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うつのサイン「見逃して重症化する人」の盲点

2021-04-10 15:30:00 | 日記

下記の記事は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です

昨年9月、インターネットを通じて1万人余りを対象に厚生労働省が行った「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」によれば、「半数程度の人が何らかの不安等を感じていた(4月~5月では6割)」ことが明らかになった。
世界的流行から約1年が経つが、いまだ出口は見えない。落ち着くかと思えば、またぶり返す。一体、いつまで続くのか――、そんなイライラが募る日々が続いている。
「不安に加え、いらだちを覚える方も少なくないです」
そう語るのは、うつ病のカウンセリングや依存症の認知行動療法を専門とする『ライフサポートクリニック』(豊島区)の山下悠毅院長。不安とイライラにはどのような関係性があるのか、対処法を含め話を伺った。
――抑制された生活が続くことで、小さなことでも「イライラ」してしまう人が増えているような気がします。
イライラとは、状況や物事が上手くいかない際に出てくるネガティブな感情で、イライラしやすい状態を精神医学では「易刺激性」や「易怒性」と呼びます。原因としては、不快な出来事が起きたとき(いわゆるストレス)や、体調を崩したとき、睡眠不足、あとはうつ病や躁うつ病、てんかんや認知症の症状として観察されることも少なくありません。
――コロナ禍が長引く中で、ライフサポートクリニックにもイライラが止まらない、なんて方が訪れることはありますか?
たくさんいらっしゃいます。最近では中間管理職のような役職の方が多い印象です。新入社員のミスが気になってしまう、取引先の対応が悪くイライラしてしまうなど。世間的にテレワークが推奨されているとはいえ、職場に行かないと仕事にならない方はいまだに多い。規則を順守させたい企業と、「それでは仕事が進まない」といった個人との間にズレがあるようです。そのギャップに戸惑い、物事がうまく進まないことに対して苛立ちを覚える方が少なくないようですね。
一方、これは女性に多いのですが、テレワークが可能な職種にもかかわらず、出社を強要する組織や上司にイライラしている方も見受けられます。
「お金がなくて自殺をする」わけではない
――不安を原因として、イライラしやすくなるというのは、よくあることなのでしょうか?
イライラとは、物事がうまくいかない際の不快感情のため、不安が募れば人は必ずイライラします。
――では、イライラが原因で、精神疾患につながるといったことは?
過度なストレスによって、うつ病が引き起こされることは周知の事実でしょう。そうした観点から、イライラがうつ病の発症リスクにはなりえる。
うつ病で最も恐ろしいのは、自殺リスクの増加です。人はうつ病を患うと、「死んだほうが楽」と考えてしまう症状が出現しうるのです。コロナに限らず、「金銭的に困り自殺をした」といった報道は、誰もが耳にしたことがあるでしょう。
しかし、精神科医が対応する自殺未遂者の多くが、「お金がなくて自殺をする」のではなく、うつ病を発症した結果、「自分はお金がないので死ぬしかない」という妄想(貧困妄想)から、自殺(未遂)に至った方が多いのです。
――うつ病の初期サインとして、何が挙げられるでしょう?
睡眠障害が多いです。特に、「明け方に目が覚めてしまう」(早朝覚醒)が続いていたならば、早めに専門家へ相談することが大切です。また、もし「死にたい」といった相談を受けた方は、ただやみくもに止めるのではなく、この人は死にたいと表現してしまうほどのレべルで人生に絶望している――とその人の発言をくみ取り、「あなたが今とても辛い状況にあることは理解できました」と気持ちを受容したうえで、専門機関へつなげることが大切です。
どうすれば「不安」から解放されるのか?
――気持ちを理解することが大事なわけですね。イライラしている背景に不安がある……そういったケースでは、まず何から始めることがいいのでしょうか?
不安と恐怖を分けて考えることが有効です。なぜなら不安には「対象」がなく、恐怖には「対象」があるからです。高所恐怖、先端恐怖、閉所恐怖といった言葉があるように、恐怖には必ず対象が存在します。それゆえ、人は、恐怖に対しては何かしらの対処や対策が可能です。
一方、不安とは「対象なき恐怖」であり、自分自身がいったい何に恐れているのかを自覚することができていない状態です。現在も、世界中の方が新型コロナウイルス(以下、コロナ)に恐怖を感じています。
しかし、コロナはあまりにも未知なウイルスであるため、「コロナの何が怖いのか」については曖昧なんですね。日本人は欧米人より本当に感染しにくいのか、収束するのはいつなのか、効果的なワクチンや治療薬はできるのか、仕事や学校はどうなるのか、コロナ以前の日常に戻れるのか……など、誰もがこうした悩みを複合的に抱えている状態は、まさに「不安」と表現できるのです。
――なるほど。恐怖は理解できるのですが、不安は漠然としているだけに認識することが厄介です。自分が不安な状態にいる……、感覚的には理解している人は多いと思うですが、例えば生活に変化が生じるなどサイン的なものは表れるのでしょうか?
留意してほしいのは、「いつもと違う」という点です。生活の中で、いつもと違う傾向が出始めると、軽度のうつ症状のサインと言えます。症状は人それぞれですが、睡眠に関してなら、「明け方に目が覚める・お酒がないと眠れない・やたらと眠い」、食事に関してなら「食に興味がなくなる・食べたくないのに食べてしまう」などといった具合です。こういった傾向が、ほぼ毎日、連続して2週間続いた際は黄色信号です。
――そういった予兆を自覚した場合、どうすれば?
自分の中で抱えている悩みを片っ端からノートに書き出して、それが不安なのか恐怖なのか、仕分けすることが大切です。また、書き出す行為そのものが、マインドフルネス状態となるため不安が広がらなくなります。そして、書き出したうえで、「解決できること」と「解決できないこと」に、さらに分けることも重要です。
――「解決できないこと」は考えないようにする?
それは「落とし穴」になる対処方です。なぜなら人は、「能動的に忘れようとしたり、考えないようにしたりすることはできない」からです。「不可能なことにチャレンジした結果、さらに負荷がかかり、不安が悪化してしまっている方」も少なくありません。
そうではなく、繰り返しになりますが、まずは悩みを整理し、「考えない」ではなく「置いておく」のです。「解決できないこと」は文字どおり書いた紙を机の片隅に置いておく。信じれないかもしれませんが、それをするだけで多くの方が感覚として2~4割ほど楽になるのです。
「なぜ」「いったい」といった言葉はNG
――たしかに、考えないようにするなんてできない(苦笑)。自分に異変を感じるようになったら不安と恐怖を紙に書き出し仕分けする、さらに「解決できること」と「解決できないこと」を書き出して分ける、「解決できないこと」は置いておく……、視認できることもあって気持ちがぜんぜん違いますね。
コロナのような閉塞感がある状況で、イライラしないためには、「なぜ」、そして「いったい」といった言葉は避けることも肝心でしょう。「なぜ」は、過去への後悔。「なぜ、こんなコロナに不向きな事業を始めてしまったのか」などは代表例です。
しかし、その事業を始めようとした時点では、コロナについて知りえなかったわけですよね。これでは、じゃんけんで「チョキ」を出して負けた際に、「なぜチョキを出してしまったのか」と悩むのと一緒です。あまりにも不毛であり、イライラは増すばかりです。
――「いったい」も良くないことですか?
「いったい」は、絶対に知りえない未来へ焦点が向いた質問です。「いったい自分の仕事はどうなるのか」、「いったい、いつ治療薬ができるのか」……こうした問いの答えは、そのときにならなければ知りようがないため、やはりイライラが増幅してしまうんですね。
大切なことは、「今を楽しむ」、「できることしかできないのだから、できることだけに取り組む」というマインドです。人は不安が高まると、すぐにでもその気持ちをゼロに近づけようとしてしまいがちです。しかし、それは極めて困難なことであり、さらなる不安を生んでしまうのです。
「何かに没頭する」だけで不安は減少する
――未来への不安は未来にならなければ解消できない、と。やっぱり横に置いておくしかない。
そのとおりです。それどころか、未来ではそのまた未来への不安が、必ず出現します。そこで有効なのがマインドフルネス思考と呼ばれる「今を楽しむ」という考え方ですが、難しく考える必要はありません。好きな映画を観る、作りたかった料理にチャレンジする、好きな運動をする――、いま自分ができること、したいことに没頭するだけで、人の不安やイライラは少なからず減少します。
一方で、「今を楽しむものが見当たらない」なんて方も患者さんの中にはいらっしゃいます。そうした方に対して私は、無理をして新たな趣味を見つけようとするのではなく、「新型コロナウイルスが収束した際のやりたいことリスト」を作って貰っています。
すると、実はその中に、コロナ禍の今でもできることが存在していたり、リストの中身について診察の中で話し合うことで気持ちが落ち着いたり、そもそもリストを作成すること自体が「できること」であるため、「やってみて良かったです」、「新型コロナが収束した後も、定期的にリストを作ってみたい」などと話される患者さんもいらっしゃるのです。「今を楽しむ」ようにする一方で、「解決できないこと」にはしない。それが気持ちを落ち着かせるうえで、大切なことなんですね。
山下 悠毅(やました・ゆうき)
1977年生まれ。精神科医。



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