ここは、ボク一人だけの魔法の部屋です。
誰にも、何一つ言われることのない、ボクだけの部屋。
ボクは、魔法の部屋では「自由」なんだ。
それだけじゃないよ、ボクだけの部屋では、ボクが王様なんだ。
ボクは、一人で遊んで、疲れたら休んで、好きなことばかり、どんなことでも出来るんだ。
毎日毎日、今日はここで遊ぼう!
毎日毎日、今日はここで眠ろう!
ボクは、いつでも好きな時間に、ご飯を食べよう!
ご飯を食べ終わったら、汚れた食器を、ボクの魔法で、消してしまえばいいんだ。
掃除だって同じさ、ボクの魔法で、きれいにすればいいんだ。
空を見上げると、鳥が飛んでいる、あんな翼が欲しいな。
「そうだ、空を飛んでみよう」
そう思ったら、ボクの魔法で、翼を作ろう。
ボクの両手には、翼がつきました。
この魔法の部屋の世界を、どこまでも飛んでみよう。
「あれれー、翼じゃなくて大きな傘に乗ってるよ」
大きな傘は、どこまでも僕を乗せて飛んでくれました。
「んー!、翼じゃなくてもいいや、飛んでるもん」
ボクが空を傘に乗って飛んでいると、ん?だれ?
「あれれー、誰だろう」
雲の上を飛んでいくと雲の隙間から、誰かがボクの魔法の世界を覗いていました。
「はずかしいなー」
ボクの魔法の部屋は、誰も見れないはずなのに。
「あれれー、どこかに行っちゃった」
覗いていたあの子は、ボクに見られると、どこかに消えてしまいました。
「つまらなかったのかなー」
でも、ボクだけの魔法の部屋だから、覗かないでね。
ボクは、一人でいることが、大好きだった。
そして、一人で遊ぶことが、大好きだった。
泣かされることもなく、笑うこともなく、ただ一人でいること。
静かな朝を迎え、一人で遊び、静かな夜を迎えるのです。
毎日毎日、同じことの繰り返しでも、さびしくはなかったのです。
でも、あの子を見た時から、何だろう、この気持ち。
ボクの胸に、ふと浮かび上がる、この気持ちってなんだろう?
ボク一人だけの魔法の部屋なのに・・・
いつも一人だけでいいと思っていたはずなのに、
今、なぜか、ボクの気持ちは揺れています。
「さびしい?」ボクの胸の中で話しかけてきます。
一人で遊んで走って、空を自由に飛んでいても、ボクの心は宙に浮いたままになりました。
なんだろう?この気持ち・・・
本当のボクの気持ちは、どこにあるの?
だれか、だれでもいいから教えてよ。
ボクは、だれかに話しかけても、何も返ってくるものはありません。
「つまらないよ、つまらないよ」
ボクは、いつも一人が好きだったのに、
あの子に合ってから、ボクが初めて感じた気持ちでした。
あの子の姿を見た時から、ボクは一人でいることが嫌になりました。
今はただ、下を向いて座っているだけです。
「え?、だれですか?」
ボクに、だれかが声をかけてくるのです。
「さあ、もういいよね、わかったよね」
ボクに声をかけてくれたのは、ボクの魔法の部屋でした。
「さあ、時間が来たよ、もうわかったよね」
ボクは、初めて、さびしさを感じました。
ボクは、いつも一人でいることが好きだったのに、
あの子に合ってから、今では、さびしくてどうしようもないのです。
魔法の部屋も翼も傘も、何もいらないから、ボクは誰かと友達になりたくなりました。
ボクの魔法の部屋をのぞいた、あの子と友達になりたい。
そうだ、あの子の世界を、のぞきに行こうと思います。
あの子の世界を探して、探して、飛び回りました。
丸くて小さなビー玉くらいの水玉の世界がありました。
その水玉模様は、あっちこっちに行ったり来たりしています。
ボクは、会いたい思いで追いかけて、やっと触れることができました。
あの子に出会えた時から友達になりました。
そして、あの子には、たくさんの友達がいて、楽しそうにしています。
ボクは、あの子と友達になれて良かったと思います。
あの子と友達になれてから、友達が一人、また友達が一人と増えていくのが嬉しくなりました。
「もうボクは一人じゃないんだ」
ボクの魔法の部屋は、ボクに気づかせてくれたのです。
そして、ボクだけの魔法の部屋に、ボクは戻ることはなくなりました。
ボクの魔法の部屋さん。
「ありがとう」
そして、君の世界に、ゆっくりと歩いていくよ。
ありがとう、覗き見の君へ、ありがとう。
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