Excel を使えば最強!と思っていたが、
思いの外編集が面倒でやりたいようにやれなかった。
まあ、それでも分かりやすいものが作れたからよかったんだけど。
イヤー・エンド・チャート発表から1週間。
「ジャンル」に焦点を当てて解析してみた。
(記事の原稿...!矢印は2020年に書いた...)
まず、今年の100曲のジャンル比率です。
複雑化回避のためチャート上で影響力の強い6つのジャンルのみ対象にしています。
(数字を忘れていた)Pop : 21, Rock : 3, Country : 18, R&B : 12, EDM : 1, Rap : 35
これら6つのジャンルが全体に占める割合は合わせて90%(曲数がそのまま割合になる)。9割は維持しましたが、かなり「6ジャンル」以外が台頭してきたといえます。具体的にはラテンが3%、 K-Pop が2%、ホリデーが2%、アフロビートが1%、その他(ジャンル特定が困難)が2%でした。過去の年間チャートでの影響力をもとに選んだ6つのジャンルですが、それ以外が無視できない存在になってきていて、この6つを保つことの意味合いがどんどん薄まってきている気がします。ちなみに、直近5年間の同比率は
2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
96% | 93% | 96% | 97% | 90% |
この1年でガクンと落ちましたね。
円グラフを一見して分かるのは「ラップ」が多いということですが、実はここ数年ではかなり少ない方。後にも触れますが35曲(%)は去年までの水準から急落です。その他、EDMやロックが少ないなど言えることはありますが、解析は時系列で見た方がやりやすいでしょう。
本当はジャンルごとに1つ1つ作りたかったのですが、思い通りに行かなくて諦めました。以下、それぞれ簡単に分析します。
<ポップ>
去年までの結果なら流れは横ばいとまとめられましたが、今年は去年からー2で2年連続減少です。横ばいではなく、下降傾向にあるといえるでしょう。今年はポップ勢が弱いというのは実感していたので、そんなに驚きはしませんでしたが、ラップが振興する前はポップが比率1位だったのだろうと考えると、より長期的にも右下がりなグラフが想像できます。去年はポップ・スターのニュー・リリースが多かったのにも関わらず、年間チャートに入るほどのヒットは少なかった年でした。今年は反動で比較的ポップ・スターのニュー・リリースが少なかったので、今年の数字に変な感じはありません。つまり、問題は去年で、去年の減少がポップ・シーンの盛り上がりの限界を示していると思います。 …去年の話になってる!?
<ロック>
名実ともにロックが復活!!5年を通して見ると停滞と言わざるを得ませんが、今年の復活がこれからのグラフを右上がりにするきっかけであってほしいです。ロックに関してネガティブなことはあまり言いたくありませんが、事実として各年のアーティスト数を調べるとこのようになります。
2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | |
アーティスト数 | 3 | 2 | 1 | 0 | 3 |
曲数 | 4 | 5 | 2 | 0 | 3 |
メインストリームで売れている人は一握りだということがよく分かりますね。特に2018年、ここ5年間では最多の5曲が年間チャートにランクインしましたが、そのうち4曲がイマジン・ドラゴンズという占有っぷりです。なお、2016年に遡ると曲数は7曲に増えますが、この時はトゥエンティ・ワン・パイロッツがロック界を占有していたのでアーティストは4組とそんなに増えません…。ただ、もっと多くのロッカーが売れてほしいと思う中、今年はかなり多くのロック・ミュージシャンがブレイクできたので嬉しかったです。
<カントリー>
少し前までマイノリティだったのに、ここ数年で急上昇!比率2位のポップにもう少しで追いつきそうです。カントリーの年間チャートランクインは、同じアーティストによる複数曲ランクインが少ないので、最も素直にジャンルとしての振興を示してくれます。上昇の理由にはシングルのストリーミングが増えたことが挙げられ、特に去年は外出の規制があったため、よりレコード店での購入より自宅でのストリーミング消費が多くなったと考えられます。ただし、あくまでシングル単体で、という話でアルバムではやはりまだカントリーのストリーミングは弱いです。その証拠に年間チャートのアルバム部門では、新しいカントリー・アルバムのエントリー数がそんなに増えていませんでした。
<R&B>
これは横ばい状態だといえるでしょう。今年は2曲増えましたが、全体としてはあまり変化がありません。思ったのは、R&Bはずっとこんな感じが続いているのでは?ということです。グラフで急に数字が伸びても、それはごく少数のアーティストが複数曲ランクインさせているからで、その人たちの影響を除くとより長期的にもグラフは横棒に近いものになるのではないでしょうか。R&Bはカントリーとは逆で売れる人は限られるものの、売れた人は一気にたくさんヒットを出すような構造が思い浮かびます。大ブレイクした少数の天才は短期的にも長期的にも人気を博しますが、ほどほどに売れたアーティストたちは微妙な位置をキープできずすぐにチャートから姿を消す、という2極化の構造ですね。
<EDM>
去年に続き今年もギリ1曲ランクインしました。ちなみに去年はサーフ・メサの ily ( i love you baby ) feat. エミリー で、今年はマシュメロの Leave Before You Love Me × ジョナス・ブラザーズ です。そもそも週間チャートでのヒット曲数が少ないので、年間チャートで少数派になることになんら違和感はありません。ゼッドやザ・チェインスモーカーズを筆頭に2010年代中盤に大きなEDMブームが起きましたが、それもかなり落ち着いてきました。EDMについてはグラミー賞の選考で分かったことですが、メインストリームで売れているEDMはポップに融合したものが多く、10年代のEDMブームは学問的で純粋なダンス・ミュージックが中心ではなかった、ということらしいです。アカデミックな評価の高いスクリレックスがそのブームにいなかったのもそういうことでしょう。…あ、また脱線してた。
<ラップ>
去年までの高い水準から一気に減少!ラップは5年全体の流れとしては上昇傾向にあるといえますが、それでも今年の急落は目を引きます。では何が代わりに上昇したのかというと、例えば去年から R&B が+2、ラテンが+3、K-Pop が+1などで、はっきり「これがラップ勢を抑えて上昇した」といえるものがありません。ちょっともやもやしますが、つまりラップの急な減少は自然減に近いということです。ただ、現2位との差からも比率1位はまだ維持できるでしょう。
<その他>
時系列で見てコメントできるのはラテン・ミュージック。ロックと同じような折れ線グラフが作れます。2017年にルイス・フォンシ & ダディー・ヤンキーの Despacito ( Remix ) feat. ジャスティン・ビーバー が大ヒットして以降、ラテンは英語圏でもかなり盛り上がってきました。ラテンの動向に関してはまだまだ未知数で、これからどのようにチャートの数字を推移していくか検討がつきません。ラテン・シンガー、ファルコの今年のヒット Pepas はラテンとEDMの大胆な融合。最近のラテンは変幻自在で他にもポップスやヒップホップによくクロスオーバーしているので、ジャンルとして時代遅れにはならないでしょう。今後も Pepas のような大胆な融合が出てくれると面白いので、楽しみです。