Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2009年2月号 難民認定について:審判の遅れは….当たり前?

2009年07月06日 | 人権
UNCHRの難民認定を待っている多くの庇護希望者は、安定と健康を求めつつ、長年法律的に無視された状態で生きながらえている。(難民認定に関する2つのシリーズの第1部)


何千人もの庇護希望者が、UNHCRの難民認定を待ちつつ、カクマ難民キャンプにとどまっている。その間彼らはUNHCRの恒久的な保護がない法律的に不安定な状態のまま据え置かれている。多くの庇護希望者は、カクマ難民キャンプで家族を持ち、生活のために苦闘しながら、3~4年後に却下の認定を受けてしまう。この時点で彼らはどうしたら良いのだろうか。

難民認定の遅延で「深く悲しみ失望した」

アイシャ(仮名)は、難民認定が3年以上遅れたために自殺未遂をしたエチオピアの庇護希望者である。「私は3人の子を持つ未亡人です」アイシャはカクマのレポーターのインタビューに電話で答えた。「夫は2004年に反対派グループの首脳部に加担したとして、エチオピア政府に殺されました。私自身も虐待を受け拷問にかけられ、まだ14歳の長女とともにレイプされました」

アイシャと子ども達は、ナイロビのUNHCRから移動許可をもらい、2005年にカクマ・キャンプにたどり着いた。アイシャはUNHCRの事務官から、難民認定に半年か1年かかるといわれた。

「しかし驚いたことに、登録後、3人の子ども達と入れられたテントは、尋常では考えられないような不健康な生活環境でした」とアイシャは話してくれた。

約2年後の2007年に、アイシャは難民認定の前段階のインタビューに呼ばれた。しかし、彼女は正式な認定インタビューを受けることはなかった。

2008年に、彼女はどうなっているか探ろうと、UNHCR現地事務所の職員のところに出向いた。しかし行くたびに2週間後にまた来るようにとか、2週間後に掲示板を見るようにと言われるだけだった。今日まで、認定インタビューに呼ばれたことはない。

きわめて強いストレスと深い失望から、2008年、彼女は自殺を試みた。幸いにも、彼女の落ち込みぶりを見ていた長女に助けられ、一命を取り留めた。

彼女に自殺の動機を聞いてみた。「私のような発言力のない難民に対するUNHCRカクマの難民認定手続きの遅れに不満が募り、落胆してしまいました。私は53歳の未亡人で、れっきとした理由があって祖国を逃げ出し、安全と保護を求めてやってきた弱い立場にあるのに、さらに絶望的な状態に陥っているのです」

アイシャの自殺未遂の後、家族はカクマ難民キャンプを去り、ナイロビに向かった。今年の始め、アイシャの長女が移動の手続きをして一家でナイロビに移ったのだ。ここでも、彼らは不安定なまま生きていかなくてはならない。以後、アイシャはUNHCRの認定インタビューに呼ばれたことは一度もない。彼女の場合、無期限の保留状態になっている。

難民認定の概要

1951年難民の地位に関する条約によると、難民とは、人種、宗教、国籍、特別な社会団体のメンバー又は政治的信条の理由により、迫害を受ける恐れが十分あり、祖国外にいる人となっている。(条項1:A2)

難民認定の手続きの目的は、庇護希望者が国際的難民保護の基準に合致するかどうかを決定することである。

「難民認定は個人の生命や安全に潜在的に深く関わってくる可能性がある」とUNHCR基準による難民認定の標準手続ハンドブック(以下UNHCR難民認定標準手続)に書かれている。難民認定の結果は、個人の保護に対して、UNHCR、庇護政府及び他の関係当事者の義務と責任を決めている。

カクマ難民キャンプに着くと、庇護希望者はUNHCRのオフィスに登録に行く。彼らには当面必要なもの(食糧、避難所、教育、医療など)を利用できる一時的な配給カードが発行される。登録された庇護希望者には事前インタビューがあり、資格検査の行程はここから始まる。この初めのインタビューの後、正式な認定審査インタビューが続く。最初のインタビューで却下された場合、庇護希望者は二番目のインタビューに上告し、アピールをすることができる。

一部の難民は、個人として難民認定審査を受ける必要はない。難民であることが明らかなグループは、大規模な難民行動と認定されるか、共通の条件が実質的に一つの集団にあてはまっている場合に、グループ単位で難民と認定される。カクマ・キャンプでは、南スーダン人とソマリア人難民が、ある時点で明らかな難民と認定され、個人的な認定審査が免除された。

庇護希望者は認定決定の長い遅れに直面する

UNHCRのガイダンスには、難民認定の申請は、できるだけ良い時期に、手際良く行わなければならない、と書かれている。登録された日から、難民認定のインタビューまでの期間は、6か月以上あってはいけない。同時に、難民認定の決定までの期間は、取扱件数やUNHCRのスタッフの状況によって様々ではあるが、どのような出来事があろうとも、一年以上になってはいけない(UNHCR難民認定標準手続)。

しかし、2003年カクマに着いた庇護希望者が認定決定を今なお待ち受けていることは珍しくない。UNHCRは難民認定までの待機期間についての統計を公表していないが、難民達によると一般的な待機年数は3年である。

匿名希望のUNHCR現地事務所の職員によると、今やっている認定インタビューは、2003年から2006年にカクマ・キャンプに到着した人達の分とのことである。

この間、庇護希望者は、UNHCRによる難民地位の承認がないままキャンプに留まることになる。ある者は、家族を持たず到着し、その後、庇護希望者という立場で結婚し、子どもが生まれるケースもある。子ども達は両親の申し立てが未決定のまま育って行く。

タムブエ(仮名)というコンゴ人の庇護希望者は2006年11月3日に入って来て、認定決定を2年半以上待っている。彼は2008年4月23日に最後の認定インタビューを受けているが、まだ認定決定は出ていない。彼は自分の経験を語り、「悲しくてしかたない。難民として受け入れられるには、どの位かかるのか、その間、このキャンプで耐えなければならないと思うと、とても悲しい」と言っている。

UNHCRの匿名希望の職員によれば、難民認定までの期間は様々である。「ケースによるが、大体は6か月か1年あるいはそれ以上であり、その特質によって違ってくる。脆弱の程度、危険性の問題、もっと情報がいる場合、そして、難民人口の大きさなどによる」

けれども、カクマ難民キャンプで4年以上難民認定を待っている難民もいる。ある者は却下され、上告申請をしなければならず、さらに時間がかかる。

UNHCRの職員にこのことを聞くと「インタビューは、特別な事情がない限り先着順にやっている。だれに資格があり誰が該当しないかの決定は、UNHCR独自の手続きで行っている」という答が返ってきた。

キャンプでの暮らしが長引いた末に却下:その次は?

庇護希望者はUNHCRからの決定を待つ間、生活を難民キャンプに委ねざるを得ない。これを見ても、迅速な難民認定決定がいかに緊急課題かがわかる。庇護希望者は難民認定の結果を待つ間、彼らの生活を、しばしば家族ぐるみでキャンプに移している。キャンプで数年間滞在を余儀なくさせられた後に難民認定が却下されると、破滅的な結果になる可能性がある。

UNHCRから最終的に却下された庇護希望者の中には、キャンプを離れ、法的な保護なく非合法でナイロビに住もうとする者もいる。改めて難民認定を申請できるウガンダやタンザニアなどに移る庇護希望者もいる。それでも多くの人達は、配給カードも持たず、サービスも受けられないなかで、キャンプの友人達の助けを得て、カクマ・キャンプに留まることを選択している。

ムランバ(仮名)は2005年にカクマ・キャンプに到着したコンゴ人の庇護希望者で、妻と3人の子どもがいる。彼は2007年10月に認定インタビューを受けたものの、一審が却下されてしまった。彼は上告し、2008年に再びインタビューを受けた。

ムランバは、UNHCR事務所から最終決定が来るまで、カクマ・キャンプに居続けようと思っている。難民認定を待っている間に、妻が女の子を出産。娘は今1才である。

ムランバは、もしまた却下されたら、彼と家族はどうしたら良いか分からないと言う。「私は非常に不愉快で、重圧に絶望的になり、色々なことを考えすぎてしまう。私と同じ日に却下された別の友達がいて、彼は30日の猶予を与えられキャンプからの退出を命じられた。私も、もし同じようなことになれば、どうしたらいいのだろうという思いに苛まされている」

「今でも、mawazo mingi(様々な思い)na pressure mingi(重いプレッシャー)」と彼は続けた。「私は難民として認められないまま4年も居る。これが悩みの種で、狂って逃げ出してしまいそうだ」

何故、何年間も難民キャンプで過ごしている難民を却下するのか、UNHCRのあるプロテクション・ユニットの職員に聞いてみた。「多くの難民は当局者に尊敬されている。彼らは迫害についてさまざまな話をするが、それは、人間精神の勝利の話である。生き延び、耐え抜こうという意志や、自分は尊厳ある人間だと思い続けようという意思を貫き通したことを物語っている」

しかしその匿名希望のUNHCR職員は続ける。「毎日語られるドラマの、もう一つの現実は、あまり愉快なことではない。担当者が原告を信じられない時や、彼あるいは彼女の迫害の恐れが、十分な根拠に基づいていない場合である。彼らの話が難民の定義にそぐわないこともあり、ただ単に環境の変化を求めるだけであったり、迫害の規定に沿わない特定の危害への恐れだったりすることもある。時には、話が大げさに語られ、ただ単に貧困からの回避だったりする。または、でっち上げられた話でありながら、真実が見え隠れしたりするのは、原告が迫害する方の人で、迫害される者ではなかったりするからだ。ただ単に嘘の話ということもある」

UNHCRの職員はこう締めくくる。「本当の難民か虚偽難民かを見極めるのが非常に難しい場合が頻繁にあり、これが課題だ」

結論

UNHCR難民認定標準手続によると、「難民認定の保護機能が有効に働くのは、UNHCR難民認定の手続きの誠実性と公平性次第であり、UNHCR難民認定の決定の質による」(p.1-1)

しかし、RSDの決定を何年も待っている庇護希望者は、この誠実性と公平性が保たれていないと感じている。キャンプに何年も居た後、認定を却下されてしまった人は、特に難しい課題に直面することになる。「UNHCRが保護を求めている難民に対して、どのように対処するかを知ってショックでした」と、難民認定の遅れの為に自殺を図ったアイシャは語った。


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