「医療崩壊の真実」というタイトルはアレなのですが、内容はDPCデータなどを参考にして、主として2020年春の新型コロナウイルス感染症第1波で医療崩壊の危機が叫ばれた原因を分析しており、大変腑に落ちるものです。
繰り返しが多いことや、最後の鼎談は蛇足気味だったりという欠点もあるのですが、わが国の医療体制が包含する重要な問題点を指摘しています。特に下記のような指摘は興味深いものです。
①東京都のデータでは医療逼迫が叫ばれていた4月、5月において一般病床およびICUの稼働率は低下していた。
②一般病床稼働率低下の原因は、うがいや手洗い、マスクなどの衛生要因による感染症減少、コロナによる受診控え、不急の手術延期、検診控えによる癌などの発見減少などが考えられる。元々日本は急性期病床が諸外国と比べて突出して多く、コロナのために不要な入院が減ったとも考えられる。
③ICU稼働率低下の原因は、他のICU患者と比べて医師、看護師、臨床工学技士など医療スタッフの治療やケアの手間は数倍かかり、看護師配置も通常の1:2よりも手厚くする必要が生じたため。
④ICU, HCU, ERなどのユニットがない病院、あるいは集中治療、救命救急専門医が不在の病院でも人工呼吸器やECMOが必要な重症~超重症コロナ患者を受け入れていた。逆に集中治療専門医が1人体制の病院などでは、ユニットがあってもコロナ患者を受け入れていない病院もあった(おそらくマンパワー不足のため)。
⑤つまり医療逼迫の原因は、一般病床数、ICU病床数の不足ではなく、過剰に存在する急性期病院への専門医の分散など、医療資源の配分と集約化の問題である。足りなかったのは病床ではなく医療従事者である。
⑥問題を解決するためには日本全体で病床が不足するという虚構の危機をうったえるのではなく、専門医とハードの機能に応じた医療機関の機能分化(役割分担)と広域の連携が必要。
内容には賛否があるかと思いますが、興味のある方は是非ご一読いただければと思います。
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