とはずがたり

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COVID-19における抗リン脂質抗体の重要性

2021-02-06 19:12:30 | 新型コロナウイルス(疫学他)
重症なCOVID-19患者では血栓形成が促進しており、重症化と関連していることが知られています。またこのような患者で抗リン脂質抗体(aPL抗体, anti-phospholipid antibodies)が出現する頻度が高く、抗リン脂質抗体症候群と共通した病態が存在するのではないかとされていました。この論文で著者らは入院COVID-19患者において8種類の抗リン脂質抗体(aPL抗体, anti-phospholipid antibodies)の存在を検討し、52%の患者で少なくとも1つのaPL抗体が存在することを明らかにしました。aPL抗体の中ではaPS/PT IgGが24%と最も多く、aCL IgM 23%, aPS/PT IgM 18%の順でした。高いaPL抗体を有する患者では好中球の過活性化が生じており、感染制御や血栓形成に重要とされているneutrophil extracellular traps(NETs)形成が促進していました。また臨床的には血小板増加、重症肺炎、低eGFRと相関していました。高いaPL抗体を有する患者から得られたIgGはin vitroで好中球を活性化し、NETs形成を促進しました。またIgGをマウスに投与すると血栓形成を促進しました。これらの結果はCOVID-19患者では何らかの機序でaPL抗体産生が亢進しており、これが血栓産生および重症化と関連している可能性を示唆しています。
Zuo et al., Sci Transl Med. 2020 Nov 18;12(570):eabd3876. doi: 10.1126/scitranslmed.abd3876. Epub 2020 Nov 2.
Prothrombotic autoantibodies in serum from patients hospitalized with COVID-19.