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肉筆浮世絵展

2006-11-05 23:59:36 | 美術[な]
「江戸の誘惑」ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展@江戸東京博物館

 スペースインベーダーみたいな江戸東京博物館に浮世絵を見に行った。版画じゃなく、肉筆は、わしら貧乏人には手が出ない金持ちの発注品だそうで、それだけ貴重なものだ。ボストン美術館にはそんな肉筆浮世絵が700点も眠っていたようだ。良くぞご無事で、といったところだ。こういうものを守るためにも核戦争などしてはいけない、と、余計なことを思った。

・鳥文斎栄之 「隅田川渡舟図」・・・川を流れる小舟と乗客が、水墨画のような単色で描かれていながら、2人の遊女だけが色鮮やかに彩色されている。そこだけにスポットライトが当たっているかのようで印象的である。

・葛飾北斎「鏡面美人図」・・・立って髪を直している遊女、引き出しに立てかけた鏡にその顔が写っているという風変わりな構図。その姿を斜め後ろから見たら、鏡の中の顔は見えないはずだが、イメージとしては面白い。

・葛飾北斎「鳳凰図屏風」・・・極彩色の鳳凰。迫力もあるけれど、なんか目が妖しげで、着飾った遊女が変身したかのように感じた。

・葛飾北斎「提灯絵 龍虎」「提灯絵 龍蛇」・・・ちょうちんから剥がして保存されていたものを、ボストン美術館の人たちが再度、ちょうちんの形に復元したという逸品。ちょうちんはスチロールみたいな、なんだかそんな材質で作ってある。正確な形を出すまで6か月かかったとか。ダークサイドな雰囲気の色合いで渋い。

・葛飾応為「三曲合奏図」・・・北斎の娘。琴、三味線、胡弓を弾く遊女3人が向き合っている絵。黒い着物で後ろ向きで琴を弾く女、両手の指だけが琴の上を舞っている。胡弓を弾く女はこれでもかと首を横に傾けていて印象的。琴を弾く女はいたって普通だが、指がやたらと長い。3人3様の動きのある姿が面白い。

・鳥文斎栄之「見立三酸図」・・・大きな瓶の周りで3人の美女が楽しそうに世間話をしている。3人の美女とは、楊貴妃と小野小町と花魁。クレオパトラは非番らしい。優雅な花魁と楊貴妃に差をつけられたチビ小町が、団扇を振り回して「あたしゃもすこし背が欲しい」と騒いでいる図。と思ったら団扇を持っているのは楊貴妃の手か? なんのこっちゃ。

・鳥文斎栄之「象の綱」・・・春画である(^o^)。春画と言っても、風流如意袋まるだしで真っ最中の絵ではなく、本を読む遊女の後ろから小男がひょろひょろと着物の裾に手を伸ばし始めた図で、細密で深い色合いがとても綺麗だった。

・懐月堂(長陽堂)安知「縁台美人図」・・・縁台に座る遊女が手紙らしきものを口にくわえている。さわやかな青が引き立つ着物は「吾妻」などのでかい文字が書いてある粋な図案。その着物の輪郭が、浮世絵とは思えぬ厚みを持って描かれていてすごくいい。象形文字に色をつけたような感じがした。

 浮世絵を見た後は、荒木経惟「東京人生」写真展も見た。モノクロの写真が多かった。古い東京のどこか懐かしい写真や、洟垂れ坊主の写真。カラー写真では、着物を着てスイカを喰らう女がよかった。着物でしゃがみ込んだ女の足元には無残に割れたスイカが転がっている。女はスイカの切れ端を食いながらカメラを見つめている。なんかエロい。

 でかいペンタックスを担いで街中を歩きながらバシバシ撮影している荒木の映像が流れていた。「もうそのくらいにしとけよ」と言いたくなるくらいバシバシ撮っていた。早足でワシワシ歩いてはバシバシ撮っている。

 それからあのだだっぴろい常設展示場を徘徊していたら、時間なんぞあっというまに過ぎて行くのであった。

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