山下公園を歩くと「カモメにえさをあげないでください」との看板がある。
その横でニコニコとカモメにパンくずをあげているオヤジが一人ならずといる。
このオヤジさん達はまずコトブキから散歩に来てるひとだと思って間違いはない。
ポーラのクリニックにも数人いる。
最近カモメをやめて、巷で少なくなったスズメにはまっているオヤジが言った。
「カモメやハトは大きいから」
どうも、小さいものを応援したくなるらしい。
そういえば、さなぎの家でも飼ってるのはメダカである。
こっそりとベランダでウサギを飼ってるおじさんもいる。
通院中の71歳のIさん男性はうつと高血圧。
かつては診察室の私のゴールデンの写真を見ては、うらやましそうにしていた。
最近ずいぶん元気で明るいなー
と思ったら、簡易宿泊所内で豆柴を飼い始めたのだそうだ。
簡宿でイヌを飼うのは手続きが大変だ。
帝国ホテルで飼うよりは簡単なのだろうが、
まずは役所の生活保護担当者とその上司のお墨付き、次に簡宿の帳場さんの許可、そして本人の一筆誓約書。「犬で問題が起きたら即刻退去・・・」にサイン。
実はあまりにクリニックで写真をほめてくれるんで、以前役所へ推薦状をかいた。
「精神的治療上 イヌを飼うことをおすすめします・・・」
この一筆が効いたらしい。よかった。治療著効。
殺伐とした簡宿にひとりすんでいると、ウツウツとするにちがいない。
外に出ても近所つきあいするわけでもない。
誰に話しかけることもなく、話しかけられることもない。
誰にやさしくされることもなく、やさしくすることもない。
カモメやめだか、ハトやすずめ、ウサギ、豆柴など、
コトブキのオヤジさんの何人かは、やり場のないやさしさの棄て場探しをして自分を癒やしているのかもしれない。