理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

電子母とリアル母

2021-07-07 17:31:03 | 育児

電子母の進化」の続き

 

息子が小学5年生の3学期末から6年生の1学期にかけて,コロナ休校がありました。

学校の休みは息子にとっては嬉しいものでも,母にとっては地獄。

息子がもてあましている暇を,フルタイムの仕事をこなしながらどうコントロールしたものか。その闘いは突然に始まりました。

 

ただ幸いなことに,AmazonのAIスピーカーEchoを介してじじ(私の義父)による宿題の見守りを続けていたおかげで,サポート体制の下地は整っていました。

じじも協力を快諾してくれました。

問題は息子です。

天から降ってきたような自由な時間。その誘惑を退けて勉強しよう!とはならないのが子どもの心理。家で学校と同じだけの勉強をこなすことは困難なので,少しでも自ら勉強に取り組む姿勢をつけることを最初の目標としました。

 

宿題以外で最初に取り組んだのは社会の参考書の音読です。

社会を選んだのは,社会のテストが他と比べて悪い,というか,その間違え方から判断して社会に出てくる語彙の覚えが悪く,語の使い方がめちゃくちゃだったからです。

本人の興味のなさにも一因はありますが,うちには新聞もテレビもなく,ニュースは私も夫もそれぞれがネットやラジオで個別に確認しているため,時事ネタを息子が耳にする機会がなかったことも影響していたと思います。

そこで,用語に慣れるという意味で,参考書を音読するのをじじに聞いてもらうことにしました。参考書はGakkenの「?に答える小学社会」を用いました。

 

これはテーマとしては非常によかったのですが,息子の滑舌が悪かったり読み間違いがあったりして,それをじじが指摘するたびにけんかに発展(というか息子が怒り出す)してなかなかうまくいきません。息子は指摘された間違いをうまく受け入れられず,そんなこと言っていない!と言い張ったり(言ったつもりはなくても,そう聞こえてしまう場合もあるよね,って諭しても受け入れ不可),自分で勝手に聞き間違えておいて怒られた!と被害者的に受け止めたりと,困難続きでした。

しかしながら,そういった争いの全部が全部,息子に否があるというわけではなく,例えばネット通話の音声品質の問題だったりとか,じじ側の思い違いというのもなくはありません。

 

これらの問題は,本当に些細なことですが,そもそも勉強なんてしたくないと思っている子どもにとっては非常に大きな障壁となります。家庭勉強を続けてもらうためにはそういった些細なことを一つ一つ解決していくほかありません。

 

ネット通話の音声品質に関しては,夫がネット回線などを調べて改善してくれました(前記事「電子母の進化」を参照。

じじの方の誤解をなくす,というか息子が文章をきれいに読み上げられなくても正しい文章をじじが確認できるように,同じ参考書をネットで注文してじじに送りました(欲しい本が注文翌日に必要な人に届くって,すばらしい時代ですよね!)

 

こうして本当に少しずつ問題を改善し,最初は10〜20分だった勉強時間が,1学期が終わるには30分くらいに増えていきました。

 

最初は勉強内容も参考書の読み上げだけでしたが,読売KODOMO新聞の音読も始めました。これも,同じものがじじの家に届くように,こちらから手配しました。

 

受験勉強開始!

そして2学期に入る頃,息子が近所の中高一貫校を受験したいというので,急遽,受験勉強を開始することにしました。見学に行った際に見た食堂でお昼ごはんを食べたい!という程度の理由でしたが,きっかけは何であれやる気になったことが大事ですので,勉強量を増やすことにしました。

受験する!とはいっても基礎学力が十分ではなかったので,4教科の総合学習を進めることにしました。使った教材は学研教育出版の「中学入学準備 小学の総復習全科 英語つき」です。

これも息子用とじじ用,それぞれに用意しました。

 

私は毎朝,宿題としてどのページをやるか(1日1〜2単元くらい),付箋で指定したテキストを息子に渡し,じじにはそのページを連絡。息子は放課後等デイサービスもしくは帰宅後にその課題をやり,じじと夜,決まった時間に答え合わせ。その後,じじはその日の正答率や勉強態度をこちらに報告,私はじじの報告とテキストの実物を見て息子の理解度をチェックしつつ次の課題を出す,という流れを繰り返しました。

 

この指示出しが大変な作業で,毎日4時起きで対応しました。

しかし,息子もそれ以上にがんばり,2学期から3学期の始めまで,毎日1時間以上勉強を続け,先の問題集も4回終わらせて受験に挑みました。

受験の結果は残念ながら不合格でしたが,本人にとって大きな成長になったと思います。

 

また,母としても,塾に行かずに家で勉強してくれたおかげで仕事を続けることができたので本当によかったです(息子は過集中タイプで周囲をちゃんと見ないので,送迎なしには塾に通わせられなかったので)。

 

このような勉強スタイルを確立できたのは,電子母=Echoというデバイスがあったからこそです。でもその電子デバイスで人間をコントロールするには,まだまだ人間の補助が要ります。電子デバイスがもたらす革新的な変化に比べたら,私のやっていることは本当に地味で,息子の前に転がった小石を一つ一つ取り除くような作業です。ただその単純な除去作業が息子を歩き出させる結果につながったのかな,と自分では思っています。

 

電子母ありがとう。リアル母もがんばりました。

もちろん,じじにも大大大感謝です。

 

 

 

次回は,この勉強で,中学生になった息子の浅知恵に対抗する小技を紹介します。


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電子母の進化

2021-07-05 14:34:33 | 育児

前回の記事「電子母」では,母の仕事を電子デバイス(AmazonのEcho)に肩代わりしてもらう方法について紹介しましたが,それでもなお手が足りないことはいくらでもあります。

今回は電子デバイスをさらに活用した対策を紹介します。

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Echoのリマインダー機能を導入してからというもの,私が息子に口やかましくあれこれ注意することは圧倒的に減りました。

しかし,呼びかけはあくまで機械から息子への一方通行なため,息子の行動を促すことには有効でも,してほしくない行動の抑止力としては働きません。宿題から逃れようとする息子を止めるのに,リマインダーは無力でした。

Echoの導入をしたのは小学校4年生で,息子の宿題の量も増えていました。これを息子が自ら進んでやるはずもなく,宿題をやりとげるのに見守り,というか見張りがいります。

とはいえ,私が仕事から帰ってくる時間は18時〜19時すぎ,そこから夕食を準備して食べさせて片付けて……となると,家事をこなすだけで精一杯。手が回りません。

さらに,息子には7歳離れた幼い弟がいて,この2人をどうにかしつつ,家事を終わらせるのは至難な技です。

息子を机に座らせた後に弟に別室で動画を見させて夕食の片付けをしていると,息子がいつの間にか席を立って,弟の幼児向け番組を覗き見しているではありませんか。注意して何度席に戻しても同じことの繰り返し。

息子を机につなぎとめておいてくれる人がほしい……,そこで思いついたのがじじ(義父)の存在です。

 

じじの家は飛行機に乗らなければ行けないほど遠く,ちょっと家に来て息子を見張ってくださいとは簡単には言えません。そこで再びEchoの力を借りることにしました。

 

Echoはリマインダー機能のほかに,他のAIスピーカーにはない優れた機能がついていました。「呼びかけ」という機能です。これは,Echo同士で顔を見ながら対話ができるというもので,同一アカウントであれば片方からの呼びかけで自動的に接続できる,つまり相手が応答するといったリアクションをとらなくても向こうの様子を見ることができるのです。

 

Echoを息子の机に1台,じじの家に1台設置する必要があるので最初は投資がいりますが,この問題を解決できるならと早速導入することにしました。じじの家のEchoの設定は,夫が直接出向いて行いました。家にEchoを導入してから2カ月後,小4の3学期から遠隔の見張りを開始しました。

最初はとにかく机の前に生きた目を置くことが目的で,勉強があまりはかどっていなさそうのときに,適宜声掛けをしてもらうようにしました。

 

この作戦は,家の中に手が増え,じじにとっても孫の顔を見られる機会が増えて一石二鳥!と完璧に思えたのですが,そんなにすべてが順調に運んだわけではありませんでした。

 

宿題の量は,低学年から比べたら増えたと言っても,集中すれば10〜20分で終わるような量。それがすぐに集中して時間通り終わることもあれば,気乗りせずまったく進まないこともあり。それに対し,じじが声掛けをしても反発してけんかになったり,と,日によってできたりできなかったりの繰り返しになりました。

 

オンラインでの見守りは,対面式と異なり,ネット回線や機械の問題で音がとぎれとぎれになってしまうこともマイナスに働きました。

オンラインでの対話は,互いに相手の話を聞く意思のある者同士が話せば,たとえ聞き取りにくい場面が合っても成立しますが,息子はもともと人の話を聞くのが苦手。日本語の理解も柔軟性にかけるため,一つの言葉だけ聞きかじって勝手な解釈をして怒り出したりと,息子の性格上,難しいところがありました。

 

しかしながら,うちにはほかの選択肢がなく,Echoを介した見守りにかけることにしました。夫は,けんかの原因となりがちな音声品質の低さを改善するために,ネット回線をチェックしてくれました。調べてみたら,家のネットが遅かったのは電話回線の差込口(モジュラーコンセント)とモデムをつないでいたモデムケーブルが悪かったらしく,新しいものに取り替えたら通信速度が上がり,音声品質も安定しました(ケーブル,通信速度のキーワード検索でいろいろ情報がでてきます)。夫実家のケーブルも,夫が取り替えに行きました。

私の方も,けんかがあったときにじじと本人の双方に聞き取りを行うなどして,対策を考えました。

 

こうして何とか宿題の見守りを軌道に乗せることができました。

こうなるとEchoは電子母ではなく電子じじとでも呼ぶべきでしょうか。

機械の中身が実は人間,という仕事を「メカニカルターク」と呼ぶそうです。

Echoは進化して,メカニカルタークをこなすようになりました。

 

 

こうして1年以上が経過した頃,コロナの影響で学校が休校になり,このメカニカルタークが大活躍!となりそうですが,そうそう簡単にはいきませんでした。

自主勉強やその他の勉強が定着するまでには,かなりの工夫と労力がいりました。次回はその詳細をお伝えします。

 

つづく

*2021年7月6日,一部修正


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