ジュネーブのUNHCR高等弁務官、アントニオ・グテーレス氏の2日間にわたる訪問は、治安、食料・燃料・薪の配給、難民認定(RSD)、健康管理、キャンプの灯火など、手つかずの多くの課題に不満をつのらせている難民に大いなる期待を抱かせた。
2010年9月7日から8日にかけて、UNHCRの高等弁務官、アントニオ・グテーレス氏が、ケニア北西部のカクマ難民キャンプを訪れた。滞在中、グテーレス氏はすべての政府機関と会い、夜はコミュニティーのリーダーとミーティングを行った。リーダー達はコミュニティーの様々な問題を報告した。
現在、キャンプには78,246人の難民が収容されている(9月末のUNHCRからの報告による)。出身国はアフリカ大陸の14カ国。権力闘争や民主主義の欠如、集団的市民権乱用などによって引き起こされた祖国の内紛から逃れてきた人達だ。ソマリア人がカクマの人口の最大多数を占めている。続いて多いのはスーダン人。ダルフールのスーダン人とソマリア人は、明確に難民とみなされている。他の国籍の難民は難民認定審査(RSD)を経て、難民と認定される。
キャンプで生まれた難民はすでに18歳になっているが、彼らは依然として市民権の問題に悩まされている。ケニアの市民権が与えられず、いまだに両親と同じ国籍保持者となっているのだ。その結果、仕事や医療、教育などケニア市民なら受けられるはずの権利を受けようとしても、必要書類を提出することができない。
高等弁務官は、新しくダダーブから移転してきたソマリア難民によるソマリアの伝統舞踊で迎えられた。伝統文化の披露の後、ソマリア人の母親がメッセージを発表した。それはキャンプの難民共通のメッセージだった。「私達は戦争と反乱のために母国を離れました。そして治安の悪さ、うだるような太陽、食料配給の貧弱さや少なさに直面しています。私達はあなたの助けを必要としています」と、高等弁務官に訴えた。高等弁務官の重要な訪問先は、EDP-Portugal(Energie De Portugal、ポルトガル・エネルギー開発)だった。午後9時頃、カクマタウンに案内され、そこで10本の街燈を見学した。UNHCRのEDP-ポルトガル・カクマの担当者、マージ・ジョージによれば「太陽光照明のプロジェクトはカクマではじまった。この構想がまとまれば、他の難民キャンプでも実施を決断できる」そうだ。
この計画は、太陽光パネルを用いて難民キャンプを照明し、キャンプの照明ニーズに応えようというものである。すでに照明は難民キャンプから数メートル離れた道路に設置されている。難民は街燈がもっと広範囲に設置されることを切に望んでいる。照明があれば、キャンプの治安維持に役立つと信じているからだ。ルワンダ・スーダンのヌビア人は「キャンプに一晩中、明かりがあるのは、とてもいい。特に拳銃を持った男が難民を襲い殺している地域ではありがたい」と言っている。
ここ数年、キャンプでは武装強盗に襲われ難民が命を奪われる事件が頻発している。難民達は明かりを灯せば、このような強盗事件が抑制され、治安維持につながるのではないかと思っている。キャンプに街燈がいつ設置されるのか、街燈はどのくらいの時間点灯できるのかはわからない。この計画に関与している難民によれば、準備はほぼ終わっているそうだ。しかしコミュニティーはこの計画がはじまると損害も発生するのではないかと懸念している。
キャンプの難民達によると、街燈の設置場所をもっと増やすために、多くの難民の店が取り壊しのターゲットになっているという。ターゲットになった建物にはすでに当局によって赤と緑の(X)印を記したラベルがつけられた。10万から100万ケニアシリング相当の店が、取り壊しの対象としてマークされている。しかし店の所有者には何の対価も支払われないし、誰もこのプロジェクトに関与することはできない。そういうわけで、このプロジェクトが難民から広く支持されるかどうか懸念される。「もちろん、我々は街灯を必要としています。しかしキャンプで長年すごしてきた我々の労苦が無駄になるなら、今のままにしておいてほしい」と、コンピューター研修センターの難民指導員はKANEREに訴えた。
太陽光によるザ・サン・オーケー・ クッカーは、料理をはじめ、道路や家庭の照明、事務所への電力供給など、多彩な働きをする。特に女性の難民は、自分の家に照明がつけば、大きな恩恵を受けるだろう。家庭内で生じているレイや暴力などの虐待や、キャンプ内や周辺で薪を集めざるを得ない現状が、改善されるだろう。
アントニオ・グテーレス氏は難民コミュニティーのリーダー達との面談で、キャンプの治安改善のため、ケニア警察一般サービス隊(GSU)の警察官を増員することを約束した。同時に中学を一校増やすことも約束した。しかしキャンプで10年以上苦しみぬいている難民の長期収容についての質問には答えなかった。また、この地におけるUNHCRの保護サービスや現地での意思決定組織の活動に関しては、何も明言しなかった。
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