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2025年には高齢者の約5人に1人が患うという推計もあり、もはやひとごとではない認知症。そこでまず、下記の「アルツハイマー病の原因となる行動リスト」を見てほしい。暮らしの中にリスクが潜んでいることがわかる。
【表】アルツハイマー病の原因となる行動リストと「問題となる理由」はこちら
【アルツハイマー病の原因となる行動リスト】
(1)朝食は菓子パンと砂糖入りコーヒー
(2)プロトンポンプ阻害薬を服用している
(3)スタチンを服用している
(4)寝る前に甘いものを食べてしまう
(5)何事もあくせく。ストレスがたまりがち
(6)移動は車中心
(7)昼はサンドイッチで軽くすませる
(8)ダイエットのために人工甘味料入り飲料を愛用
(9)たばこを吸う
(10)昼食後はほとんど歯を磨かない
(11)歩いていてぶつかりそうになるとイラッとする
(12)夕食は揚げもの中心
世界が注目するリコード(ReCODE)法とは、認知機能の低下(COgnitive DEcline)の回復(Reversal)という意味の英語の頭文字をとったもの。薬ではなく、日常生活に潜むアルツハイマー病の原因を、食事の改善や環境整備によって除去し、病気を治していく治療プログラムだ。認知症研究の第一人者、米国のデール・ブレデセン博士が編み出した。
リコード法の詳細は後で述べるが、ブレデセン博士は、小麦に含まれるグルテンや炭水化物の摂取、血液中の糖を取り込みにくくなるインスリン抵抗性、歯周病、カビ、有害物質、運動不足といったさまざまなものがアルツハイマー病の原因としている。
「アルツハイマー病というと不治の病で、いずれは寝たきりになるというネガティブな印象がありますが、決してそうではありません。リコード法を行うことで、多くの患者さんを救うことができます。介護する家族にも笑顔が戻ります」
こう話すのは、約30年前から認知症研究に関わっている白澤抗加齢医学研究所所長(お茶の水健康長寿クリニック=東京都千代田区=院長)の白澤卓二医師。ブレデセン博士のアルツハイマー病に対する考え方に賛同。同院では現在、リコード法を日本人向けに改良した治療を行っている。「ほぼ全員に改善がみられている」(白澤医師)と手応えを感じている。
「9割の改善率」というリコード法とは、いったいどんな治療なのだろう。その内容を知るためには、まずはアルツハイマー病の基本を押さえる必要がある。
認知症にはいくつか種類があり、その約6割を占めているのが、アルツハイマー病だ。進行性の病気で、認知機能の低下によって日時や場所、人がわからなくなったり、最近起こったできごとを忘れたり、意欲がなくなって閉じこもったりする。
こうした中核症状(認知機能の低下)とともに表れるのが、BPSDと呼ばれる行動・心理症状。周辺症状ともいい、暴言や暴力、自分のいる場所がわからなくなって道に迷うといった行動面の症状と、不安、幻覚、妄想といった心理面の症状が表れる。周辺症状のほうが、むしろ介護を担う家族の負担を大きくしているともいわれる。
現在、わが国で健康保険が使える治療薬は、ドネペジル(アリセプト)やガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、メマンチン(メマリー)の4剤。いずれも根治薬ではなく、進行を遅らせるために使う。これらの薬の有用性については疑問視する声もあり、フランスでは昨年、治療効果が不十分として、4剤を医療保険から外した。
一方で、アルツハイマー病の患者の脳にたまるアミロイドβというたんぱくをターゲットにした根治薬の研究開発も盛んだ。しかし、ほとんどが臨床試験で有効性を示せず、道半ばで挫折している。
こうした薬物治療と一線を画すのが、リコード法。前述したとおり、原因に応じた生活習慣の改善や環境整備を実践していく治療だ。薬ではうまくいかないのに、なぜリコード法だと“治る”のだろうか。白澤医師はこう説明する。
「新薬の研究の傾向からもわかるように、アルツハイマー病に対する今の主流の考え方は“アミロイドβがアルツハイマー病の原因”というもの。それに異を唱えたのがブレデセン博士です。アミロイドβは原因ではなくて、“感染や炎症といったさまざまなダメージから脳が身を守ろうとした結果、できた物質”だと考えたのです」
要するに、リコード法はアミロイドβを“なくす”のではなく、“ためないようにする”ことに着目した治療といえる。
「例えば、銀行預金を思い浮かべてください。ある月の1日と翌月の1日の預金残高が同じだったとします。でも、それは見た目の残高が同じであるだけで、その間に収入もあれば、支出もあります。アミロイドβもこれと同じで、一見、同じように脳にたまっているように見えても、実は代謝したり、蓄積したりを繰り返しています」(白澤医師)
収入と支出のバランスが崩れて、収入が多くなれば預金額が増える。家計的にはうれしいが、アルツハイマー病に置き換えると、アミロイドβがたまった状態なので、よろしくない。反対に収入を減らして支出を増やせば家計は赤字だが、アミロイドβは減りアルツハイマー病は改善できる。
この“アミロイドβを減らす”のが、リコード法の根本的な考え方だ。
この画期的な治療の成果が世間に示されたのは、2014年。ブレデセン博士らは、アルツハイマー病やその前段階であるMCI(軽度認知障害)の患者10人にリコード法を試みた。すると、治療開始3~6カ月以内に9人の患者で中核症状と周辺症状が改善した。以降、アメリカでは500人以上にもおよぶ認知症患者が、リコード法を実践しているという。
実は、国内からも有効性を示すデータが報告されている。3年前からリコード法を取り入れているブレインケアクリニック(東京都新宿区)名誉医院長の今野裕之医師が、今年7月、日本オーソモレキュラー(栄養療法)医学会第1回総会で発表した。
アルツハイマー病を含む認知症患者22人(平均年齢66.2歳)にリコード法を実施した結果、MMSE(ミニメンタルステート検査)の平均が初診時の20.6から改善、2回目(3~4カ月後)には21.5となった。MMSEとは、広く行われている認知機能検査の一つで、30点が満点。27点以下だとMCI、23点以下だと認知症が疑われる。今野医師は、「改善を認めた割合は8~9割。認知機能が低下していたのは、1人だけでした」と言う。
「ある患者さんのご家族からは、『これまで不安や意欲の低下があったが、リコード法を始めてからは頭がはっきりしてきた』という報告がありました。最近では部屋の片付けを手伝うようになったそうです。記憶力はまだ十分に戻っていませんが、明らかな変化がみられています」(今野医師)
患者のこの変化で喜んだのは家族だ。家庭内が明るくなり、笑顔が増えたという。今回の発表データは期間が短かったが、今後、長期にわたって認知機能が維持できるか検証していくそうだ。(本誌・山内リカ)
2025年には高齢者の約5人に1人が患うという推計もあり、もはやひとごとではない認知症。そこでまず、下記の「アルツハイマー病の原因となる行動リスト」を見てほしい。暮らしの中にリスクが潜んでいることがわかる。
【表】アルツハイマー病の原因となる行動リストと「問題となる理由」はこちら
【アルツハイマー病の原因となる行動リスト】
(1)朝食は菓子パンと砂糖入りコーヒー
(2)プロトンポンプ阻害薬を服用している
(3)スタチンを服用している
(4)寝る前に甘いものを食べてしまう
(5)何事もあくせく。ストレスがたまりがち
(6)移動は車中心
(7)昼はサンドイッチで軽くすませる
(8)ダイエットのために人工甘味料入り飲料を愛用
(9)たばこを吸う
(10)昼食後はほとんど歯を磨かない
(11)歩いていてぶつかりそうになるとイラッとする
(12)夕食は揚げもの中心
世界が注目するリコード(ReCODE)法とは、認知機能の低下(COgnitive DEcline)の回復(Reversal)という意味の英語の頭文字をとったもの。薬ではなく、日常生活に潜むアルツハイマー病の原因を、食事の改善や環境整備によって除去し、病気を治していく治療プログラムだ。認知症研究の第一人者、米国のデール・ブレデセン博士が編み出した。
リコード法の詳細は後で述べるが、ブレデセン博士は、小麦に含まれるグルテンや炭水化物の摂取、血液中の糖を取り込みにくくなるインスリン抵抗性、歯周病、カビ、有害物質、運動不足といったさまざまなものがアルツハイマー病の原因としている。
「アルツハイマー病というと不治の病で、いずれは寝たきりになるというネガティブな印象がありますが、決してそうではありません。リコード法を行うことで、多くの患者さんを救うことができます。介護する家族にも笑顔が戻ります」
こう話すのは、約30年前から認知症研究に関わっている白澤抗加齢医学研究所所長(お茶の水健康長寿クリニック=東京都千代田区=院長)の白澤卓二医師。ブレデセン博士のアルツハイマー病に対する考え方に賛同。同院では現在、リコード法を日本人向けに改良した治療を行っている。「ほぼ全員に改善がみられている」(白澤医師)と手応えを感じている。
「9割の改善率」というリコード法とは、いったいどんな治療なのだろう。その内容を知るためには、まずはアルツハイマー病の基本を押さえる必要がある。
認知症にはいくつか種類があり、その約6割を占めているのが、アルツハイマー病だ。進行性の病気で、認知機能の低下によって日時や場所、人がわからなくなったり、最近起こったできごとを忘れたり、意欲がなくなって閉じこもったりする。
こうした中核症状(認知機能の低下)とともに表れるのが、BPSDと呼ばれる行動・心理症状。周辺症状ともいい、暴言や暴力、自分のいる場所がわからなくなって道に迷うといった行動面の症状と、不安、幻覚、妄想といった心理面の症状が表れる。周辺症状のほうが、むしろ介護を担う家族の負担を大きくしているともいわれる。
現在、わが国で健康保険が使える治療薬は、ドネペジル(アリセプト)やガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、メマンチン(メマリー)の4剤。いずれも根治薬ではなく、進行を遅らせるために使う。これらの薬の有用性については疑問視する声もあり、フランスでは昨年、治療効果が不十分として、4剤を医療保険から外した。
一方で、アルツハイマー病の患者の脳にたまるアミロイドβというたんぱくをターゲットにした根治薬の研究開発も盛んだ。しかし、ほとんどが臨床試験で有効性を示せず、道半ばで挫折している。
こうした薬物治療と一線を画すのが、リコード法。前述したとおり、原因に応じた生活習慣の改善や環境整備を実践していく治療だ。薬ではうまくいかないのに、なぜリコード法だと“治る”のだろうか。白澤医師はこう説明する。
「新薬の研究の傾向からもわかるように、アルツハイマー病に対する今の主流の考え方は“アミロイドβがアルツハイマー病の原因”というもの。それに異を唱えたのがブレデセン博士です。アミロイドβは原因ではなくて、“感染や炎症といったさまざまなダメージから脳が身を守ろうとした結果、できた物質”だと考えたのです」
要するに、リコード法はアミロイドβを“なくす”のではなく、“ためないようにする”ことに着目した治療といえる。
「例えば、銀行預金を思い浮かべてください。ある月の1日と翌月の1日の預金残高が同じだったとします。でも、それは見た目の残高が同じであるだけで、その間に収入もあれば、支出もあります。アミロイドβもこれと同じで、一見、同じように脳にたまっているように見えても、実は代謝したり、蓄積したりを繰り返しています」(白澤医師)
収入と支出のバランスが崩れて、収入が多くなれば預金額が増える。家計的にはうれしいが、アルツハイマー病に置き換えると、アミロイドβがたまった状態なので、よろしくない。反対に収入を減らして支出を増やせば家計は赤字だが、アミロイドβは減りアルツハイマー病は改善できる。
この“アミロイドβを減らす”のが、リコード法の根本的な考え方だ。
この画期的な治療の成果が世間に示されたのは、2014年。ブレデセン博士らは、アルツハイマー病やその前段階であるMCI(軽度認知障害)の患者10人にリコード法を試みた。すると、治療開始3~6カ月以内に9人の患者で中核症状と周辺症状が改善した。以降、アメリカでは500人以上にもおよぶ認知症患者が、リコード法を実践しているという。
実は、国内からも有効性を示すデータが報告されている。3年前からリコード法を取り入れているブレインケアクリニック(東京都新宿区)名誉医院長の今野裕之医師が、今年7月、日本オーソモレキュラー(栄養療法)医学会第1回総会で発表した。
アルツハイマー病を含む認知症患者22人(平均年齢66.2歳)にリコード法を実施した結果、MMSE(ミニメンタルステート検査)の平均が初診時の20.6から改善、2回目(3~4カ月後)には21.5となった。MMSEとは、広く行われている認知機能検査の一つで、30点が満点。27点以下だとMCI、23点以下だと認知症が疑われる。今野医師は、「改善を認めた割合は8~9割。認知機能が低下していたのは、1人だけでした」と言う。
「ある患者さんのご家族からは、『これまで不安や意欲の低下があったが、リコード法を始めてからは頭がはっきりしてきた』という報告がありました。最近では部屋の片付けを手伝うようになったそうです。記憶力はまだ十分に戻っていませんが、明らかな変化がみられています」(今野医師)
患者のこの変化で喜んだのは家族だ。家庭内が明るくなり、笑顔が増えたという。今回の発表データは期間が短かったが、今後、長期にわたって認知機能が維持できるか検証していくそうだ。(本誌・山内リカ)
プロトンポンプ阻害薬は以下の疾患の治療に用いられ、投与中は定期的に血液学的検査を行うことが望ましい。
追記:
- 消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍)
- Zollinger-Ellison症候群(en)
- 逆流性食道炎
- ヘリコバクター・ピロリの除菌補助:抗生物質であるクラリスロマイシン(商品名:クラリスなど)とアモキシシリン(商品名:サワシリンなど)と共に用いられる。
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