会社に過度な忠誠心をもつヒトのことを社畜と呼んだり、「最近の若いもんは飼いならされている」などと言ったりしますが、実はヒトは自ら家畜化への道を選択したのかもしれません。野生の動物が家畜化されると、小さな歯と頭蓋骨などの顔貌の変化が生じますが、これはneural crest stem cell(神経堤幹細胞)を失うことで生じる変化です。ヒトの遺伝病であるWilliams-Beuren syndromeは「妖精様顔貌」と呼ばれる親しみやすい顔貌を特徴とする遺伝性疾患で、BAZ1Bというチロシンキナーゼ遺伝子の機能障害が見られます。ミラノ大学のGiuseppe Testaらは、BAZ1Bは顔面および頭蓋の発達を制御する多くの遺伝子発現に関与しており、ネアンデルタール人やデニソワ人などと比べて現代人ではBAZ1B遺伝子の変異が蓄積し、これは自然淘汰の過程で「親しみやすい顔貌」を選択してきた可能性があると指摘しています。ということで我々は進化的に自ら家畜になることを選択してきたという訳です。「かわいい」ものを選択するというのは我々のDNAに染み付いた性癖なのかもしれません。
Matteo Zanella et al., Dosage analysis of the 7q11.23 Williams region identifies BAZ1B as a major human gene patterning the modern human face and underlying self-domestication. cience Advances 04 Dec 2019:Vol. 5, no. 12, eaaw7908. DOI: 10.1126/sciadv.aaw7908