理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

子どもの個性と得意を伸ばしたい

2022-06-08 12:59:59 | 育児

このブログを書き始めた頃,小学生だった息子は今や中学生となりました。

問題が山積みだった息子は,就学前,小学校,中学校とそれぞれ違った成長を遂げ,なんとなく将来に希望も見えてきたこのごろです。

 

いろんな問題について,一つひとつ取り組み,解決してきたことはこのブログでも紹介してきましたが,どうしてもまだ解決していない,というか自分だけでは解決できない課題があります。

 

それは,息子の優れたところを評価できる人が少ない,という点です。

 

息子が発達の問題を他の人から指摘される3歳半の前から,息子が他の子と違うところがあることには気づいていました。

 

興味のあることへののめり込み方,ほかに気を取られない集中力,強いこだわり。

飛行機のおもちゃを空港そっくりにきっちり並べるところは,見ていて感心するほどでした。(「消えたこだわり」参照)

 

ただこういった息子の特性を私は「すごい」と思っていたのに,周りはそうは思っていませんでした。

 

保育園の先生から見たら,息子は自分のやりたいことに集中しすぎて集団行動についてこられない問題児です。

発達相談で飛行機のおもちゃ並べのことを話すと,自閉症児に多いあれね,と問題行動のように受け止められました。

 

保育園の面談でも,発達相談でも,私が息子のすごいと思うところをいくら話しても,誰も関心を示さず,息子の問題はあれでこれで,それに対してこうしなさい,ああしなさいと言われるだけでした。

 

息子に問題が多くて,周りがみんな困っていて,親としてそれに対策をしなければいけないのは理解できます。

 

でも,その問題をすべて解決できなければ,いいところを誰も評価してくれないのでしょうか!?

 

これはうちの子どもに限った問題ではありません。

 

私の周りにも同じように悩んでいる友人が多くいます。

 

友人たちは,うちのようにはっきりと診断されているわけではありませんが,子どもが保育園や幼稚園,学校など社会生活でうまくいかないことがあって,いろいろと悩んでいます。

 

その子たちにも,私から見たらみんな,いいところ,すごいところがあります。

でも,周りは誰も褒めてくれません。

親自身も,問題の方が大きく見え,何かしなければと悩んだり焦っていたりして,子どものいいところを認め,伸ばす余裕がないのが実情です。

 

 

私は息子にはいつもこう言い聞かせています。

「あなたの能力は特殊能力,スタンド能力みたいなもの。大人になるまでわかる人が少ないから評価してくれる人はあまりいない。でも大人になったら必ず活きてくる」

 

「でも小中高は数字でしか人の能力がわからない戦闘力の世界。あなたには辛い世界だけど,なんとか最低限の戦闘力を得て乗り切ろう」

 

ジョジョもドラゴンボールも大好きな息子はこの言葉を理解して,幸いにも前向きに生きてくれています。

 

でも,この言葉は周りの子どもにはなかなか届かないし,やはり同じような悩みを抱えている私の知らない子どもには届けられません。

 

これをどうしたら解決できるのか。

 

長年考え続けていますが,まだ答えははっきりと出ていません。

 

でも,何もしないでいるより,できることから始めていこうと,

同じ志をもった有志とともに,新しい事業を始めることにしました。

 

これについてはまたどこかで報告したいと思います。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中学生の浅知恵に理系父母が徹底抗戦2

2022-02-19 15:21:53 | 育児

ご無沙汰しております。

山のような仕事の締切地獄をなんとか終わらせ,久しぶりの更新です。

 

今日は前回に続き,息子と理系父母の戦いについて書こうと思います。

 

うちでは数年前からAmazonのAIスピーカーのEchoを介して遠方に住む祖父に息子の勉強をみてもらっています(「電子母の進化」「電子母とリアル母」参照)。

 

オンラインでの勉強は,自宅でできてメリットも大きいのですが,デメリットがないわけではありません。

相手が目の前にいないのをいいことに,中学生になって妙に浅知恵をつけた息子が,カメラから見えないところでゲームをこっそりやったり関係ない本を読んだりするようになりました。

 

勉強を教える側の祖父からすれば,直接見えはしないものの,話しかけても息子が上の空でどこかおかしいのはわかります。それを本人に指摘しても,「聞いている!」「何もしてない!」など逆ギレして事態が改善しません。

 

ここでの問題は,祖父は問題に気づけるのに証拠を押さえられないがために息子が言い逃れできてしまう,という点です。

 

そこで夫・理系父がEchoに簡単な細工をしました。

Echo showのカメラにスマホなどにつける広角レンズアダプターをとりつけて,広い範囲がカメラに映るようにしたのです。


Kenko Tokinaの「ケンコー・トキナー SNSマスターワイドマクロ」というのを使用しました。ネットで2000円くらいで購入できます。

 

3Mの両面テープで無理やり貼り付けました。

さらに手元が見えやすいようにブックエンドで角度をつけます。

 

するとこんな感じでノートを広げている部分が見やすくなりました(座っているのは理系母)。

 

注:うちはEcho show 8の第1世代につけました。第2世代はすでに広角レンズがついているので,かなり広範囲が見えます。

 

 

もちろん,これで死角がなくなったわけではありませんが,ゲーム類を隠す場所は減りました。

そこに,さらに理系母が追い打ちをかけます。

 

人間の言葉と態度に対する人の受け止め方に関して,心理学者アルバート・メラビアンが見出した「メラビアンの法則」。

Wikiによれば「感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について,人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと,話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった」というデータ。

そのグラフを印刷して息子に突き出し,ネチネチ説教をします。

「人はね,人の言葉の内容よりも見た目の印象とか声のトーンとかで判断されるの。だからH(息子)がいくら“聞いている”って言ってもその見た目の態度と話し方でそう思われないことがあってね,本人がどう言おうとも人にそう思われたらそれでおしまいなんだよ……(具体例がネチネチ続く)」

 

 

ただ説教をするのでなく,何かとデータとエビデンスを入れてくる,厄介な理系母。息子に反論の余地を与えません。

 

でも,私の個人的な解釈ではなくて世間一般のルールだと伝えたほうが,納得してもらえるような気がしています。

 

 

で,この2つの策で問題がまったくなくなった,ということはないのですが,明らかに最初のようなやりとりは激減しました。

 

対策が効いたのか,面倒な理系父母に抗うのを諦めたのかはよくわかりません。

いずれにせよEcho showを介した祖父との遠距離勉強はよく続き,勉強時間も着々と増えています。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中学生の浅知恵に理系父母が徹底抗戦1

2021-12-05 16:14:44 | 育児

ご無沙汰しております。理系母です。

 

このブログを始めた頃,小学生だった息子も中学生になりました。そして成長するにつれて余計な“知恵”をつけてきて,あの手この手で親の目から逃れてゲームをしたり,屁理屈を言って親を困らせるようになってきています。

 

昔はある意味,素直すぎて人の目から逃れて何かすることなんてとても考えられない子だっただけに,ずいぶん成長したもんだと感心しつつも,対策を考えます。

 

ところで私は研究職が長く,「理系母」と名乗っていますが,夫も実は生命科学系の研究職に就いています。そして二人共,テーマは違えど研究開発をしているという,ちょっと変わった家庭です。

研究開発は基本,できないことをできるようにする方法を考えるのが仕事なので,家の中のことでも,何か問題があれば徹底的に原因や要因を分析し,一つ一つ解決していくというスタンスをとってしまうところがあります。職業病でしょうか。

 

とはいえ自分たちも仕事が忙しく,子どものケアや問題対策にあたるには手が足りないので,AIスピーカーや遠方の親(じじ)の力を借りています(過去記事:「電子」,「電子母の進」,「電子母とリアル母」を参照)。

 

ちなみにAIスピーカーに関しては,3LDKのマンションにAmazonのEchoシリーズとGoogleのNestシリーズを各5台置いて,家の中でどこにいても使えるようにしています。

これらがあると,AIスピーカーに「タイマー○分」とか「○時にアラーム」と言うだけでタイマーやアラームを設定できるので,子どもにゲームの時間の終わりや勉強の開始時間を簡単に通知できるようになりました。

AIスピーカー導入前はタイマーを用意して設定していたのですが,タイマーを何個買ってもすぐにどこかにやってしまうし,タイマーが見つからなくてタイマーをセットできないという問題があったので,この最初のハードルがなくなっただけでもすごく楽になりました。

 

しかし,家中でゲーム終了を意味するアラーム音が鳴り響いたところでゲームをすぐにやめてくれる息子ではありません。

「もう時間だよ」と促したところで「あと少しだから…」と言って延々とゲームを続けようとします。これに対して無理やりゲームを取り上げると逆ギレして次の行動に移れず…といった問題も。

私はこれに対し,研究で重要な「記録を取る」という行為で対抗しました。

私は常にApple Watchを身につけていて,ストップウォッチの機能がすぐに使えるような状態にあります。

スピーカーのアラーム音を無視して息子がゲームを続けようとする際は,おもむろにAppleWatchをつけている腕を出し,

「母さんは忘れっぽいんでね,忠告を無視された時間は記録しておくから」と言ってストップウォッチのカウントアップを開始します。

そして続けざまに

「母さんは恨みっぽいんでね,次に H(息子)がゲームしたいからロック解除してって頼んできても,今,無視された時間と同じ時間無視するからね」,と淡々と説明します。

大体の場合,これで数分内に「ごめんなさい〜」と言ってゲームをやめてくれます。

 

またうちでは,ほかの問題も記録しやすいように,Googleのスピーカーと「IFTTT」というアプリを連携*させて,音声メモを記録できるように夫・理系父が設定してくれました。

これは「OK Google (息子の名前),〇〇時から宿題やると約束した」などのように,トリガーとなる言葉(ここでは息子の名前)を設定しておくと,それ以降の言葉がメモとして他のSNSの特定チャンネル(うちではSlackを使用)に投稿されるような仕組みです。これによって,手を離せない状態でもしゃべるだけでメモができ,しかもそれを家庭内で共有できるので,夫も遠方のじじばばも即時に情報を知ることができます。

 

ただこんなことも毎回くり返すと面倒なので,息子の使うSWITCHやタブレット,スマホのWiFiが決まった時間しか使えないように夫が設定してくれました。

これは時間制限機能のついたWiFiルーターを使うことで可能になります(使う端末ごとに設定できるので,親のスマホやPCは1日中アクセスできるように設定も可)。

これによって,例えば21時になるとWiFiがブチッと切れてネットに繋がらなくなります。

これが不思議なもので,親が注意してWiFiや端末の電源を切ると子どもは怒るのに,予め設定しておいて自動的に切れるとすんなり納得して諦めるのです。

ゲームを開始するにも,やるべきこと(食事や入浴,宿題,明日の学校の準備など)を終わらせた上で親がロック解除をしないとできないような仕組みにしているので,息子もWiFiが使えるうちにゲーム時間をかせごうと,やることを必死で終わらせるようになってきました。

 

なお,夫が息子にいつも言うセリフは「WiFiにひれ伏すがいい」です。

 

*追記:IFTTTの連携はAmazonのEchoでもできるようです。

 

つづく


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電子母とリアル母

2021-07-07 17:31:03 | 育児

電子母の進化」の続き

 

息子が小学5年生の3学期末から6年生の1学期にかけて,コロナ休校がありました。

学校の休みは息子にとっては嬉しいものでも,母にとっては地獄。

息子がもてあましている暇を,フルタイムの仕事をこなしながらどうコントロールしたものか。その闘いは突然に始まりました。

 

ただ幸いなことに,AmazonのAIスピーカーEchoを介してじじ(私の義父)による宿題の見守りを続けていたおかげで,サポート体制の下地は整っていました。

じじも協力を快諾してくれました。

問題は息子です。

天から降ってきたような自由な時間。その誘惑を退けて勉強しよう!とはならないのが子どもの心理。家で学校と同じだけの勉強をこなすことは困難なので,少しでも自ら勉強に取り組む姿勢をつけることを最初の目標としました。

 

宿題以外で最初に取り組んだのは社会の参考書の音読です。

社会を選んだのは,社会のテストが他と比べて悪い,というか,その間違え方から判断して社会に出てくる語彙の覚えが悪く,語の使い方がめちゃくちゃだったからです。

本人の興味のなさにも一因はありますが,うちには新聞もテレビもなく,ニュースは私も夫もそれぞれがネットやラジオで個別に確認しているため,時事ネタを息子が耳にする機会がなかったことも影響していたと思います。

そこで,用語に慣れるという意味で,参考書を音読するのをじじに聞いてもらうことにしました。参考書はGakkenの「?に答える小学社会」を用いました。

 

これはテーマとしては非常によかったのですが,息子の滑舌が悪かったり読み間違いがあったりして,それをじじが指摘するたびにけんかに発展(というか息子が怒り出す)してなかなかうまくいきません。息子は指摘された間違いをうまく受け入れられず,そんなこと言っていない!と言い張ったり(言ったつもりはなくても,そう聞こえてしまう場合もあるよね,って諭しても受け入れ不可),自分で勝手に聞き間違えておいて怒られた!と被害者的に受け止めたりと,困難続きでした。

しかしながら,そういった争いの全部が全部,息子に否があるというわけではなく,例えばネット通話の音声品質の問題だったりとか,じじ側の思い違いというのもなくはありません。

 

これらの問題は,本当に些細なことですが,そもそも勉強なんてしたくないと思っている子どもにとっては非常に大きな障壁となります。家庭勉強を続けてもらうためにはそういった些細なことを一つ一つ解決していくほかありません。

 

ネット通話の音声品質に関しては,夫がネット回線などを調べて改善してくれました(前記事「電子母の進化」を参照。

じじの方の誤解をなくす,というか息子が文章をきれいに読み上げられなくても正しい文章をじじが確認できるように,同じ参考書をネットで注文してじじに送りました(欲しい本が注文翌日に必要な人に届くって,すばらしい時代ですよね!)

 

こうして本当に少しずつ問題を改善し,最初は10〜20分だった勉強時間が,1学期が終わるには30分くらいに増えていきました。

 

最初は勉強内容も参考書の読み上げだけでしたが,読売KODOMO新聞の音読も始めました。これも,同じものがじじの家に届くように,こちらから手配しました。

 

受験勉強開始!

そして2学期に入る頃,息子が近所の中高一貫校を受験したいというので,急遽,受験勉強を開始することにしました。見学に行った際に見た食堂でお昼ごはんを食べたい!という程度の理由でしたが,きっかけは何であれやる気になったことが大事ですので,勉強量を増やすことにしました。

受験する!とはいっても基礎学力が十分ではなかったので,4教科の総合学習を進めることにしました。使った教材は学研教育出版の「中学入学準備 小学の総復習全科 英語つき」です。

これも息子用とじじ用,それぞれに用意しました。

 

私は毎朝,宿題としてどのページをやるか(1日1〜2単元くらい),付箋で指定したテキストを息子に渡し,じじにはそのページを連絡。息子は放課後等デイサービスもしくは帰宅後にその課題をやり,じじと夜,決まった時間に答え合わせ。その後,じじはその日の正答率や勉強態度をこちらに報告,私はじじの報告とテキストの実物を見て息子の理解度をチェックしつつ次の課題を出す,という流れを繰り返しました。

 

この指示出しが大変な作業で,毎日4時起きで対応しました。

しかし,息子もそれ以上にがんばり,2学期から3学期の始めまで,毎日1時間以上勉強を続け,先の問題集も4回終わらせて受験に挑みました。

受験の結果は残念ながら不合格でしたが,本人にとって大きな成長になったと思います。

 

また,母としても,塾に行かずに家で勉強してくれたおかげで仕事を続けることができたので本当によかったです(息子は過集中タイプで周囲をちゃんと見ないので,送迎なしには塾に通わせられなかったので)。

 

このような勉強スタイルを確立できたのは,電子母=Echoというデバイスがあったからこそです。でもその電子デバイスで人間をコントロールするには,まだまだ人間の補助が要ります。電子デバイスがもたらす革新的な変化に比べたら,私のやっていることは本当に地味で,息子の前に転がった小石を一つ一つ取り除くような作業です。ただその単純な除去作業が息子を歩き出させる結果につながったのかな,と自分では思っています。

 

電子母ありがとう。リアル母もがんばりました。

もちろん,じじにも大大大感謝です。

 

 

 

次回は,この勉強で,中学生になった息子の浅知恵に対抗する小技を紹介します。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電子母の進化

2021-07-05 14:34:33 | 育児

前回の記事「電子母」では,母の仕事を電子デバイス(AmazonのEcho)に肩代わりしてもらう方法について紹介しましたが,それでもなお手が足りないことはいくらでもあります。

今回は電子デバイスをさらに活用した対策を紹介します。

************************************************************************************************************

Echoのリマインダー機能を導入してからというもの,私が息子に口やかましくあれこれ注意することは圧倒的に減りました。

しかし,呼びかけはあくまで機械から息子への一方通行なため,息子の行動を促すことには有効でも,してほしくない行動の抑止力としては働きません。宿題から逃れようとする息子を止めるのに,リマインダーは無力でした。

Echoの導入をしたのは小学校4年生で,息子の宿題の量も増えていました。これを息子が自ら進んでやるはずもなく,宿題をやりとげるのに見守り,というか見張りがいります。

とはいえ,私が仕事から帰ってくる時間は18時〜19時すぎ,そこから夕食を準備して食べさせて片付けて……となると,家事をこなすだけで精一杯。手が回りません。

さらに,息子には7歳離れた幼い弟がいて,この2人をどうにかしつつ,家事を終わらせるのは至難な技です。

息子を机に座らせた後に弟に別室で動画を見させて夕食の片付けをしていると,息子がいつの間にか席を立って,弟の幼児向け番組を覗き見しているではありませんか。注意して何度席に戻しても同じことの繰り返し。

息子を机につなぎとめておいてくれる人がほしい……,そこで思いついたのがじじ(義父)の存在です。

 

じじの家は飛行機に乗らなければ行けないほど遠く,ちょっと家に来て息子を見張ってくださいとは簡単には言えません。そこで再びEchoの力を借りることにしました。

 

Echoはリマインダー機能のほかに,他のAIスピーカーにはない優れた機能がついていました。「呼びかけ」という機能です。これは,Echo同士で顔を見ながら対話ができるというもので,同一アカウントであれば片方からの呼びかけで自動的に接続できる,つまり相手が応答するといったリアクションをとらなくても向こうの様子を見ることができるのです。

 

Echoを息子の机に1台,じじの家に1台設置する必要があるので最初は投資がいりますが,この問題を解決できるならと早速導入することにしました。じじの家のEchoの設定は,夫が直接出向いて行いました。家にEchoを導入してから2カ月後,小4の3学期から遠隔の見張りを開始しました。

最初はとにかく机の前に生きた目を置くことが目的で,勉強があまりはかどっていなさそうのときに,適宜声掛けをしてもらうようにしました。

 

この作戦は,家の中に手が増え,じじにとっても孫の顔を見られる機会が増えて一石二鳥!と完璧に思えたのですが,そんなにすべてが順調に運んだわけではありませんでした。

 

宿題の量は,低学年から比べたら増えたと言っても,集中すれば10〜20分で終わるような量。それがすぐに集中して時間通り終わることもあれば,気乗りせずまったく進まないこともあり。それに対し,じじが声掛けをしても反発してけんかになったり,と,日によってできたりできなかったりの繰り返しになりました。

 

オンラインでの見守りは,対面式と異なり,ネット回線や機械の問題で音がとぎれとぎれになってしまうこともマイナスに働きました。

オンラインでの対話は,互いに相手の話を聞く意思のある者同士が話せば,たとえ聞き取りにくい場面が合っても成立しますが,息子はもともと人の話を聞くのが苦手。日本語の理解も柔軟性にかけるため,一つの言葉だけ聞きかじって勝手な解釈をして怒り出したりと,息子の性格上,難しいところがありました。

 

しかしながら,うちにはほかの選択肢がなく,Echoを介した見守りにかけることにしました。夫は,けんかの原因となりがちな音声品質の低さを改善するために,ネット回線をチェックしてくれました。調べてみたら,家のネットが遅かったのは電話回線の差込口(モジュラーコンセント)とモデムをつないでいたモデムケーブルが悪かったらしく,新しいものに取り替えたら通信速度が上がり,音声品質も安定しました(ケーブル,通信速度のキーワード検索でいろいろ情報がでてきます)。夫実家のケーブルも,夫が取り替えに行きました。

私の方も,けんかがあったときにじじと本人の双方に聞き取りを行うなどして,対策を考えました。

 

こうして何とか宿題の見守りを軌道に乗せることができました。

こうなるとEchoは電子母ではなく電子じじとでも呼ぶべきでしょうか。

機械の中身が実は人間,という仕事を「メカニカルターク」と呼ぶそうです。

Echoは進化して,メカニカルタークをこなすようになりました。

 

 

こうして1年以上が経過した頃,コロナの影響で学校が休校になり,このメカニカルタークが大活躍!となりそうですが,そうそう簡単にはいきませんでした。

自主勉強やその他の勉強が定着するまでには,かなりの工夫と労力がいりました。次回はその詳細をお伝えします。

 

つづく

*2021年7月6日,一部修正


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電子母

2021-05-12 17:20:10 | 育児

子どもを育てていると何かと忙しいですよね。

 

母子手帳には「家族や周囲の協力を得ましょう」と書かれていますが,協力者がいる状況だったらこんなに困っていないと思ったことはありませんか?

 

手が回らない,もっと手が欲しい,と思っても手は増えないし,自分でできることと動ける時間には限界があります。そこで,母のタスクの一部を電子デバイスに肩代わりしてもらうことにしました。今回はその一部を紹介します。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

息子Hは,勉強やテストはほどほどにできるのですが,自分の管理,とりわけ時間の管理が苦手です。時計を見ながら決まった時間までにお風呂に入って歯磨きをして寝るとか,決まった時間までに学校の準備をして決まった時間に家を出る,ということができません。どんな行動も親の声かけが必要です。

 

これが本当に骨の折れる仕事で,ぶっちゃけ学校に持って行く物の準備なんかは私が自分でやってしまった方が早いのですが,子どもの成長のためにも何とか自分でできるようになってもらうことが重要で,その手助けをしなくてはならないのが難しいところです。あれやって,次はこれやって,と息子を見張りつつ指示を出す。しかもその指示を一回で聞いてくれないので,何度も何度も何度も繰り返さなければなりません。「何で私がこんなこと何度も言わなきゃいけないのか……」と思わずため息がでます。

 

多くの場合,「何で私がこんなこと……」というときは「子供が自分でできればこんな苦労しないですむのに」といったことを意味していると思います。しかし息子の場合,その「自分でできない」というところが障害なので,そこを嘆いても問題は解決しません。ただ,「こんなことをする」のは「私」でなくてもいいはず。「私」に代わって息子のペースメイキングをしてくれる人がほかに家にいればいいのですが,夫(同じく理系研究職)は帰りが遅いので,やはり頼める「人」はいません。そこで夫が「人」の代わりに「機械」を用意してくれました。AmazonのAIスピーカー「Echo」です。(写真は旧型)

AIスピーカーはGoogleなど他社製品もありますが, Echoには決まった時間に任意の文章を読み上げられるリマインド機能があり,Echoに声かけを肩代わりしてもらうことにしました。導入は今から2年以上前,息子が小学4年生のときです。

お風呂,お風呂上がりに保湿剤を塗る,布団に入る,学校に行く,など1日の決まったイベントが,決まった時間にスピーカーから音声で流れるよう,夫が設定してくれました(設定はAlexaアプリで行います)。

この電子母による声かけの最大の効果は,薬の飲み忘れが減ったことです。息子は花粉症,ハウスダストとアレルギー持ちで,通年,抗アレルギー剤を服用しています。これを飲み忘れると,ずっと目をこすっていたりして集中できず,生活の質が落ちまくって大変です。なのに息子は自分で服用することを覚えていられないし,私もチェックしきれず,飲み忘れが半分くらいありました(薬ケースや罰金×ご褒美制度など手を尽くしてもその精度でした……)。しかし,このリマインダーの導入後,飲み忘れは1割くらいまでに減りました。

ただ,電子デバイスも完璧ではありません。時間も読み上げ内容も完璧で間違えることはありませんが,毎日同じように繰り返されると音声に慣れてしまい,スルーされることが増えます。なので電子母にすべてを任す,ということはできないのですが,それでもやはり存在価値は大です。というのも,息子にスルーされても,私自身のリマインダーにもなりますし,私が自分の口で何度も注意していたことの最初の1回,2回,をEchoがやってくれると,そのあとに私が注意する回数を減らせる効果があり,私も心に余裕を持って息子に声かけをすることができるようになりました。

注意の回数と親の怒りは相関があると私は考えており,注意する回数が増えれば増えるほど注意する側の怒りレベルも上がり,親子関係が悪化しやすくなります。

(下記図参照)

なかなか言うことを聞かない子どもに対する有効な指示法として,端的な指示を淡々と繰り返す「ブロークン・レコード(壊れたレコード)」という方法があるそうです。

親が怒りで壊れる前に,壊れた機械の役割は優秀な電子デバイスに任せた方がよろしいかと。

 

電子母の進化」につづく

 

追記:

Googleのスピーカーやディスプレイでも,1日のスケジュールにあわせて通知ができる「ファミリーベル」という機能が2021年からできたそうです。

https://support.google.com/assistant/answer/10011399?hl=ja&co=GENIE.Platform%3DAndroid


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする