ピッチャープレートからホームベースまでの距離は18.44 mなので、150 km/h以上のボールを投げる投手の場合、単純に計算してもボールが届くまでの距離は0.4秒程度です。心理学者によると、人間は刺激が加わってから反応するまでに、何をするかわかっている場合でも少なくとも0.25秒かかり、どのような動きをするかを決定しなければならない場合には反応時間は2倍になるそうなので、理論的には投手の手を離れてから反応するのでは、ボールを打つのは不可能です。という訳で、一流打者は投手の体幹や腕などの動きである程度ボールが来る場所を予測してバッティング動作を始めているそうです。確かにバドミントンの国際大会などを観ていても、レシーバーはスマッシュが打たれる前に移動を始めているように見えます。最近ではバーチャルリアリティ(VR)を使って3Dアバターの投手が投げる球の種類やコースを瞬時に回答する、というようなトレーニングも行われているようです。もし超一流打者=予測能力が超すごい打者ということだと、能力のかなりの部分は脳の働きに依存するのでしょうかね?このような能力はある程度トレーニングで改善するようですが、年齢とともに脳機能が低下すると、いくら体が強健でも思うようなプレイはできなくなるのかもしれません。将来的には引退すべき時期を見極めるのにVRが用いられるようになるのかもしれませんが、ちょっと夢がない感じもします。
Liam Drew. How athletes hit a fastball. Nature 592, S4-S6 (2021) doi: https://doi.org/10.1038/d41586-021-00816-3
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00816-3