マスクメーカーが相次ぎ生産を縮小し、新型インフルエンザ特需に一服感が広がっている。大手の白元(東京都台東区)が2月から生産をストップし、ユニ・チャームも今年に入り協力工場への委託生産量を昨秋のピーク時に比べ1割以上減らした。
マスクは新型インフルの感染が拡大した昨春以降、店頭で品薄が続いていたが、各社の増産や新規参入も相次ぎ、メーカー在庫が一転して膨らんだためだ。ここにきて家庭内在庫や企業の備蓄が進んだこともある。
足元の新型インフルも落ち着き、今年は花粉の飛散量が少ないとの予測で、花粉対策の需要も見込めず、メーカー在庫の解消は秋ごろまで長引きそうだ。
白元は、昨秋に中国・深センの工場を増強し、生産能力を春先に比べ3倍に拡大し、需要増に対応していた。しかし、その後販売が落ち込み、今年に入り生産量を増強前と同じ水準に戻したが、在庫増加に歯止めがかからず、2月からは生産休止を余儀なくされた。余剰人員は、需要が堅調な携帯用カイロなどの生産に振り向け、業績への影響を最小限におさえる。
ユニ・チャームも岡山市の工場に委託しているマスクの生産量を1月以降、昨秋に比べ1~2割減らした。昨秋に委託生産量をそれ以前の3倍に増やしたことが在庫積み増し要因になった。日本バイリーンも年明けから東京工場(茨城県古河市)の生産を縮小。昨秋の休日返上、3交代・24時間フル操業から、平日のみ・交代なしの態勢に変更し、生産量はピーク時の3分の1程度に減ったもようだ。
全国マスク工業会によると、昨年10~12月は前年同期に比べ3.8倍の約15億4500万枚が生産された結果、12月には、大幅な供給過剰に陥り、年末の在庫は同8.57倍の約6億8000万枚にまで膨らんだ。
今年の花粉飛散量は全国的にやや少なめで、花粉対策の販売増もあまり期待できない。
在庫が予想以上に膨らんだ背景には、大手ドラッグストアなどがプライベートブランド(PB、自主企画)商品の店頭在庫を抱えていることもある。このため、「国内メーカーの商品販売が後回しにされる」(マスクメーカー)との警戒感も広がる。マスク工業会は「過剰在庫の解消は来シーズンに向けた生産が本格化する秋以降になる」とみており、在庫解消は長期化しそうだ