2024年11月29日に今の臨時国会での石破茂首相による所信表明演説が行われたのですが、うちで取り扱うのも2日後というありさま。
石破首相が1957年通常国会での石橋湛山首相の施政方針演説を冒頭と最後に持ってきたのが不遜で生意気だとちょっと話題になった程度で、ほとんどの国民は所信表明演説があったことも、ましてその中身も知らないと思うんですよ。
石破首相の存在感のなさというか、最初からの期待度の低さというかは、自民党が2012年に政権を再奪取してから初めてのことではないでしょうか。
まあ、立花孝志氏とN党とか、斎藤元彦兵庫県知事とか、不倫大使玉木雄一郎氏と国民民主党とか、今の日本には悪目立ちする政治家が多すぎます。
本当は大人しいどころじゃない超危険な政治家なんだが、すっかり影が薄い。
カテゴリ「石破茂に騙されるな」より
【#滅べ自民党】極右政治家石破茂の真実の記録。「憲法9条2項削除」「国防軍創設」「軍法会議創設」「徴兵拒否には死刑か懲役300年」「核武装のために原発推進」【#自民党の無い平和な社会】
ちなみに、石橋湛山という人はジャーナリスト出身で戦前戦中も大日本帝国の軍国主義に反対した、戦後を代表する政治家と言われています。
名前は石破氏と似てますがその実態はおよそかけ離れた存在で、石破首相の所信表明演説が
『民主主義のあるべき姿
「国政の大本について、常時率直に意見をかわす慣行を作り、おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合わせるべきことについては相互に協力を惜しまず、世界の進運に伍していくようにしなければならない」
これは、昭和32年2月の石橋湛山内閣施政方針演説の一節です。
この言葉に示されているとおり、民主主義のあるべき姿とは、多様な国民の声を反映した各党派が、真摯に政策を協議し、よりよい成案を得ることだと考えます。
先般の選挙で示された国民の皆様の声を踏まえ、比較第1党として、自由民主党と公明党の連立を基盤に、他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真摯に、そして謙虚に、国民の皆様の安心と安全を守るべく、取り組んでまいります。』
と始まるのには、期待というよりも「ほんまかいな」と鼻白みました。
岸田首相の「聞く力」と同じで、「他党に丁寧に意見を聞き」というのが国民民主党だけになるような嫌な悪寒がします。
【#誰がなっても自民は悪党】軍国主義者で国防軍設置論者の石破茂候補がまた核共有を言い出し、中露の領空侵犯に相手を標的に武器を使用する「危害射撃」を自衛隊に認めろとまで言った【#自民党の無い平和な社会】
また、石破首相の演説の最後にも石橋湛山が登場し、
『石橋湛山内閣の施政方針演説では「常に国家の永遠の運命に思いをいたし、地方的利害や国民の一部の思惑に偏することなく、国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定め、論議を尽していくように努めたい」とあります。』
と結んだのですが、企業・団体献金の禁止には一言も触れずに財界からの巨額の献金を温存するつもりなのに、「国民の一部の思惑に偏することなく」などとよく言えたものですよ。
さて、私がこの臨時国会で注目しているのは、そんな政治とカネの問題もさることながら、安倍政権で集団的自衛権行使を容認する安保法案から始まった軍国主義がどうなるのか、です。
前の岸田自公政権は2027年度までに防衛費を2倍にしてGDP比2%に達するよう定めました。
これは米国のバイデン政権が、2020年9月に日本に対し防衛費をGDP比2%以上に増やすよう要請したことに応えたものです。
さらに、岸田政権では反撃能力=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力具備という戦後日本の安全保障政策を大きく変質させる大悪政が行われたのですが、それが岸田氏をキングメーカーとして成立し、しかも首相本人が大の軍国主義者という石破政権のもとでどうなるのかです。
石破氏は首相になる前に、軍事費が円安で足らなければさらに積み増すとまで言っていましたから、目立たないけれども日本の災厄になりかねないのが石破首相です。
【#自民党を許すな】岸田文雄首相が 自民党総裁選に不出馬を表明し首相退任へ。軍事費2倍増と先制攻撃能力具備。新原発建設。安倍晋三氏・菅義偉氏に劣るとも勝らない無能で邪悪な最悪の総理大臣だった。
さて、そんな石破氏の所信表明演説の中の「防衛力の抜本的強化」という部分を見ると、
「外交と防衛は車の両輪です。
私は、厳しい安全保障上の現実を直視し、国家安全保障戦略等に基づき、我が国の防衛力の抜本的強化を着実に進めるとともに、同盟国・同志国との連携を更に深めることで、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守り抜きます。」
と言いながら、そもそも軍事費拡大のことも先制攻撃能力のことも一切書いていないんです。
日本の軍国主義化はもう当たり前の既定路線になってしまっているんですね。
石破首相の今回の演説には、せっかく直近に日本被団協がノーベル平和賞を獲ったにもかかわらず、核廃絶についても一言もなし。
それにしても石破政権の姿勢が日本の平和憲法に反し、日本の安全保障環境をかえって悪化させるという点はひとまずおくとして、この大軍拡の財源はどうするのでしょうか。
防衛省は8月末にまとめる2025年度予算概算要求で、初めて8兆円台に乗る過去最大の「防衛費」=軍事費を計上する方針。たった3年で3兆円増。誰が総裁になっても自民党政権のままでは軍国主義一直線だ。
2022年度には1年間で5兆4千億円だった軍事費を2027年には11兆円にするということは、2023年から2027年で17兆円のお金をどっかから持ってこないといけません。
さらに、2028年以降は少なくとも11兆円の軍事費がかかるんですから、2022年に比べると毎年5兆6千億円の税金が軍事費に支出されるわけですよ。
今、国民民主党が持ち出した所得税・住民税がかかる103万円の壁を突破して178万円にしたら7兆8千億円くらいの歳入減になるのでなにか財源が必要だということが問題になっているわけですが、その前に5年間で17兆円、2028年からは毎年5兆6千億円の歳出増をどうするのかという問題があるわけですよ。
石破首相も所信表明演説で
『いわゆる「百三万円の壁」については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げます。』
と言ってしまいました。
こんな歳出増と歳入減のダブルパンチに日本の財政が耐えられるんですか。
高所得者ほど減税効果が高い103万円の壁突破。そして国でも地方でも歳入が激減してサービスも激減。
減税すれば良い政治という思い込みが完全な間違いだ。
玉木雄一郎国民民主党代表が「103万円の壁」の引き上げについて、総務省が全国知事会に反対するよう「工作している」発言を「全国知事会の皆さんに不快な思いを抱かせたとしたらおわび申し上げたい」と陳謝(呆)
国民民主党の103万円の壁の議論は軍事費に比べれば、新自由主義の小さな政府論に基づく悪政だとは言っても、減税というプラス面もあるわけですよ。
しかし、アメリカから長距離ミサイルなどを買うという軍事費増は、アメリカの軍需産業を喜ばせるだけで、それでいて安全保障には役に立たずかえって東アジア地域の緊張を高めるだけなのですから、百害あって一利なしです。
そんなことに石破自公政権は毎年毎年11兆円も使おうとしているんですよ。
日本の歳入の2割以上が軍事費に使われてしまいます。
さらに、石破氏はこの所信表明演説で、次期トランプ米政権の下で「(日米)同盟をさらなる高みに引き上げ」、「防衛力の抜本的強化を着実に進める」と述べたわけですが、トランプ大統領がアメリカファーストだからと在日米軍の費用負担など、日本にさらなる軍事費の負担を求めてくるのは必定です。
ドイツのメルケル前首相に「すべてを不動産業者の目で判断する人」wと言われたトランプ氏ですから、安倍晋三首相に兵器を爆買いさせたように、米国産の兵器をもっと買えもっと買えと言ってくるのも絶対確実です。
この存在感のない石破政権が国内では玉木国民民主党の新自由主義や原発大推進路線に流されそうなように、外交・安保の面では新トランプ政権にいいようにおもちゃにされるのを絶対に阻止しないといけません。
さらばトランプ!兵器爆買いでトランプ氏を支えた安倍前首相。この人と仲良くしたのが「外交の安倍」の最大のセールスポイント、っておかしくね?!(笑)。
第一次安倍政権よりも第二次安倍政権の方がはるかにタチが悪かったことを思えば、復讐心に燃えるドナルド・トランプ氏が復権した第2次トランプ政権がどれだけ危険なものになるかは容易に予想がつく。心して備えよ!
孤高を恐れず: 石橋湛山の志 (講談社文庫 さ 33-17)
■<1>政権運営の基本方針
◆民主主義のあるべき姿
「国政の大本について、常時率直に意見をかわす慣行を作り、おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合わせるべきことについては相互に協力を惜しまず、世界の進運に伍(ご)していくようにしなければならない」
これは、昭和32年2月の石橋湛山内閣施政方針演説の一節です。
この言葉に示されているとおり、民主主義のあるべき姿とは、多様な国民の声を反映した各党派が、真摯(しんし)に政策を協議し、よりよい成案を得ることだと考えます。
先般の選挙で示された国民の皆様の声を踏まえ、比較第1党として、自由民主党と公明党の連立を基盤に、他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真摯に、そして謙虚に、国民の皆様の安心と安全を守るべく、取り組んでまいります。
■<2>三つの重要政策課題への対応
全ての国民の幸せを実現するため、三つの重要政策課題への対応を進めます。
(1)首脳外交を経た今後の外交・安全保障政策
◆基本的考え方
まず第一は、外交・安全保障上の課題への対応です。国際秩序に大きな挑戦がもたらされています。ロシアによるウクライナ侵略は今も続き、北朝鮮の兵士がウクライナに対する戦闘に参加しています。中東地域で続く報復の応酬は未(いま)だに終わりが見えません。
我が国周辺に目を転じれば、今年後半だけを見ても、中国、ロシアの軍用機が我が国領空を相次いで侵犯したほか、中国空母が我が国領海に近接する海域を航行しました。戦闘機を含む中国空母2隻の艦載機は約1200回に及ぶ発着艦を太平洋で行いました。ロシアの哨戒機は我が国を周回する飛行を行いました。北朝鮮は、ICBM級を含め、近年かつてない高い頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しています。
こうした厳しく複雑な国際社会においても、国家のかじ取りを行うにあたっての基本は変わりません。すなわち、我が国としての、そして同盟に基づく抑止力・対処力を維持・強化しつつ、各国との対話を重ね、我が国にとって望ましい安全保障環境を作り出すことです。これにより、分断と対立を乗り越え、法の支配に基づく国際秩序を断固として堅持してまいります。
◆首脳会談の成果
私は、先般、ペルーでのAPEC、ブラジルでのG20に出席し、自由貿易体制の維持・強化、飢餓・貧困の撲滅といった国際社会の諸課題につき、我が国の理念、施策を発信するとともに、各国首脳との間で個別に意見交換を行いました。
アメリカ合衆国のバイデン大統領とは、今後も、揺るぎない日米同盟を更に発展させていくことで一致しました。
合衆国では、来年1月には第2期トランプ政権が発足します。日米安保体制は、我が国の外交・安全保障政策の基軸です。しかし、同時に、合衆国も、在日米軍施設・区域の存在から、戦略上大きな利益を得ています。
当然のことながら、合衆国には合衆国の国益があり、我が国には我が国の国益があります。だからこそ、率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高めあうことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができると考えます。トランプ次期大統領とも率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げていきたいと考えております。
韓国の尹錫悦大統領とも、来年、国交正常化60周年を迎える中、首脳会談も頻繁に行い、日韓関係を大いに飛躍させる年にしよう、ということで一致しました。日米韓3カ国の首脳会談も行いました。
中国の習近平国家主席とも、かみ合った議論を行うことができたと感じています。日中間には様々な懸案、意見の相違があります。首脳会談の際、私からは、中国軍の活動の活発化や深センでの児童殺害事件など、我が国の懸念について率直に提起をいたしました。また、日本産水産物の輸入解禁の早期実現、日本産牛肉の輸入再開、精米の輸入拡大も求めました。私が指摘した短期滞在の日本人への査証免除再開については、既に中国側から明日30日に開始するとの発表がありました。
このように、諸課題について、主張すべきことは主張する。しかし、その上で、協力できる分野では協力していく。それが私の考える国益に基づく現実的外交です。中国の安定的発展が地域全体の利益となるよう、習主席とも確認した、「戦略的互恵関係」の包括的推進、「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性に基づき、今後も首脳間を含むあらゆるレベルで中国との意思疎通を図ってまいります。
日ロ関係は厳しい状況にありますが、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。
◆防衛力の抜本的強化
外交と防衛は車の両輪です。
私は、厳しい安全保障上の現実を直視し、国家安全保障戦略等に基づき、我が国の防衛力の抜本的強化を着実に進めるとともに、同盟国・同志国との連携を更に深めることで、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守り抜きます。
防衛力の最大の基盤である自衛官の充足が約90%にとどまっていることは、極めて深刻な課題と認識しています。自衛隊の人的基盤の強化に向け、私を議長とする関係閣僚会議を既に3回開催し、議論を重ねています。隊員の生活・勤務環境の改善等、早急に実現可能な方策は経済対策に盛り込み、併せて、若くして定年退職を迎える自衛官の新たな生涯設計を確立し、退職後も社会で活躍するための施策の方向性についても、年内に結論を得て、可能なものから令和7年度予算に盛り込みます。
沖縄県を含む基地負担の軽減に取り組みます。普天間飛行場の一日も早い返還を実現するため、辺野古移設が唯一の解決策であるとの方針に基づき、着実に工事を進めてまいります。沖縄振興の経済効果を十分に域内に波及させ、それを実感していただけるよう、沖縄経済の強化に向けて支援を継続します。
加えて、在日米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進めるとともに、駐留に伴う諸課題の解決にも取り組みます。
サイバー攻撃の脅威は差し迫った課題であり、有識者会議の提言も踏まえ、サイバー安全保障分野での対応能力を向上させるための法案を、可能な限り早期に国会に提出するべく、検討をさらに加速します。
◆拉致問題
拉致問題は、単なる誘拐事件であるにとどまらず、その本質は国家主権の侵害です。拉致被害者やそのご家族がご高齢となる中で、時間的制約のある、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題です。国家としての、また、私自身の断固たる決意の下、その解決に取り組んでまいります。先に述べました日米、日韓の首脳会談においても、引き続きの連携を確認いたしました。
(2)日本全体の活力を取り戻す
◆基本的考え方
重要政策課題の第二は、日本全体の活力を取り戻すことです。人口減少によって、地域の活力、そして経済の活力が低下しています。こうした状況は、我が国の経済・社会システムの持続可能性への不安を生み出し、更なる人口減少につながりかねません。
この流れを反転させるため、地域の活力を取り戻す地方創生の再起動、経済の活力を取り戻す「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」への移行、全世代型社会保障の構築、この三つの取り組みを強力に進めてまいります。
◆地方創生2・0
地方創生は、日本の活力を取り戻す経済政策であり、そして多様性の時代の国民の、多様な幸せを実現するための社会政策です。元気な地方から元気な日本を作る試みは、多くの点となって息づいていますが、未だ全国的な広がりには欠けています。これを集めて面にして、やがては日本中の皆様に、「面白い」、「楽しい」という思いを広げていかなければなりません。
宮崎県小林市では、フランス語かと思わせるような地元の方言を使うなど、ユニークな我が「まち」紹介動画を作成し、話題となりました。これは、市の職員が学生とともにアイデアを出したものでした。故郷(ふるさと)を離れてしまう前に、故郷に誇りを持って欲しい、そして故郷のために活躍して欲しいとの市長の願いからでした。
鹿児島県伊仙町では、町長が集落を回り、町の財政状況を丁寧に説明した結果、高齢者から、子供たちのためにもっとお金を使って欲しいとの意見がでました。出産や子育て環境を充実させ、平成15年から平成24年までの間、合計特殊出生率日本一となる、「2・42」、「2・81」を実現しました。
これらを決して、一つの「まち」の物語にとどめてはなりません。日本中の同じ課題を抱えている皆様と、これまでの地方創生の成功事例から学び、「産官学金労言」で英知を集め、我が「まち」を輝かせるため、共に取り組んでいく所存です。デジタル技術の活用や、地方の課題を起点とする規制・制度改革を大胆に進めていきます。
「地方創生2・0」を起動し、我が国の社会や経済の起爆剤とするため、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増します。新しいICT技術もフル活用しながら、持てるポテンシャルがまだまだ眠っている地方の農林水産業、製造業、サービス業の高付加価値化を進めるとともに、新たな重点として文化芸術・スポーツの振興にも取り組みます。来年4月に開幕する大阪・関西万博の機会も最大限に活用します。
この夏、店頭から米が一時消えたことは記憶に新しいところです。人口減少下においても、農林水産業・食品産業の生産基盤を強化し、安定的な輸入と備蓄を確保することなどを通じて、食料安全保障を確保します。農林水産業に携わる方々が安心して再生産でき、食料システム全体が持続的に発展し、活力ある農山漁村を後世へ引き継げるよう、施策を充実・強化します。
地方の取り組みが花開くためには、国としての環境整備も必要です。GXの例では、洋上風力、地熱や原子力などの脱炭素電源を目指して、工場やデータセンターの進出が進み、教育機関との連携などによって、新たな地域の活力に繋(つな)がる動きが始まりつつあります。投資の予見可能性を高めるため、温室効果ガスの排出削減を求めつつ、国として20兆円規模の先行投資支援を行い、官民で150兆円を超えるGX投資を実現します。GXによる産業構造や産業立地の将来像について、2040年に向けたビジョンを年内に示し、核となる拠点を広げていきます。エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画もまとめてまいります。
「地方創生2・0」には、魅力ある働き方・職場づくりも重要です。男女間の賃金格差が地域によって異なる中、若者や女性が安心して暮らせる「働き方」とは何か。非正規雇用の方の正規化をどのように進めるか。時間に余裕を持ちながら正社員としての待遇を得る短時間正社員という働き方も大いに活用すべきです。女性の雇用における「L字カーブ」の解消、男性の育児休業の推進にも取り組み、社会の構造・意識の変化につなげてまいります。
「人づくりこそ国づくり」。教職員の働き方改革や給与面を含む処遇改善などを通じて、公教育の再生を進めます。
◆経済全体の活力
30年前、日本のGDPは世界の18%を占めていましたが、直近の2023年では4%です。そして、1位だった国際競争力は、今、38位に落ちました。配当は増え、海外投資も増えた一方で、国内投資と賃金は伸び悩んできました。デフレ経済の中、雇用は安定してきたが、給料は上がらない、安い商品はあるが、革新的な商品・サービスはあまり生まれてこない、という状況だったのではないでしょうか。しかし、ようやく約30年ぶりの高い水準の賃上げと、過去最大規模の投資が実現し、明るい兆しが現れています。コストカットではなく、付加価値の創出に力点を置いた経営・経済への転換を進めなければなりません。ドイツや韓国と比較すると、GDPに占める輸出の割合が低い我が国においては、経済安全保障の観点からも、付加価値の高いサプライチェーンを国内に回帰・立地させていくことが重要です。
先般の政労使の意見交換において、約30年ぶりの高い水準となった今年の勢いで、来年の春季労使交渉においても大幅な賃上げを行うことへの協力を、私から要請しました。また、最低賃金を引き上げていくための対応策の策定を、関係閣僚に指示しました。
DXを切り口として、日本の潜在的な強みであるAI、量子、バイオ、宇宙、フュージョン、GX等の戦略分野のイノベーションとスタートアップの支援、スキル向上などの人への投資を進めてまいります。
今こそ、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現し、我が国を、世界をリードするイノベーションが常に生み出される豊かな国としてまいります。
◆社会保障等
これらの取り組みとあわせて、子育て支援を強力に推進するとともに、国民の皆様に安心していただける社会保障制度を構築します。本格的な人口減少の中にあっても、現役世代の負担を軽減し、意欲のある高齢者を始め女性、障害者などの就労を促進し、誰もが年齢に関わらず能力や個性を生かして支え合う、全世代型の社会保障を構築していきます。今月、関係大臣には「改革工程」に掲げられた事項の具体化を指示しました。丁寧な議論を行って、実現できる項目から着実に実施してまいります。
来月2日には健康保険証の新規発行が終了します。マイナ保険証の利用を促進しつつ、お持ちでない方には資格確認書を速やかにお届けすることで、これまでどおり診療が受けられるようにしています。国民の皆様の不安には迅速に応え、丁寧に対応するというのが私の考えです。
「経済あっての財政」との考え方の下、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱(きょうじん)な経済・財政を作っていきます。
(3)治安・防災
◆基本的考え方
重要政策課題の第三は、治安・防災への更なる対応です。国民お一人お一人に、生き生きと、充実した日々を送っていただくための基盤となるのは、安心・安全な社会です。
◆「防災庁」・防災対策
地理的な条件が不利であり、財政的にも厳しい地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということは、国家としてあるべき姿ではありません。避難所での生活環境を改善し、災害関連死を防ぐためにも、避難所の満たすべき基準を定めたスフィア基準を、発災後早急に、全ての避難所で満たすことができるよう、事前防災を進めてまいります。また、避難所となる全国の学校体育館の空調整備のペースを2倍に加速します。
能登半島地震・豪雨での教訓も踏まえ、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカーなどの迅速な派遣のための官民連携による登録制度の創設、温かい食事の迅速な提供などを可能とするための資機材・物資の分散備蓄、災害ボランティアとして活動する支援団体の事前登録制度の創設など、避難者の皆様の生活環境の向上のため、最大限の対応をしてまいります。被災者が災害関連の各種申請を容易に行うことができるよう、更なる改善に取り組みます。
被災地では、被災者でもある自治体職員の負担を軽減しつつ、災害対応に万全を期する必要があります。他の自治体に派遣する職員に対する訓練や、職員派遣による経験の蓄積を促進するとともに、特に大規模な災害については、あらかじめ支援自治体を定めるなどの準備も進めてまいります。
政府における体制も着実に強化します。内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面において抜本的に強化することに加え、被災者の方々の声を必ず施策に反映させるとの強い思いから、11月1日に立ち上げた「防災庁設置準備室」において、令和8年度中の防災庁の設置に向け着実に準備を進めてまいります。
◆東日本大震災からの復興
「福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なし。」
全閣僚が、こうした決意の下、被災者の生活や産業・生業(なりわい)の再建、福島イノベーション・コースト構想の推進に、全力で取り組んでまいります。
◆治安対策
最近、いわゆる「闇バイト」による強盗・詐欺の報道を見ない日はありません。他者への慈しみや堅実な努力といった、日本社会の中で大切にされてきた価値観・道徳観を揺るがしかねないものであり、こうした犯罪を断じて許してはなりません。
悪質な事件の主体となっている、いわゆる匿名・流動型犯罪グループの検挙を徹底するための取り組みを一層推進してまいります。学校での啓発活動、若者に向けたSNSによる情報発信等を強化するとともに、「闇バイト」を募集する情報のインターネット上からの削除にも一層努めてまいります。防犯カメラ等の整備、青パトによる活動などを国としても支援し、町ぐるみの防犯対策を更に促進してまいります。また、性暴力、DV、虐待等を防ぎ、被害者支援を推進します。
■<3>経済対策・補正予算
国民の皆様の暮らしが豊かになったと感じていただくためには、現在や将来の賃金・所得が増えていくことが必要です。そのことを最重要課題として、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を策定しました。
第一に、日本経済・地方経済の成長です。
家計を温めるためにも物価上昇を上回る賃金上昇を実現していく必要があります。まず、最低賃金の引き上げに取り組むほか、中小企業をはじめとした事業者の皆様方が確かに儲(もう)かり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけるよう、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めるとともに、省力化・デジタル化投資の促進や、経営基盤の強化・成長のための支援を充実します。
地方の皆様方が希望と幸せを感じていただくことも重要です。地方創生の「基本的な考え方」を年末までにとりまとめますが、地域活性化とあわせて、この国の在り方、文化、教育、社会を変革する大きなムーブメントを作り出していくため、いち早く地方の皆様方が動き出せるよう、地方創生の交付金を倍増しつつ、前倒しで措置します。
将来も継続的に所得が増加する手立てを講じておくことも必要です。資産運用立国及び投資立国を実現します。今後2030年度までにAI・半導体分野に10兆円以上の公的支援を行い、10年間で50兆円を超える官民投資を引き出します。経済安全保障の強化や、リスキリングを含む人への投資も促してまいります。
第二に、成長型経済への移行にあたり誰一人取り残されないようにすることが重要です。
賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現までの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々への支援が必要です。低所得者世帯の方々に対し給付金の支援を行います。地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、価格転嫁が困難な中小企業への支援、学校給食費への支援のほか、新たに、厳冬期の灯油支援も行えるようにします。
家庭の電力使用量の最も大きい1月から3月の冬季の電気・ガス代を支援します。
エネルギーコスト上昇に強い経済社会の実現のため、クリーンエネルギー自動車の購入支援や省エネ性能の高い住宅へのリフォームを支援します。
第三に、国民の安心・安全の確保です。
国民の皆様方が豊かさを感じられるのは、安心と安全があればこそです。
能登地域の皆様が受けた地震・豪雨の度重なる被害からの一刻も早い復旧と創造的復興を一層加速します。災害廃棄物処理の加速化、公営住宅の建設などの生活再建を進め、被災事業者の生業の再建を後押しします。防災・減災、国土強靱化を着実に推進します。シェルターの確保等により国民保護の取り組みを強化します。
以上申し上げてきた、経済対策のとりまとめに当たっては、党派を超えて、優れた方策を取り入れるべく、最大限の工夫を行ってまいりました。いわゆる「103万円の壁」については、令和7年度税制改正の中で議論し引き上げます。いわゆる暫定税率の廃止を含む「ガソリン減税」については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得ます。これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得ます。
政府としては、この経済対策をできるだけ早くお届けできるよう、速やかに補正予算を国会に提出いたします。そして、国会でのご審議をいただき、早期の成立を目指します。
■<4>政治改革への対応
先の選挙結果は、主権者である国民の皆様からの、政治資金問題や改革姿勢に対する叱責(しっせき)であったと受け止めております。「政治は国民のもの」との原点に立ち返り、謙虚に、真摯に、誠実に国民と向き合いながら、政治改革に取り組んでまいります。
政党から議員に支出され、その先の具体的な使途が公開されていない政策活動費の廃止、政治資金に関する必要な監査を行う第三者機関の設置、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築など、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を進めてまいります。
調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費の使途公開及び残金返納に向けて、既に国会でご議論いただいているところです。
国民の政治に対する信頼を取り戻すため、これらの様々な課題について、党派を超えて議論し、年内に、必要な法整備も含めて、結論をお示しする必要があると考えており、誠心誠意、尽力してまいります。
■<5>憲法改正
憲法改正については、私自身、これまで長らく衆議院憲法審査会の委員を務め、議論に参加してまいりました。国会による発議の実現に向け、今後、衆議院及び参議院に設置された憲法審査会において建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待します。
■<6>結語
石橋湛山内閣の施政方針演説では「常に国家の永遠の運命に思いをいたし、地方的利害や国民の一部の思惑に偏することなく、国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定め、論議を尽くしていくように努めたい」とあります。
外交においても、内政においても、国民の後押しほど大きな力はありません。国民の皆様に信頼を頂けるよう、誠心誠意取り組んでまいります。
国民の皆様、並びに、この場に集う全国民を代表される国会議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。