とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

II型糖尿病患者では骨代謝マーカーと骨折リスクは関連しない

2020-08-06 19:12:39 | 骨代謝・骨粗鬆症
骨吸収・骨形成マーカーなどの骨代謝マーカー(BTM)の高値が骨折リスクの独立したリスク因子であることはDelmasらのEPIDOS studyを始めとして多くの研究から明らかになっています(Garnero et al., J Bone Miner Res. 1996 Oct;11(10):1531-8. doi: 10.1002/jbmr.5650111021など)。II型糖尿病(T2DM)患者では骨密度が高値であっても骨折リスクが高いことも良く知られています。この論文で著者らはT2DM患者においてはBTMが臨床骨折のリスクと無関係であることを地域在住高齢者コホートの研究から明らかにしました。一方同じコホートの非T2DM参加者においてはBTM高値は骨折リスクと相関していました。これはT2DM患者においてはインスリン反応性が低下しているため、骨代謝回転が低値な人が多いことに起因するのかもしれません。
Napoli et al., J Bone Miner Res. Bone turnover markers do not predict fracture risk in type 2 diabetes. 2020 Jul 27. doi: 10.1002/jbmr.4140.

抗リウマチ薬使用と骨折との関係

2020-08-06 18:33:41 | 免疫・リウマチ
関節リウマチ(RA)患者に対するConventional synthetic DMARDs(従来型合成抗リウマチ薬)として、欧米ではmethotrexate(MTX), sulfasalazine(SASP), hydroxichloroquine(HCQ)が単独、あるいは併用で用いられることが多いです。この論文ではWomen's Health Initiativeの参加者のうちbaselineでRAが存在した1,211について、これらの薬剤の単独、併用による臨床骨折発生を非使用患者と比較しています。結果としてはこれらのcsDMARDsの使用・非使用患者で骨折率に有意な変化はありませんでした。
ハザード比としては
MTX:HR 1.1 (95% CI 0.8‐1.6)
SASP:HR 0.6 (95% CI 0.2‐1.5)
HCQ: HR 1.0 (95% CI 0.7‐1.5)
MTX+SASPあるいはMTX+HCQ:HR 0.9 (95% CI 0.5‐1.6)
でした。以前生物学的製剤を用いても骨折は変化がなかったことがコホート研究から示されていますので(Kim et al., J Bone Miner Res. 2012 Apr;27(4):789-96)、予想された結果ではあります。