Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2008年12月号 困難な暮らしを忘れようと麻薬に溺れる若者たち

2009年05月15日 | 健康
【写真】ソマリ市場でミラアを売る女性

若者の間で見られる麻薬乱用は深刻でなかなか解決できない問題である。麻薬が原因で多くの若者が希望も野望も、自己の尊厳までも失っている。年端もいかない10歳の子供が麻薬をやっている、あるいは7歳の子供達がバングを吸っている、といった事例も報告されている。

キャンプの若者の間でいちばん一般的に乱用されている薬物はミラア、バング、アルコールである。ミラアはカト、あるいはガンジャとして知られているが、軽い興奮刺激剤となる草である。葉や茎を剥きその切り口を噛んだり、しばしばチューイング・ガム、ピーナッツ、カルダモン香辛料、ソーダ、コーヒー、水などと一緒に口に入れたりする。主に、ソマリア、エチオピア、東ケニアのミラア耕作地域で栽培される。ミラアはキャンプ内のソマリ・コミュニティでの親睦会でよく使われる。この薬物を噛んだ人によると、コーヒーを飲むとわき起こるあの幸福感と同じ気持ちになるのだという。またこの薬物は「脳のアンバランス」を引き起こすと言う人もいる。0.5kgのミラアの束が400ケニア・シリングで売られている。

バングは、強いタバコまたはフェゲとも呼ばれる幻覚を引き起こす薬物である。多くの若者のバング使用が報告されているが、その入手元は知られておらず、常用者だけがどこで薬物を買えるか知っている。少量の薬物を普通の紙で巻き、捻り、片方の端に火をつけて吸う。

アルコールはビール、蒸留酒、発酵させて作る地元の違法な醸造酒のチャンガー酒などが手に入る。

薬物使用の動機

若者がミラア、バング、強い酒にふけるようになる主な原因は、過酷な生活状況、ストレス、怠惰、コミュニティによる精神的支援の欠如である。若者に言わせると、薬物は一時、困難な生活を忘れさせてくれるそうだ。嘆かわしいことだ。薬物使用はしばしばもっと深刻な人生の危機へとつながっているのだから。

薬物使用は一般的に他の集団からの圧力によって始まる。多くの若者は年上の友人の真似をしてこの行動に走るが、どんな感じになるのか知りたいという単なる好奇心から始める者もいる。驚くのは、多くの若者が両親の前で、両親もいっしょに、アルコールのような薬物に耽っていることだ。

カクマのコミュニティで、何人かの若い男女と薬物使用についてじっくりと話し合った。その際、彼らは薬物が効いている間は怖いもの知らずになると認めていた。19歳の少年の言葉として、こんな報告がある。「数時間ミラアを噛んでいると、どの人間も非常に小さく見えてくる。太った年増の女達とセックスしてやると、俺に感謝するんだ」

薬物を常用しているカクマの若者の中には、薬物が彼らの問題の解決策だと考えている者もいる。しかし、そういう彼らも仲間の多くが薬物乱用で命を失っている事実は受け止めざるをえまい。

薬物使用の結果

若者達の薬物使用の結果は、そのコミュニティの中ではっきり見てとれる。多くの若者が薬物乱用のため学校を退学し、つまらない商売に手を出して薬物を買うお金を自由に稼いでいる。酒を飲むと、意見の違いから若者と大人の間ですぐ喧嘩が起きる。強姦事件の犯人もしばしば薬物の影響下にあったと報告されている。望んでいない妊娠のため、多くの少女がやむを得ず退学していく。薬物使用の結果として、売春や無責任な性行動に走る若者が出てくる。

21歳の女性が私に話してくれた。「ある晩、ブルズアイ・リゾートのディスコに行ったら、ボーイフレンドに、飲めなくなるまでフェゲやビールを勧められた。次の朝、気が付いたら、カクマ・タウンのワンルーム・ホテルで寝ていた。3ヶ月後には、HIV検査が陽性と出て、今はHIVと共に生きているけど、生活は前より楽になった」

このような事態に何がなされているのだろうか

キャンプの指導者や支援団体は青少年の薬物使用を抑制する計画に着手している。国際救援委員会薬物濫用プログラム、国立ケニア教会評議会,ルーテル世界連盟青少年文化部主催のプログラムや活動があり、若者を集めて問題について話し合い、どの解決法を選んだらよいか議論させている。

これらの問題の解決は可能である。例えば、ルーテル世界連盟青少年文化部は青少年クラブを通して、友達同士の相談・助言を奨励している。クラブのメンバーは、薬物常用の友人も常用していない友人も共にスポーツ、詩、音楽の活動に誘う。その過程で、若者の中には自分も受け入れられ世話をされているのだと感じ、行動が変わる者が出てくる。しかし果てしなく続く社会的、経済的困難のために、行動をすっかり変えられない若者もいる。これとは別に、国際救援委員会薬物濫用ユニットが、薬物使用の結果を自覚させようと、地域の研修会や若者の集会を開いている。

警察もまた違法な薬物使用の阻止にい取り組んでいる。だが今のところ、薬物濫用は阻止できておらず、キャンプでのチャンガー酒という違法な酒の醸造を中止させる事にも成功していない。

この社会的問題を撲滅するには、大きな努力を継続しなければならないのは明らかである。しかし国際救援委員会薬物濫用ユニットは予算削減のため2009年には閉鎖される。その後、他の団体が薬物濫用に対する戦いを続けるかどうかは確かでない。

現在、若者の薬物使用が悲惨な状況であるにもかかわらず、防止キャンペーンは支援団体やコミュニティの中で勢いを失ったように見える。厳しい生活状況と奮闘している若者に、薬物使用に代わる現実的で有益なものを提供するために、良い対策を取らなければならない。そういう活動は、多くの若者が未来の目標を達成するためにも、カクマに前向きで創造的な青少年文化を築くためにも、役立つことだろう。



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