしろ "Bad Habits" が "Shivers" を上回るだろうと踏んでいたのですが、実際は真逆でした。う~ん、確かに "Bad Habits" も "Stay" 同様ピークは明らかに去年で、今年のチャート・アクションは去年の残り香的な感じだったんだけど、ブリング・ミー・ザ・ホライズンとのハードロック・コラボ・バージョンがリリースされたりしてちょっと再燃してた感じもあったから、年間Top10入り、あるかなって思ったんだけど...。結局13位、それでも好記録なんですけどね。一方 "Shivers" はピークが今年初頭で、ピーク・アウト後も長々とチャート上位に滞在していたので年間Top10入りは妥当。...ですが、これも予想以上の順位でした。上位4曲は週間チャートで1位を複数週(上から順に5週、15週、7週、10週)記録しているモンスター・ヒットでしたが、同曲は1位をとっていないばかりか最高でも4位です。こう書くと1~4位と5位で大きく差が開いているように聞こえるかもしれませんが、週間で3位以上を記録した大ヒット曲は上の4曲以外にもたくさんあり、同曲はそれらに打ち勝ったということになるので、これはすごいことでしょう。🦋
タイトル | アーティスト | ジャンル | 年間Top10入り | |
1 | Heat Waves | Glass Animals | ロック | 初 |
2 | As It Was | Harry Styles | ポップ | 2回目 |
3 | Stay | The Kid Laroi, Justin Bieber | ヒップホップ | 初 |
4 | Easy On Me | Adele | ポップ | 3回目 |
5 | Shivers | Ed Sheeran | ポップ | 4回目 |
6 | First Class | Jack Harlow | ヒップホップ | 初 |
7 | Big Energy | Latto | ヒップホップ | 初 |
8 | Ghost | Justin Bieber | ポップ | 4回目 |
9 | Super Gremlin | Kodak Black | ヒップホップ | 初 |
10 | Cold Heart ( PNAU Remix ) | Elton John, Dua Lipa | ポップ | 6回目 |
#6> 4~5位を予想していたので予想以下になってしまいましたが、それでも年間Top10入りは快挙!!ジャックさんは2020年のメジャー・デビュー・ヒット "Whats Poppin" がその年の年間で13位で、Top10入りを達成できていなかったので今回でTop10入りは初です。失礼ながら、彼は1発屋だと思っていました。ゲスト参加したリル・ナズ・Xの "Industry Baby" がメジャー・デビューの翌年に大ヒットしましたが、彼はあくまでゲストで、彼がその年にリリースしていた音楽は他方で全然ヒットしていませんでした。しかし、今年に入ってその不穏な流れを一気に変えたのが、やはりこの "First Class" なわけで、この斬新さ満載の新曲には自分もやられましたね。最新アルバムから次なるヒットも期待してしまっています、すみませんでした。
#7> 週間チャートで最高3位、マライア・キャリーとDJキャレドとの豪華同時コラボもニュースになったラトーの "Big Energy" が年間Top10入り!どこのパートをとっても、まさに完璧って感じの曲ですね!ラトーは2020年に Mulatto 名義ですでにメジャー・デビューを果たしていた女性ラッパーですが、当時のデビューがチャート的に少し地味だったのと、今年のヒットが大きかったのとで今年出てきた新人みたいに扱われがちです。まあ、名義を改めたのは latto を「新しい自分」としてそれまでの Mulatto とは違う自分を世にアピールしたかったからかもしれなくて、もしそうだとしたら新人と称されるのはむしろ光栄になるのかもしれませんけどね。...そういえば、グラミーではすごい喜んでた!😲
#8> なるほど、"Ghost" もなかなかのロングヒットで、上昇期とピーク期と下降期が同じくらいの長さだった気がします。上昇にも時間がかかったけど、下降にも時間がかかった。つまり、粘り強かったということですね。自分は、"Ghost" は最初は「なんでこんなに短いの~!?」と曲の短尺さに不満を持っていましたが、だんだん "Ghost" という曲における展開の速さや各パートの短さの重要性が分かってきて、この曲はこの長さがぴったりなんだ!と腑に落ちたような気持ちになっていったのですが、歌詞の意味をよく知って、さらに悲しいMVも見て結局再び曲の短さを憂う状態になっています。ロング・バージョンとかないのかな?疾走感を抜いてオーケストラで感動的に仕上げたりするのもいいと思うんだけど。
#9> 思いの外下だった...。でも、とりあえず無事年間Top10に入れてよかった。今年大ヒットしたラップ・ソングの中で個人的には1番か2番に好きな曲で、集計期間中チャートで大活躍だったのでTop10入りは妥当だし嬉しいです。2つ前の記事でコダック・ブラックについて長々と書いていましたが、"Super Gremlin" はとにかく良かった!冒頭から緊張感を高めてきて、バースに入ってコダック・ブラックのラップが緊張感をさらに高めたところでさらっとサビに入るところがすごく好きです。緊張感を高めた状態でサビに入る際、さらに迫力を増したサビを用意することで緊張感を保つのではなく、あえて落ち着いた歌唱部分をサビにして緊張感を保つ、というのが(うまく説明できていませんが)すごかったです。ドレイクもこの曲がリリースされたとき、ベタ褒めしていたそうですね。💛
#10> エド・シーランの "Shivers" 同様、エルトン・ジョンの "Cold Heart ( PNAU Remix )" も週間チャート最高位は7位と比較的低めで、それより上の順位を記録した大ヒット曲がたくさんあるなかでそれらを出し抜いた年間Top10入りになります。調べたらエルトンさんの年間Top10入りは今回で6回目で、20世紀に5曲がTop10入りしていました。1997年の「サムシング・アバウト・ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト / キャンドル・イン・ザ・ウインド1997」は年間1位を獲得しています。それに比べると今回のヒットはランクダウンではありますが、年間Top10入りを25年振りに果たしたこと自体信じがたい快挙だといえるでしょう。長きにわたって愛される、スーパースター中のスーパースターしか成しえません。...と偉そうなことを言いましたが、デュア・リパもすごい輝いてる "Cold Heart" も大好きなので、名誉ある年間Top10入りは最高です!
以下、概観...。
「Top10全体」> ジャンルの色どりは今年も3色でしたが...やっぱりロックが1位をとったのはかっこいい!そしてよく見たら今年は1~5位がみんな非アメリカン・アーティストですね!Top10に英国出身が5組もいる一方、米国出身は3組のみ!11位以下は米国出身がたくさんですが、上位の上位は、主にUK勢に持っていかれたような結果です。アーティストの形態に関しては、今年も「デュオ/グループ」枠をグラス・アニマルズが守ってくれて安心。自分は形態に関しても多様性を好むので、今年もソロ・アーティストの独占にはならなくて良かったです。あとは単純に、好きな曲が多くて嬉しかった!
「Top50」> 自分は年間チャートを「Top10(殿堂入り)」、「Top50(最上級)」、「100位以内(上級)」みたいなイメージでカテゴライズしていて、そのためレビューもこのように分けることにします。さて、Top10含めTop50を概観して思ったのは...これは後の分析系記事でも言及しようかなと思っているのですが、カントリー勢が異常に強い!...ということ。カントリーの年間Top50入りは、以前はこんな感じでした。↓
カントリー・ソングの年間チャートTop50入り曲数 | |
2016 | 1 |
2017 | 1 |
2018 | 1 |
2019 | 2 |
2020 | 4 |
2021 | 3 |
2022年、今年のこれは「8」で、倍増です。カントリーは年間チャート上位で弱いから、上位に入った数少ないカントリー・ソングはかえってすごく目立って一際輝く感じ(※主観)でしたが、その恒例が崩れています。確かに今年はいろんなカントリー・シンガーが大活躍していましたが、年間チャートでこうも強く出るとは思いませんでした。驚くとともにちょっと寂しくもなりましたね。毎回上記の恒例で、どの曲がやや独占的に輝くことになるのかを楽しみにしていたところがあったので。
「100位以内」> 「大ヒット」という言葉の一つの参考にもしている、年間チャートへのランクイン!あまりにも一時的かつ時期が限定的で、とても年間を通じて人気だったとはいえないようなクリスマス・ソングのランクインがさらに増えたのは残念でしたが、それ以外は入っていることを期待した推し曲がみんな無事に入っていたりしてて良かったです。ドージャ・キャットがアルバム『プラネット・ハー』(2021) からシングル5曲すべてをランクインさせたうえ、直近のヒットであるサントラの "Vegas" もTop50に滑り込ませたのは見事でしたし、バッド・バニーがそれを上回って『Un Verano Sin Ti』(2022) で収録曲7曲をランクインさせたのも見ものでした。バッド・バニーは余裕でアルバムの方の今年の年間チャートを制していましたね、ラテン・アルバムとして史上初の出来事です!
最後に、去年も同じようなコメントを書きましたが、「週間チャートでの最高順位が極端に低いのに、下位で長々とヒットしたことで年間チャート入りを達成した曲」、これを奇跡の曲と呼びましょう。去年はキース・アーバンの "One Too Many with P!NK" が最高位52位にして年間チャートに入ったので「うおお!」...と驚きましたが、今年はそれをさらに上回るつわものがいました。聴いたことなかったのですが、これまたカントリー・シンガー ERNEST さんのメジャー・デビュー・シングル "Flower Shops feat. モーガン・ウォーレン" です。週間チャートの最高位は64位(!)にして年間チャートでは96位に入っていますね。今年は他にもマレン・モリスの "Circles Around This Town" がキースさんと同じで最高位52位にして年間100位にギリギリ入ったのですが、もはや驚くところではなく...。だから、奇跡の曲、と呼ぶことにしました。✨