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ドラマ『関ヶ原』

2009-11-16 22:14:54 | 歴史雑談・感想

関ヶ原 [DVD]

キングレコード

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最近思うところあって、1981年に放映されたTBSの大型時代劇『関ヶ原』のDVDを見直していました。
その折りも折り、森繁久彌さんの訃報が伝えられました。96歳という年齢を考えれば大往生と言っていいと思いますが、映像の中でお元気な姿を拝見したばかりだったので驚いています。

作品について TBSオンデマンドの解説を引用すると──

『東西合わせて20万の大軍が激突した史上最大の戦闘「関ヶ原」を役者延べ120人、エキストラ延べ3500人、馬約500頭の大ロケで再現!空前の大スペクタクルドラマ。それまでは良く描かれなかった石田三成を司馬遼太郎の原作に沿い「忠義に厚い武将」として主人公にし、対する徳川家康も三成の義に敬意を払うという、人情面でも深みのある作品!』

30年近く前のドラマだから、森繁さんだけなく既に亡くなった出演者も多いけれど、当時の映画演劇界の重鎮、また「ドラマのTBS」全盛期を担う俳優女優を揃えた空前絶後の超豪華配役でした。当時は斜陽気味だった映画界でも実現し得なかった顔ぶれで、大河ドラマでもこれに匹敵するのは『新平家物語』くらいだったと思います。
エンドクレジットが東軍、西軍、女性たち、そしてそれ以外に分けて表記されていたのは、そういう大物たちの顔を立てる配慮でもあったのでしょうが、その画面を眺めるだけで胸躍るものがあります。

その中で森繁さんが演じていたのは徳川家康。自分にとって家康と言えば、この『関ヶ原』のモリシゲ家康なのです。
「狸親爺」っぽい老獪さや野心と共に、軽妙でユーモラスな部分や家臣への想い、そして三成と敵対し、その純粋さに付け入りながらも、どこかでそれを惜しみ、いとおしむ気持ちまでもが見事に表現されて、後にも先にもこれ以上の家康はいないと思います。すべてが終わった後、三成と亡き太閤を思って流す涙には胸打たれました。三國連太郎さん演じる本多正信とのコンビも良かったですね。
こんなブログの片隅からではありますが、ご冥福をお祈りします。

対する主人公の石田三成役は加藤剛さん。純粋さや潔癖さ、そしてキラキラ感(?)は司馬遼太郎原作の五割増くらいになっていたと思います。
丹波哲郎さん演じる福島正則との「宿敵」っぷりも良かったし、金吾中納言こと小早川秀秋も、自分にとってはこの時の国広富之さんの印象が強いですね。
そうそう直江兼続(細川俊之さん)もウザくなくて(笑)カッコいいです。短い出番ながら印象強烈で。
そして、島左近は世界のミフネ。最近、加藤氏の講演を聴いたかたによると、この役は三船敏郎さん自ら買って出てくれたとか。
関ヶ原で、最後まで戦場にとどまる左近と落ちのびる三成の別れも、変にベタつかずカッコよかったです。

その左近と共に三成を支えるのが、高橋幸治さんの大谷刑部吉継。支えると言うより、二人とも「仕方のない人だなあ」と思いつつ三成の面倒を見ている感じですが(笑)。
吉継の
「わしもおぬしも目がもう見えぬ。目が見えぬ同士のよしみじゃ。この命くれてやる。受け取れ!」
は、いまだに多くの歴史ドラマファンを痺れさせる名セリフであり、屈指の名シーンでした。やはり刑部殿はこうでなくちゃね。
そう言えば、高橋幸治さんは過去最高の信長役者と言われた人でもありましたね。その信長役で人気を得た大河ドラマ『太閤記』で三成を演じたのが、『関ヶ原』ではナレーション担当の石坂浩二さんで……と、連想はとめどなく広がります。

脚本は天才・早坂暁。
まず新幹線が現代の(1980年当時の)関ヶ原を通って行くシーンからスタートし、次のシーンがサンピエトロ寺院、と意表をついたオープニング。
そして第一話ラストシーンのナレーションは
「この日、イギリスのロンドンではシェイクスピア作『真夏の夜の夢』が上演されている」
でした。
言葉の力によってロングショットまたは俯瞰の構図を現出させて物語に奥行きを与え、また第一話のサブタイトル「夢のまた夢」とも連動するという離れ業に感嘆します。
第二話の始まりも「スペインの作家セルバンテスが『ドン・キホーテ』の想を練っている頃──」というナレーションで、時代背景と三成こそがまさに「ドン・キホーテ」的人物であることを同時に表現し、一方ラストは、ガラシャ(栗原小巻さん)自害(ではないけれど)後、細川屋敷に上がった炎を目にして
「あの火は我が胸の内に燃え上がる焔じゃ」
と言い放つ三成の姿と、「この日、日本は二つに割れた」というナレーションで締めくくられます。ああカッコいい!

本当にどこをどうとっても素晴らしい作品でした。当時「TBS創立30年記念ドラマ」と銘打たれていたそうですが、その頃のTBSまたテレビドラマ界にはこれだけの大作を送り出せる力があったのだと思うと、「戦国ブーム」などと言われる現在と引き較べて、思わず嘆息してしまいます。

この『関ヶ原』、12月6日(日)TBS チャンネル(CS放送)で正午より三話続けて放映されますので、視聴可能なかたは是非一度ご覧下さい。

関ヶ原 第一夜 夢のまた夢
関ヶ原 第二夜 さらば友よ
関ヶ原 第三夜 男たちの祭り


TBSオンデマンドだけでなく、現在 goo ブロードバンドナビからも購入できます。→こちら
各話 420円で視聴できるので、ちょっと観てみたいというかたにはお得かも。

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