理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)3

2017-10-27 14:07:42 | 発達障害

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2のつづき

 

このようにして,5歳4〜5カ月ぐらいには絵日記というツールを使って前日のことについて日常的に話ができるようにはなりましたが,では視覚的手がかりが何もない状態で,言葉だけで過去の話が通じるようになったのはいつかというと,正直なところ,はっきりしません。

写真のようなものがなければ息子が自発的に話をすることはなく,もともと会話も続きにくい子だったので,こちらが話を切り出しても無視されてばかり。これが,興味がないからなのか,何のことか理解していないのかがわからなかったからです。

ただ,5歳11カ月のときには保育園で数日前に行われた運動会の絵をきちんと描いており,先生の言葉だけで先日の出来事を認識できたのは確かです。

 

こうして「ほうれんそう」の「ほう(報告)」に必要な能力が身についてきたところで,「れん(連絡)」の練習もしていくことにしました。

 

6歳0カ月ごろ,保育園の先生が連絡事項を息子に伝え,息子がそれを母に伝える練習を始めました。連絡の内容はあらかじめ先生から直接聞くか,日記の連絡欄に書いてもらっておき,息子が断片的にしか伝えられなくても私の方から「〜っていうこと?」と確認できるようにしました。

 

これは,先生が息子に面と向かって伝えるのと,先生の話があってから私に会うまでの時間が短かったせいもあってか,わりとすんなりとできるようになりました。

 

ただ,息子は先生がクラス全体に向かって話したことは聞いていないことが多かったので,そういう連絡は先生が息子に注意を促したり言い直す必要がありました。

なお,この傾向は小学校に入ってからもなかなかなおらず,就学後も支援級でみっちり指導されました。クラス全体に対して言われたことがきちんと連絡できるようになったのは小学2年生になってからです。これがちゃんとできるようになってからは,得意科目(体育や数学)を普通級で受けられるようになりました。

 

「ほうれんそう」の「そう(相談)」に関しては,特別な練習はしなかったのですが,幸いにも自然にできるようになってくれました。保育園や学校の連絡かねて「明日お弁当だって。そぼろ(そぼろ肉)ごはんにしてくれない?」のように,自分一人では決められないことは私や夫に聞いたりします。

 

息子はこのほど9歳になりましたが,学校であったことを自発的に話してくれることは今もまれです。でも,休日に家であったことは学校でよく話すと担任の先生が教えてくれました。絵日記をがんばったかいがあったのかな?と嬉しく思います。ただ,「どこで」をきちんと説明できない(場所の名称を言えない)ことが多いようで,それを親から聞いてくるという宿題を先生からよく出されます。

そういうわけで,報告と連絡の練習は今も続いています。


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過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2

2017-10-19 11:54:32 | 発達障害

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)1のつづき

 

こうして絵日記による言葉の訓練の方向性が見えてきたのですが,問題は息子の気まぐれでした。絵日記自体は毎日書いていたのですが,その内容を息子が先生に話すのはその日の気分次第で,数日分の日記をさかのぼってあれこれお話をする日も月に数回あったものの,完全に無視される日の方が圧倒的に多い状態でした。

 

毎日の絵日記の内容が平凡な日常生活で話をする気も起きない,というわけでもなく,例えば仲のいいお友達家族とグアム旅行に行って海で珍しい魚を見たり潜水艦に乗ったというレアな体験に大興奮した次の日も,先生には一切話をしませんでした。

 

療育はなんでもそうかもしれませんが,特に言語訓練のようなものは1回で劇的に能力が上がることはなく,回数や頻度,繰り返しが重要になります。

 

息子が先生に話をする頻度を何とかあげられないかと考えたのが,写真の導入です(5歳4カ月〜)。絵を描くかわりにその日にあったことがわかる写真を撮って家庭用プリンタで印刷し,一緒に話しながら絵日記に貼り付けるようにしたのです。

その効果は劇的でした。最初の1カ月は絵日記に絵を描く日と写真を貼りつける日が半々くらいでしたが,息子が先生によく話しをする日が5割以上になり,翌月から全部写真に切り替えたところ,ほぼ毎日,先生との会話が弾むようになりました。

 

今こうして振り返ると,私の描いた拙い絵と写真とでは情報量の差が歴然で,例えば私にはエビらしきものを描くのがやっとでしたが,写真だったらどういうカニがどれくらい獲れたかがわかります。子どもだったらどっちが人に話したくなるか……は一目瞭然ですね。

 

私の絵

 

写真

私の絵

写真

 

その日つかまえた魚やカニ,料理などは写真におさめやすいのですが,DVDやビデオゲームなど写真に撮りにくいものはビデオのパッケージをそのままコピーしたり,パソコンで画像検索したイメージ図を印刷して貼りました。また,訪れた施設の全景がうまく写真に撮れないような場所は,施設のパンフレットをそのまま切って貼り付けたりしました。

 

やがて息子は,自分に起きた出来事を先生に話すのが楽しくなったようで,種まきした野菜の種のパッケージや,折り紙の作品など,息子が先生に見せたい・話したいというものを日記にどんどん貼り付けていきました。

 

 

写真などをこれだけベタベタ貼ってしまうと,もともとの日記のテンプレートはあまり意味がなくなってしまうのですが,最終的に利用していた日記のテンプレートをここに載せておきます。月の始まりが何曜日かによってカレンダーが変わるので,7種類あります。

 日記日曜スタート日記月曜スタート日記火曜スタート日記水曜スタート日記木曜スタート日記金曜スタート日記土曜スタート

 

絵日記を写真にしたところ,思いもかけない効果もありました。写真に興味をもったクラスメイトが息子と先生の周りに集まるようになり,言葉下手な息子が友達と近づくためのきっかけにもなりました。

 

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)3につづく


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過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)1

2017-10-19 11:39:11 | 発達障害

家庭で療育を始めて1年弱,息子の言葉も徐々に増え,発達検査の数字も上がってはいきましたが,依然として困った問題もありました。

それは過去の出来事や経験について話すことができない,という問題です。

その対策として,ここでは絵日記を使った療育を何回かにわけて紹介していきます。途中経過や試行錯誤をすっとばして実際にうまくいった例やテンプレートを見たいという方は「過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2」へお進みください。

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保育園で年中クラスになったころ(4歳6カ月ごろ)の息子は,コミュニケーションボードやデジカメを使った語りかけを通じて直近の予定や互いの希望を伝えられるようにはなっていたのですが,「昨日○○行った」だとか,「○○したことある」といった,過ぎてしまったことについての会話がなかなか成立しませんでした。

 

保育園では0〜3歳クラスくらいまでは,保育園と家庭の間で連絡帳をやりとりしてその日の様子や大事な連絡などの情報を共有できるのですが,年齢が上がると園からの連絡は必要な限られたものだけになり,園での子どもの様子を知る手立てがなくなります。

 

健常児であれば子どもがしゃべって親に伝えられるようになるので,園が詳細な情報を連絡帳に書き込む必要はないのですが,息子が保育園であったことを自ら話してくれることは皆無でした。

 

それでも保育園に通っているあいだは,お迎えの時に保育園の先生と直接話をする時間が多少なりともとれるので,それでどうにかなるのですが,就学後,特に普通級に通うとなれば,「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」ができる必要があり,そのためには過去のことについて話す能力が必須です。

 

当時の息子は,お出かけから帰った直後ならどこに行って何をしたかを答えることはでき,時間がたってしまったことについても写真などを見せれば一言二言話すことはできていましたが,何の手がかりもない状況で「この前さ〜」とか「昨日ね〜」と話かけてもノーレスポンス。そもそも過去のことについて会話をするといった概念すらないようなので,抜本的な対策が必要でした。そこで考えたのが絵日記です。

 

夜寝る前,息子がその日の出来事について会話ができるうちに,一緒に話をしながら私がその内容を簡単に絵に描き,翌日それを見ながら息子が保育園の先生*と一緒にお話をする,というのを日課にしました(4歳7カ月〜)。

 

まずは,過去の出来事や経験を親以外の人と話すことの大切さ・おもしろさに気づいてもらうのがねらいでしたが,将来的に「ほうれんそう」ができるようになってほしいという思いから,情報を伝える上で重要になる「いつ・どこで・だれが・何をした」が言えるようにと,それらがわかる簡単な文章も書き添えました。

 

また,このころ息子は月日や曜日の概念がなかったので,月々のカレンダーもつけて,日記を書くときに「今日は○日○曜日」と息子に見せながらチェックをいれました。

 

さらに,保育園の先生ともっと情報を共有し,連携を取れるようにするため,保育園からの連絡欄も追加しました(4歳8カ月〜)。

 

この絵日記を始めて最初の数カ月,親の思いも虚しいほどに,息子が保育園で絵日記の内容を先生に話すことはほとんどありませんでした。私と一緒に話して絵を描いているときはそこそこ反応があるのに,次の日いくら先生が絵日記を広げて誘いかけても無視される日が続きました。

 

最初の絵日記は保育園の先生と私の交換日記のようなものになってしまいましたが,それでも続けないことには息子が成長することはないと,絵日記を続けました。

 

休日はお出かけしたり,お友達と遊んだりしたことを絵に描き,平日であればその日に見たDVDのイラストや,息子ががんばったお手伝いの内容や家族のことなどを地道に描き続けました。

 

 

そのかいあってか息子は4歳10カ月ごろになってようやく,絵日記のことを先生と話すようになりました。

 

過去のことについて話す練習が可能になってきたところで,私としては「いつ・どこで・だれが・何をした」を伝えるための訓練をしていったほうがよいのではないかと考え,月1回通っていた言語訓練の先生に相談したのですが,先生の意見は違っていました。

先生はレッスン中の息子の言語能力から判断して,息子は単語レベルでの語彙は増えてきているけれど,単語と単語をつなげて文章を作る力がまだ弱い,なのでまずは息子が発した断片的な単語をつないで大人が文にして返してあげる方がよいというご意見でした。

 

すごくもっともだったので,日記の「いつ・どこで・だれが・何をした」という項目をやめ,かわりに息子にもっと耳を傾け,息子が発した断片的な言葉(「さかなつかまえた,いっぱい」など)をつなぎ,助詞もちゃんと入れて「今日は魚をいっぱいつかまえたね」と返すようにしました。保育園の先生にも同じように話しかけてくださいとお願いしました。

 

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2に続く

 

* 保育園の先生について

息子は年少クラスまではH県K市の,年中からはS県K市の保育園に通っていましたが,どちらの保育園でも担任の先生のほかに,息子のサポート役となる「加配の先生」がついていました。先生が余分にいるおかげで私は安心して息子を保育園に預けることができ,絵日記について話すのに付き合ってほしいなどの特別なリクエストをすることができました。

 

その加配の先生ですが,息子をサポートするといっても常にそばにいてあれこれ指示をするわけではありません。担任の先生,あるいは加配の先生が,クラス全体を見ながら息子が集団行動から外れた時や問題行動を起こした時に適宜サポートするといった感じだったので,ほかの園児や保護者にはなぜこのクラスに先生が多いのかわからなかったと思います。

 

加配の制度自体は自治体(厚労省?はっきりわかりません)によるものですが,対象となる子どもや先生がつく時間は市町村によって異なるようです。ちなみに加配の先生がついた時間はH県K市では1日4時間,S県K市では全日でした。詳しくは園やお住いの自治体の保育課に問い合わせてみてください。


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