下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です。
何度ダイエットをしてもやせられない人は、どこに問題があるのでしょうか。医師の牧田善二さんは「糖質依存は、ほかの依存症よりも長い時間をかけて脳を侵食しており、それだけ治すのが難しい」と指摘します――。
※本稿は、牧田善二『医者が教えるダイエット 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
ごはんを食べるのは砂糖を食べるのと同じ
食べ過ぎたら太るものとはなんでしょう。
以前は、「カロリーの高いもの」「油っぽいもの」がダイエットの大敵だと言われていました。
たとえば、マヨネーズやバターは太る食品の代表とされてきました。
今でもそのように考えている人がいますが、医学的に大間違いです。
私たちを太らせるのは、カロリーや脂肪ではありません。人は糖質によって太ります。
太っている人は、成分としての糖質を1日300g以上摂っています。500gくらい摂っている人もいます。それに対して、脂質やタンパク質は5分の1の60g程度。つまり、圧倒的に糖質に偏った食事をしているのです。
ここで大事なのは、ごはん、麺、パン、パスタ、イモ類などの炭水化物は、すべて糖質だということです。
これら炭水化物は「多糖類」といい、消化・吸収の過程ですべてブドウ糖に分解されます。砂糖は「二糖類」で、やはりブドウ糖に分解されます。要するに、ごはんを食べるのは砂糖を食べるのと同じなのです。
こうして分解されたブドウ糖は、小腸から血液中に吸収されます。そして、血中のブドウ糖が増えて血糖値が上がります。
このときに、血糖値が上がり過ぎないようにインスリンというホルモンが分泌され、血中に溢れたブドウ糖をグリコーゲンに変え、肝臓や筋肉に蓄えます。ただ、その貯蔵量は100~200g程度と限られており、余ってしまったブドウ糖が今度は脂肪に形を変え脂肪細胞に取り込まれるのです。これが、科学的に正しい肥満のメカニズムです。
脂肪は食べても太らない
一方で、脂肪を食べても太りません。
脂肪は、私たちの体に37兆個もあると言われる細胞の膜の材料として、どんどん消費されます。ホルモンをつくるためにも脂肪は必須です。にもかかわらず、1日に60g程度しか摂っていないのですから、そもそも過剰にはなりません。
たとえ摂り過ぎても、そのまま便に出てしまうことが多く、あまり吸収されません。
脂っこい料理をたくさん食べた翌日、トイレの水に浮くような便が出ることがありますね。あれは、便に脂肪が混ざって水より軽くなっているからです。
このように、脂肪の吸収効率が悪いのに比べ、炭水化物はほぼ100%がブドウ糖として血中に取り込まれます。そして、前述したメカニズムによって、私たちの体を太らせていくのです。
無意識に、糖質を次々とカゴに入れていないか?
肥満大国アメリカのスーパーには、巨大なピザ、大袋のパスタ、冷凍ポテトなど、安価な炭水化物がたくさん積んであります。飲み物の棚にはコーラなどの砂糖たっぷりの清涼飲料水がビッグボトルで並んでいます。そして、太った人たちは、こういうものを次々とカゴに入れていきます。
彼らは、単純に食いしん坊で量を摂り過ぎているのではありません。「糖質摂取をやめられない」のです。
日本人も同様で、多くの人が糖質の摂取過剰で、その原因が脳にあります。
なんと言っても、日本人は炊きたての白いご飯が大好きです。おにぎりもお寿司も大好きです。
うどんやそば、ラーメンの店はあちこちにあります。
さらには、パンもケーキもどんどん美味しくなって、コンビニスイーツの人気も目を見張るものがあります。
加えて、清涼飲料水、缶コーヒー、ジュース、エナジードリンクといった糖質の塊を、ちょっとした休憩時間に自動販売機で簡単に買えます。
こうした環境が、あなたを太らせているのです。
もっとも、最近は「肥満の原因物質は糖質である」ということを理解している人は増えてきました。
しかし、理解は深まったのに一向にやせられない人がたくさんいます。なぜ、やせるのは難しいのでしょうか。
糖質には「強い中毒性」がある
過去に多くの人がダイエットに失敗してきた大きな原因は、そもそも方法論が間違っていたことにあります。
長い間、「やせるためにはカロリー制限が必要だ」と言われてきました。カロリーを制限すれば空腹になり、それを我慢して続けることは難しく、反動で大食いするというケースが多々見られました。未だにこの間違った理論に従っている人にとって、やせるのが難しいのは当然の話です。
一方で、「太るのは糖質を摂り過ぎているからだ」ということを知っていてもやせられない人がたくさんいます。そういう人たちは、「太るのはわかっているけれど」という前置きをした上で、こんなふうに言います。
「定食の大盛りご飯を残すのはなんだかもったいない」
「どうしてもランチは麺類や丼物になってしまう」
「新発売のお菓子チェックは楽しくて」
「清涼飲料水を飲むのは大事な気分転換だし」
ご飯、麺類、お菓子、清涼飲料水……といったものが糖質の塊であり、太るとわかっていながら摂ってしまう理由について、そもそもまったく理解していないのです。
痩せられない致命的な理由
彼らは、「本気で糖質制限すればやせることができるが、今は意志の弱さのせいでつい大好きな糖質を摂ってしまっている」という認識の上に立っています。
牧田善二『医者が教えるダイエット 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』(ダイヤモンド社)
こういう理解に留まっている限り、まずやせることはできません。一時的に糖質を控えて体重を落とすことはできたとしても、すぐにリバウンドします。なぜなら、彼らはもっと本質的な理由、すなわち「自分の脳が糖質中毒に冒されている」ことに気づいていないからです。
日本人でBMIが25を超えれば、医学的には「肥満症」という立派な病気です。肥満症という言葉は起きている現象を表現しているわけですが、原因にフォーカスすれば「糖質依存症」と言い換えることができます。
そして、糖質依存症は脳の病気なのです。
脳は、私たちの行動のすべてを決定します。どれほど医療が進歩しても脳だけは移植することはできません。あなたに私の脳を移植したら、もはやあなたは存在せず牧田善二になってしまいます。
このように、その人そのものである脳は、あらゆる指令を出しています。
たとえば、あなたが右手の親指で本をめくっているとしたら、それは手がやっているのではなく脳がそうさせています。
その脳が糖質依存症になっていれば、いくらあなたがやせたいと望んでも、逆の「もっと糖質を摂るように」という強い指令が出されてしまい、あなたはそれに従うしかなくなるわけです。
やせるのが難しいのは、脳が狂っているから。その脳を治さない限り、糖質依存症は治らず、肥満症も治りません。とくに、男性で90kg、女性で75kgを超えているようなケースでは、重度の肥満症に陥っていると考えていいでしょう。
糖質中毒の恐怖
SNS、ゲーム、ギャンブル、仕事、恋愛など行動に依存するのを「行動嗜癖」、アルコール、ニコチン、薬物など物質に依存するのを「物質依存」と言います。
糖質依存症は物質依存で、薬物の中毒と同じようにやっかいです。
「いやいや、いくらなんでも薬物中毒と肥満を同列には考えられないでしょう」と反論する人もいるでしょう。しかし、その認識の甘さがあるから、やせるのは難しいのです。
行動嗜癖にしろ、物質依存にしろ、依存症は一度なったら抜け出すのは簡単ではありません。スティーブ・ジョブズは自分の子どもにiPadを持たせなかったそうですし、麻薬の売人は自らそれに手を出すことをしません。彼らは、中毒になることの怖さをよく知っているからでしょう。
糖質依存症も同じことです。ただ、ご飯やラーメンなど、あまりにも日常的に口にしている食べ物が原因となっているだけに、本人は気づかないのです。気づきが遅ければ、それだけ進行します。
これが薬物依存なら、本人は「明らかにまずいことをやっているがやめられない」という認識があります。
そして、本気でやめたければ「一切、手を出さない」という方法がとれます。
しかし、まさか炭水化物が中毒を呼ぶなどとは思いもしないし、たとえ認識できたとしても、まったく口にしない生活は不可能です。
つまり、糖質依存は、ほかの依存症よりも長い時間をかけて脳を侵食しており、それだけ治すのが難しいとも言えるのです。
牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます