ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

三沢厚彦 アニマルズ

2008-10-05 21:09:18 | 美術[ま]
「三沢厚彦 ANIMALS 08 in YOKOHAMA」@そごう美術館

 個性的な動物の彫刻を作っている三沢厚彦の展覧会が11/16まで横浜そごう美術館で開催されている。サイズはリアルなのに、造形はマンガチックで、思わず笑みが浮かぶようなアニマルたち。使う材木は樟(くすのき)で、別に一木彫ってわけではない。一木彫だったら巨大はゾウなどやたら造れなくなってしまう。ノミの彫り跡を残しているので、ツルツルではなく、ザラザラしていて動物の体毛の雰囲気が感じられる。ちっこいヤモリやカエルから、イヌ、ネコ、サル、ウサギときて、巨大なクマ、ライオン、ゾウ、キリン、ワニまでいろいろな動物が、童話の本から抜け出してきたようなお茶目な顔をして佇んでいる。顔つきは怖くはないが、でかいクマやライオンがこの大きさで実際に暴れ出したらひとたまりもないなぁと思わせるに十分な迫力がある。三沢氏のアトリエも再現されていて、棚にはちっこい人形風な彫刻が並び、壁には動物の絵が貼り付けられて、床にはチビ動物たちが勢ぞろい。まるで子供部屋みたいな雰囲気でなごむ。
コメント

ジョン・エヴァレット・ミレイ展

2008-09-07 00:39:54 | 美術[ま]
「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」@Bunkamura ザ・ミュージアム

 そしてまだまだ残暑は厳しいってのに中目黒から渋谷まで歩いた。暑いぜ。

 最初の絵《ギリシャ戦士の胸像》はミレイが10歳の時に描いたチョークによる素描。その描写力の凄さには驚かされる。やっぱりダタモンじゃない。そのあともきっちりしたデッサンと細かい描写の作品が並んでいる。

 「ハムレット」に出てくる《オフィーリア》だけは知っていた。思いっきり有名な作品を間近で見るとやはり感動する。この土左衛門絵画の綺麗なこと。死にゆくオフィーリアの白い顔が浮かぶ川辺の、草花のグリーンが鮮烈な印象で迫ってくる。手に握られた花環も、まるで死者に手向けられた花のように色彩豊かに漂っている。これほど美しい死人の絵など、そうそうないだろう。ビデオコーナーに、いろいろな画家の《オフィーリア》も紹介されていた。ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの《オフィーリア》も美しい絵だが、彼女はまだ生きている。川辺の木の幹に座って生きている。

 《遊歴の騎士》は、全裸で木に括りつけられた女性を助ける甲冑の騎士の絵。どこかで見たと思ったら、横浜美術館にある下村観山の《ナイト・エラント(ミレイの模写)》だった。

 《ハートは切り札》はテーブルを囲んで3姉妹がトランプに興じる作品。右側の美幸がカメラ目線でカードをこちらに見せながら「どやねん? わての持ち札は。ええやろ、ぬわっはっはっは」と言いたげな顔つき。真ん中の知子はそれを横目で見ながら、「われ、何たくらんどんじゃ?」と言いたそうな顔つき。左のかずこは「へ、屁ぇ出た」と言ったかどうだかわからないが、伏せ目で自分の手札を見ている。いいバランスの構図と、フワフワと膨らんだドレスや背景の草花の色彩がいい感じ。

 晩年の風景画《露にぬれたハリエニシダ》も好き。朝露光るハリエニシダの茂る林の中、朝もやの向こうから朝の光が輝きだそうとしている。幻想的で静かな雰囲気。

 というわけで、ミレイの絵が80点、《オフィーリア》以外にもいろいろ凄い作品があって見ごたえのある展覧会だった。

コメント

生誕290年 木喰展

2008-07-06 21:24:56 | 美術[ま]
「生誕290年 木喰展 - 庶民の信仰・微笑仏 -」@そごう美術館

 「皆さん。最近、笑ってますか。」
 いやぁもう、おお笑いですわ。バカでヽ(。_゜)ノ

 というわけで、丸まっちく笑っている木喰仏像を見に行ってきた。約130人の仏さんがニンマリしているまったりした会場で、のんびりぶらぶら、ふと目に映るのは、え?ドラエもん? 木喰仏によくある放射状頭光をつけた菩薩などが並んでるコーナーで、後ろから見ればみんなおなじドラエもん。

 円空仏の「俺に触れると怪我するぜ!」という刺さりそうな鋭角なイメージとは反対に、どこもかしこも丸い木喰仏は、突き刺しても凶器になりそうもないつんつるてんでかわいい。あえて凶器にするならば「俺で殴れば怪我するぜ!」ということになる。そりゃぁ木材で殴れば痛そうだ。←なぜに凶器にしたがる


       人は唯 内外ともに まん丸に 柔和忍辱 諸人愛嬌


 仏像のほかに書画も展示されていた。その中に、図入利剣名号というものがあり、「南無阿弥陀仏」などの文字を模様のように装飾のように書いてあってちょっとかっこよかった。

 見物していたらなにやら話し声が流れて来たので、ビデオでも上映しているのだろうと思いながら進んで行くと、にゃんと、特別対談なんてものをやっていた。知らなかった。定員制で椅子は全部埋まっていたが、後ろに立ったまま終りの30分ほどを聞いた。すでに1時間くらい過ぎていたので、木喰に関する話題はほとんど終わっている状態だったが、美術史家、明学教授の山下祐二氏 VS 日本民藝館学芸員の尾久彰三氏の笑いの絶えない対談だった。木喰が67歳のころから、年齢を上にサバを読んで表記していたというような話も出た。だから、 93歳で亡くなった時はホントは83歳だったとかいうわけわからんことになる。とうねん取って下に年齢をサバ読みたがるのが普通なのに、なんでだろ?

 山下氏が、ゾウやチータの木彫り作品を作成する現代作家の三沢厚彦氏を話題に取り上げたら、司会の学芸員が「今日はご本人がいらしてます」と言ったので、山下氏もびっくり。すると立っている俺の目の前の椅子から、あやしげな風体の人が照れながら立ち上がったので、俺もびっくり。←そこにいたのか

 この三沢厚彦氏の展覧会をそごう美術館にて10月4日から開催されるようだ。
参考サイト 西山画廊

 もうひとり山下氏の推している作家、前原冬樹氏も話題にした。空き缶にピラカンサスの花が活けられた立体の写真を見せて、これが一木彫です、と紹介すると、みんな「ぅおぅ!」と叫んだ。前原冬樹氏の展覧会は、おぶせミュージアム・中島千波館で、8月1日から始まる。見たいなぁ。おぶせってどこじゃ?と調べたら、長野県上高井郡・・・千曲川・・・信州中野・・・小布施・・・遠いぞ(;´o`)
木彫 前原冬樹展
おぶせミュージアム・中島千波館
コメント

ムンク展

2007-11-04 21:05:06 | 美術[ま]
ムンク展@国立西洋美術館

 |(・0・)1 「叫び」でお馴染みのノルウェーの画家ムンクの展覧会。今回は「装飾画家」としての活動にスポットを当てた展覧会だそうだ。壁面を自分の作品で飾り立てた写真なども展示されている。子供部屋の装飾を依頼されて、「くれぐれも抱擁とか接吻とかそういうものは描かないように」と依頼主から口を酸っぱくして言われていたにもかかわらず、描いてしまって受け取りを拒否された、とかいうエピソードも書いてある。何度も注意されていたのに生放送で放送禁止用語を連呼して出入り禁止になるタレントみたいな奴である。

 最初に展示されている「吸血鬼」という作品。下を向いて落ち込んでいるような男に、オレンジ色のロングヘアの女が覆いかぶさるようにかき抱いている。その唇が男の首筋あたりに来ているため、見た人が「吸血鬼」と呼んでしまった。ムンク本人は「そうじゃねぇのにぃ」と否定していたという。

 いろいろな作品に何度か出てくる、頭に手を当ててうつむいている男は、うつ病をイメージしているという。そういうわけで俺は、展覧会前半、うつ病ブームになってしまった。そうかと思えば目の周りにクマができたような、落ち窪んだような、陰気な目つきの作品が前半に多い。後半には力強い労働者の絵など毛色の違う作品が出てくる。

 「歴史」という作品が、リトグラフと油彩の2点展示されていた。構図やイメージがいい。油彩の「歴史」より、リトグラフの「歴史」のほうが好みである。これがいちばん気に入った。海辺の丘の上で少年と向き合う老人。何を語り聞かせているのか。「なあ坊主、わしはこの年になっても入れ歯ではないぞ、しっかり歯ぁ磨けよ、老人は歯が命じゃよ」と言っているに違いない。んぁ。
コメント

森村泰昌展

2007-08-12 23:18:31 | 美術[ま]
森村泰昌「美の教室、静聴せよ」展 Bi-Class, Be Quiet@横浜美術館

 名画の登場人物に画家自身が扮装してしまうという、一風変わったネタを持つあやしげな作家、森村泰昌の展覧会。「美の教室」ということで、子供机の並ぶホームルームから始まって、1時間目~6時間目まで教室が続き、放課後:ミシマ・ルームでは妙な演説を聴かされる。最後に卒業試験を受けて、卒業証書というか卒業バッチをもらう。というように展示形態もちょっと変わっている。無料貸し出しの音声ガイドは森村氏本人の講義が流れる。フェルメールの絵の部屋を実際に再現して、その中に自分を置いてみたりする凝り性な所は面白い。ゴッホの自画像のトゲトゲ帽子が「痛い」と森村氏は言っていたが、表現者森村氏の女装も微妙に「痛い」。常設展示のほうにも『神とのたわむれ』『ハラ・セツコとしての私』など森村作品6点が展示されている。とりあえず面白半分に見に行ってもいいかも。お気に入り作品はゴヤ・ルームの『今、こんなのが流行っているんだって』ってやつ。
コメント

大回顧展モネ

2007-06-24 01:43:15 | 美術[ま]
大回顧展モネ@国立新美術館

 モネ展に行ってみた。40分待ちという兇悪なアナウンスを聞きつつも、読書しながら20分くらいズリズリ進んで入場できた。来週で終わるので、俺と同じで、駆け込み見学者がたくさん押しかけていて、バーゲンセールみたいな混雑ぶりだった。同じ場所を描いた連作を横に並べて展示してあるので、ちょっとした雰囲気の違いがわかりやすかった。モネの絵は、離れて見るほうがいい。この展覧会ではモネだけでなく、印象派から受け継がれた光と色彩に関連した作家の作品もちょこちょこと展示してあった。ロバート・ライマンの「君主」という作品は2メートル四方のでかいキャンバスが真っ白け。これで作品と言い張る度胸はすばらしいが、まったく6でもない。使い道はたくさんあるので1800円くらいでなら買い取ってもよい。てゆーか、これを真面目な顔で見る虚しさは、スベった芸人を見た時の気恥ずかしさに通ずる、みたいな←んなあほな。

「アルジャントゥィユの小舟」「ポール=ドモワの洞窟」「アンティーブ岬」「ルエルの眺め」「ヴェルノンの教会の眺め」「睡蓮(ポーラ美術館)」
コメント

モダン・パラダイス展

2006-08-29 00:59:29 | 美術[ま]
 東京国立近代美術館所蔵作品と大原美術館の作品展

・高村光太郎 「腕」
・靉光 「眼のある風景」
・国吉康雄 「跳び上がろうとする頭のない馬」
・キリコ 「ヘクトールとアンドロマケーの別れ」
・タンギー 「聾者の耳」
・ミロ 「夜のなかの女たち」

 戦争やらなにやらと、シリアスなテーマの絵画や、落ち着いた色合いの絵画が並ぶ中に、ミロの能天気な子どものいたずらのような絵を見つけると、ムッフフと笑いが漏れてしまう。何も考えなくてもいいミロの絵はいい。でもちょっと何か考えてみたくなるようなタンギーの絵もいい。「聾者の耳」は隙間な状態と色合いがいい。逗子マリーナの南国風なマンションの脇にイヴ・タンギー美術館ってのがあった。何年か後に再び行ってみたら何だか違う施設に変わっていたザンネンな午後を思い出す絵だ。
コメント