戦國ストレイズ 5 (ガンガンコミックスJOKER)七海 慎吾スクウェア・エニックスこのアイテムの詳細を見る |
戦国月間(笑)続行中。今回は11月21日「戦国デイ」(?)に第5巻が発売された『戦國ストレイズ』(七海慎吾)の感想を。
この作品に対して、自分は当初あまり良くない先入観を抱いておりました。
「女子高生が戦国時代へタイムスリップ、信長様と共に戦う」という設定には「えー……?」だったし、加えて4巻の帯のキャッチコピーが
「いま最も歴女のアツイ支持を受ける」←この後「!」が10個以上
でしたからね。
が、あるとき家族が買って来たのをきっかけに、4巻までまとめて読んでみたら、ちゃんと面白いではありませんか!
思ったよりずっとマトモな「戦国」マンガですよ──てのも失礼な言い方ですね。
とにかく、時代設定としては天文21年頃、信長が家督相続して間もない頃の織田家の状況や、当時の家臣団など、かなり正しく描かれています。
柴田勝家や林秀貞が当時は反信長派だったこと、森可成や河尻秀隆の活躍、また服部小平太や毛利新助の顔見せなど、織田家好きを「くすぐる」ものもあります。
ただ、当時まだ存命だったはずの平手政秀が全く出て来ないことが気がかりです。
織田家以外でも、斎藤義龍の家臣として、後に明智光秀の腹心となる斎藤利三が4巻に登場したのにはびっくりしました。ちなみに光秀自身は未だ登場していません。
そういうマニアックなネタが扱われる一方、いきなりそんな時代に飛ばされてしまったヒロインのかさねちゃんは、元気で前向きないい子で、思わず応援したくなります。
丹羽五郎左、佐々内蔵助、前田犬千代の「三馬鹿」も可愛いし、信長にとって「妻」と言うより「盟友」である濃姫の位置もいいし、殿は殿だし(笑)、読んで気持ちいいマンガです。
それにしても、時代的にはどのへんまでやるんでしょう?桶狭間は8年も先だし、稲生の戦いも4年は先です。そのあたりまで話が続くとすると、素直で優しくて兄上大好きな勘十郎さんの行く末を思って悲しくなりますが、そんな先走った話はともかく、そうこうしているうちに、かさねちゃん「女子高生」じゃなくなっちゃいますよね。
もしかして「ナルニア」方式で、その時代で何年経っても、元の世界では歳もとらず、ほぼ同じ時点に戻るのかな?とも思ったけれど、5巻には
「どーもこっちに来てから髪が伸びないんですよねー」
などというセリフもあるし、本当に歳とらないままなのかも知れませんね。
そして、あの時代でかさねちゃんは「誰」に当たるのでしょう?
信長様の側室、或いはその子供たちの母ということになる……というのも、どうも考えにくいですね。一説では(史実ネタバレにつき伏せ→)勘十郎信行(信勝)正室から、その死後は池田勝三郎恒興の妻となる女性に当たるのでは?とも言われていますが、そんな生々しい話はますます彼女のキャラクターに相応しくないように思います。
もしかして、藤吉郎さんと「秀吉」の立場を分け合うのでは?とも思いましたが、5巻を読んだ後では、むしろ信長様自身の一部を担って行くのか、という気もしてきました。
まあ、そんな考察(?)はともかく、5巻のメインは三馬鹿のご家族紹介(前田家には慶次郎がいます!)に津島の祭り、そして何と言っても信長様の○○です!
発売中の『ガンガンJOKER』12月号の付録は、その殿の艶姿を描いた5巻カバーの別バージョンですよ。そのためにだけでも12月号を買う価値あり、かも。
もちろんそれだけではなく、祭りによって民の間に鬱積する不満を発散させて人心を宥め、また雇用の創出や、外部の人が集まることで流通が生まれるなど、経済効果も期待できるという点まで、ちゃんと押さえているのが素晴らしいです。
そして、先ほど触れた12月号では、11月号に登場した「謎の少年」が竹中半兵衛さんであることが判明。信長は斎藤道三との会見に臨むべく、家中を率いていよいよ美濃へと向かう──と、物語が動き始めました。
というわけで、「戦国」マンガとしても、その時代を背景とした青春群像劇としても、今後ますます楽しみな作品です。あまり変な売り方はしないで、長く続けてほしいですね。