とはずがたり

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分断の疾患

2021-01-01 09:30:23 | 新型コロナウイルス(疫学他)
2020年は新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。
無症状・未発症者から感染が広がるというこの感染症の特徴は、疾患の危険度の何倍もの恐怖を社会に与え、人と人の繋がりをズタズタに引き裂きました。また報道のみならずインターネットやSNSを介した不確実な情報の拡散は、国によってはそれを利用しようとする政治力学も働いて、社会の分断に輪をかけることになりました。過去に経験のない未知の感染症の登場は、科学者や医療関係者の間にも戸惑いや不安を広げ、専門家の中にさえも分断を引き起こしました。このコラムのタイトル"A divisive disease(分断の疾患)"は、このような新型コロナウイルス感染症の特徴を過不足なく表しています。
しかしその一方でウイルスゲノムの解読、感染の分子機構や免疫反応、ウイルスタンパクの構造解明、そして様々な臨床試験やワクチン開発が、国際的な共同研究を背景に驚異的な速度で進み、現代サイエンスの、そして人々の共同作業の力を再認識することができた1年でもありました。
第三波はまだ終息する気配を見せませんが、サイエンスは間違いなく我々を前に進めています。新たな年を迎え、我々には人と人との繋がりを失わず、互いの信頼を失わず、そして希望を失わずに「分断の疾患」に対抗していくことが求められています。
本年が皆様にとってすばらしい年になりますように。
2021年元旦 
Kai Kupferschmidt A divisive disease. Science  18 Dec 2020:
Vol. 370, Issue 6523, pp. 1395-1397. DOI: 10.1126/science.370.6523.1395


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