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どうすれば平穏で「痛くない死」を自宅で迎えられるのか

2021-02-12 15:30:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です


映画『痛くない死に方』 
映画で知る「在宅医療」と「平穏死」
 死について考えることを「縁起でもない」と感じる人もいるだろう。しかし「死に方」について事前によく考え、家族と話し合っておくことはとても大切なことだ。なぜ大切なのか、そしてどうしたら「痛くない、苦しくない死に方」ができるのかを教えてくれるのが、2月20日に公開になる映画『痛くない死に方』だ。在宅医・河田を演じる柄本佑 「痛くない死に方」製作委員会
 この映画は、在宅医療のスペシャリストである医師、長尾和宏氏のノンフィクション書籍『痛い在宅医』、医学実用書『痛くない死に方』を原作とした劇映画で、監督は『TATTOO<刺青>あり』『愛の新世界』『光の雨』などで知られる高橋伴明。主演の柄本佑をはじめ、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二など、魅力的なキャストが多数出演している。
 柄本佑は、河田という若い在宅医を演じる。在宅医とは、病院に入院せず(あるいはがん終末期などで退院して)在宅療養することを選んだ患者の家を訪問し、診察・対応する医師だ。河田は高齢の末期がん患者・大貫を担当するのだが、緩和ケアに失敗し、苦しみながらの壮絶な死を迎えさせてしまう。亡くなった大貫の娘は悲しみ、自分が在宅医療を希望したせいだと自らを責め「私が父を殺したのか」とまで言い放つ。その言葉は河田に深く突き刺さる。末期がん患者の父を介護する娘を演じる坂井真紀 「痛くない死に方」製作委員会
 やがて、若い河田は悩み考え、学んで成長していく。この映画は、観客にその姿を見守らせるのと同時に、「人が平穏な死を迎えるにはどうすればいいか」という知識と理解が深まるように作られている。劇映画でありながら、原作の書籍から知識をたっぷり盛り込んだ作品なのだ。
「大病院の専門医」と「在宅医」の違いを知るのが、主人公の転機に
 大貫の娘とのやりとりからモヤモヤした気分を抱えた河田だったが、在宅医の先輩・長野に相談することで、転機が訪れる。長野からは、河田の判断にいくつものミスがあったことを指摘される。「患者が苦しんで亡くなったのは自分のせいなのか」と、ひとたび深い悔恨の念に苛まれ、河田は信念を新たにする。長野の往診現場に立会い「大病院の専門医」と「在宅医」の違いを知り、「在宅医のあるべき姿」を模索するようになっていく。ちなみに、この先輩医師・長野は、柄本佑の義父にあたる奥田瑛二が演じている。先輩医師を演じる奥田瑛二(左) 「痛くない死に方」製作委員会
 劇中、河田が在宅医のあるべき姿を学ぶプロセスで、わたしたちの常識がひっくり返されるような知識の数々が示される。例えば「高齢で終末期の患者が何らかの発作を起こしたとき、あわてて救急車を呼ぶとどうなるのか?」そして「薬や点滴の使い過ぎが、どんな結果をもたらすのか?」といったことなどだ。
 いざとなれば、医療について素人の私たちにも、医師や病院から「家族が決めてください」「本人の希望で選んでください」などと、判断を迫られる場面が訪れる。ここで取り乱し、流されるように決断すれば、患者の平穏な死は叶わなくなってしまう。
「とにかく生きていることが最優先」の延命治療に慣れているわれわれが、なぜ「平穏死」を逃してしまうのか。「何を選べば、どのような結果になるのか」が、原作者である長尾医師の長年の経験を元にして劇中で明確に語られる。
「平穏死5つの要件」とは
 この映画には、主要ながん患者が2人登場する。1人目を「痛い死に方」のケース、2人目を「痛くない死に方」のケースとして見ることができる。この2つのケースを比べると、担当医師の対応と家族の判断によって「同じ末期がん患者でこうも違うのか」とびっくりするくらい、死に方に大きな差が出てくるのだ。
 しかし、そもそも「平穏な死」とはどんな死に方なのだろうか。
 多くの人は、まず「体の痛みに苦しまない」ことをイメージするだろう。もちろんそれも大事なことだが、ほかにも「理想的な環境で過ごせているか」「心に不安はないか」なども大切だろう。
 原作者は「平穏死」を以下のように定義している。 
 言われてみればなんとなく腑に落ちるものの、この5つの要件を満たす死に方というのは、具体的にはどういう「死」なのだろうか。それをわかりやすく見せてくれるのが、劇中の2人目の末期がん患者だ。
本当の「痛くない死に方」とは
 悔恨の看取りから2年後、信念を新たにした河田医師は成長している。ここで登場する2人目の末期がん患者・本多は、明るくチャーミングなキャラクター。演じるのは宇崎竜童だ。左から余貴美子、柄本佑、宇崎竜童、大谷直子 「痛くない死に方」製作委員会
 本多は「平穏死5つの要件」の3つめにある“楽しみや笑いがある「穏やかな生活」”を自ら求めていて、毎日の暮らしに楽しみを見つけるのがうまい人物だ。イベントを好み、妻を愛し、ユーモラスな川柳を詠む。本多を見ていれば「こうして暮らせばいいのだな」という感覚が沁みてくる。
 しかし、そんな本多にも、やはり死は近づいてくる。
 終末期にはどんな変化が起こり、家族はどう判断すればいいのか。頼れる医師として成長した河田は、どう指示を出すのか。家族にも患者本人にも、一点の曇りもない「痛くない死」というものは存在するのだろうか。そのあたりも、ぜひ劇場で見届けてほしい。
『痛くない死に方』予告編
 本作はタイトル通り、どうしたら「痛くない死に方」ができるかを紐解いた、知識溢れる貴重な作品だが、もちろん劇映画としても秀逸だ。高橋伴明監督の手腕とキャストの力によって、最後まで目が離せない、娯楽性の高い感動的な作品に仕上がっている。
ドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も公開
 劇映画『痛くない死に方』の原作は、現役で町医者として市民の治療にあたっている長尾和宏医師の書籍だが、その長尾医師自身の在宅医療の現場を収めたドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も、2月13日から公開となる。こちらは長尾医師と患者、そして家族のリアルな物語の記録だ。ドキュメンタリー映画『けったいな町医者』の長尾和宏医師 「けったいな町医者」製作委員会
 こちらの作品の監督は、劇映画『痛くない死に方』で助監督を務めた毛利安孝。多くの患者さんのリアルで貴重な「命の瀬戸際」が映っており、控えめに言っても衝撃的なドキュメンタリー作品だ。ナレーションは柄本佑が担当している。
 奇跡のような患者さんたちの反応、そして「在宅医療はどうあるべきか」を長尾医師が熱く語る場面も見どころ。患者やその家族から深く信頼される長尾医師の人柄や、確固たる信念をしっかり伝えながらも、その「けったいな町医者」ぶりに、つい笑ってしまうシーンも収められている。
 さて、記事後編では長尾医師本人にインタビューを行った。痛くない死に方(=平穏死)をより深く理解してもらうためにも「ドキュメンタリーと、劇映画『痛くない死に方』の両方を観てほしい」という長尾医師から、映画の裏話や在宅医療についてのお話をうかがった。
在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏医師が語る“平穏死”「死について考えるのは、前向きに生きるということ」



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