とはずがたり

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SARS-CoV-2のゲノム配列

2020-03-25 17:47:15 | 新型コロナウイルス(疫学他)
2月28日にドイツのChristian Drosten教授らがSARS-CoV-2のゲノム配列を初めて発表してからこれまでに1500以上の配列が報告され、online platform GISAIDでshareされています。このウイルスにおいても他のウイルス同様に色々な変異が出現していますが、変異出現速度はインフルエンザウイルスより遅いようです。まだまだ検体数も少ないため、例えばどこで流行しているウイルスがどこ由来である、などというような推定は難しいにもかかわらず「ミュンヘンの流行がヨーロッパ中に広まった」というような不確かな情報が拡散していることには懸念が示されています。また変異がウイルスの性質を変えることは考えにくいにもかかわらず、北京大学の Lu Jian教授らによる「LタイプとSタイプがあってLタイプがより重症化する」というような確たる証拠のない発表内容があたかも事実であるかのごとくに広まっていることに対しても、多くの研究者が遺憾の意(というか怒り)を示しています(実際この論文については多くの研究者から論文取り下げ願いも出されています)。このような状況で、少なくとも自分たちは不確かな情報を広げることで、いたずらに周囲に不安をあおることも、またむやみに楽観を広げることもすべきではないと考えています。
Mutations can reveal how the coronavirus moves—but they’re easy to overinterpret
By Kai Kupferschmidt
doi:10.1126/science.abb6526 https://www.sciencemag.org/news/2020/03/mutations-can-reveal-how-coronavirus-moves-they-re-easy-overinterpret


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