Loomings

映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

『センゴク天正記 6』

2009-08-18 22:16:56 | 歴史雑談・感想
センゴク天正記 6 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る



宮下英樹・作『センゴク』シリーズ最新刊『センゴク天正記6』。実は8月6日の発売日に購入しておりました。
表紙は「ゲバラ」な雑賀の孫市。土橋若太夫はボブ・マーリーだし、どうやら雑賀衆はカリブ海が縄張りらしいです

そして、越後はロシアです(笑)。上杉謙信公からしてプーチンです。このところ各メディアで主流の女性的または中性的な謙信像とはかなり違いますが、はっきり言って奇人変人です。「不識庵」を通り越して「不思議庵」です。家臣団も信長様も困惑し、何より「越賀一和」を成立させた一方の当事者である本願寺までもがびっくり!という有様。こんな人を向こうに回す羽目になった織田家は災難です。
そして上杉家の皆さんのキャラクターデザイン……景虎はどこかで見たことがある気がするけど、モデルは誰なんだろう?更にエリツィンはいるしラスプーチンもいるし、ロシア人じゃないけどマルクスまでいるぞ!いくら北国だからって、これでいいのか上杉家!?
そう言えば武田家は「アメリカ」でしたね……

それはともかく6巻では、越前一向門徒殲滅に始まり、天王寺砦の合戦、木津川海戦と、いわゆる手取川の合戦へと到る第二次信長包囲網の中での織田家の苦闘ぶりが描かれます。
ドラマや他の作品では、「向かうところ敵なし」みたいに描かれることが多い信長様ですが、このシリーズでは「向かうところ敵だらけ」。大納言、右近衛大将に任じられ、安土城建設も始まって、名実ともに天下人となっても、苦しい状況であることに変わりはありません。

その一方で、(一応)主人公である権兵衛がようやく婚儀を終え、長男も生まれるなど、明るい話題もあります。宮下さん描く幼児幼女って、顔は全然可愛くないのに、行動や仕草はいつもすごく可愛いですね。そのギャップが不思議です。
羽柴家も新たに多くの家臣団を抱えて、いよいよ栄えつつありますが、その中にピーター・カッシングさんがいることに驚きました
また、どうやら石田佐吉(三成)らしき茶坊主もちらっと登場しています。

さて、天王寺砦の戦いと言うと、本願寺軍に包囲され孤立していた明智光秀が本陣に後詰め(援軍)を求めたところ、信長公その人が浴衣がけに供回り百騎のみで出陣、救援に駆けつけたというエピソードでも知られています。
結果として織田軍は大勝。一般的には信長率いる織田軍の機動性が評価される戦いですが、この作品では本願寺側と痛み分けのような描かれ方です。
と言うより、信長が孫市の放った銃弾により負傷したことで不敗神話に翳りが生じ、それを抑えるため参謀役の光秀が孫市の偽首を晒して優勢をアピール──と、情報戦としての側面が強調されています。
この上様の負傷について、当初は堀久太郎たち近習以外では光秀しか知らず、彼の判断で諸将にも伏せていたり、でも秀吉にだけはちらっと手の内を明かしたりする辺り、不謹慎かも知れないけど萌えです。もちろん、この時点での光秀が実質的な織田軍副将の立場だったことを示す意味もあると思いますが。
そして、その負傷で寝込んでいるところに、上杉方が越中加賀一向宗と手を組んだ(これが越賀一和)などという報せまではいって、それを伝えに来た光秀に(だけ)ついポロッと弱音を洩らしてしまう信長公。あくまでも腹心の部下としての姿勢は崩さないけれど、何やら物思う風情の光秀……いろいろ想像を巡らせたくなるシーンでした。

作中では描かれていないけれど、この後、光秀の方も病に倒れ、一時は生死の境をさまようほどの重態に陥るんですよ。やはり、いろいろ心労が多かったんでしょうか。それでなくとも丹波攻略を抱えている上、休むことなく転戦につぐ転戦という状況だったし。

で、建設中の安土城前での上様大演説。「未だ下剋上であるっ」ということで、「将士土豪はこの信長の座をも狙うが良いっ」なんておっしゃってますが、それが光秀のコマにかぶるというのは、ちょっとあからさま過ぎる気もするけれど、やはり「伏線」?柴田、丹羽、滝川、佐久間そして秀吉という諸将が冷や汗タラー…の中、光秀ひとり顔色も変えていないし。
シリーズ中、言葉としてたびたび出て来る信長の「狂気」。光秀はその「狂気」にとことんつきあう覚悟のある人として描かれて来ましたが、この先それに変化はあるのでしょうか?

自分が思うに、『センゴク』の光秀は信長という優れた素材を用いた「作品」をプロデュースしてみたかったのかも知れません。或いは「信長」という作品を。
戦国乱世を制する完璧な絵図を描き出そうとして、でも信長がその構想にそぐわなくなったとき、彼はどうするのか?逆に信長自身の構想から光秀が逸脱したら?

というわけで、本能寺へ到るまでは、やはり気になって気になって眠れそうにありません。

センゴク天正記 1 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る


センゴク天正記 2 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る


センゴク天正記 3 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る


センゴク天正記 4 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る


センゴク天正記 5 (ヤングマガジンコミックス)
宮下 英樹
講談社

このアイテムの詳細を見る


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ウルヴァリン』ジャパンプ... | トップ | 『ウルヴァリン』またも試写... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

歴史雑談・感想」カテゴリの最新記事