NPO法人さなぎ達ブログ

横浜市寿地区や近隣地域を中心に社会的生きづらさを抱えている人々を対象としながら活動を行っているNPO法人です。

「さなぎ達」とは

日本三大寄せ場の一つである、横浜市寿地区、寿周辺地区を中心に、路上生活者及び路上生活に至るおそれのある人々が、自ら自立に向かいやすい環境を整える「自立自援」を主な目的とし、メンタルを一番大切にしながら「医・衣・職・食・住」の各方面で活動しているNPO法人です。

訃報

2011年05月25日 | 日記
山中先生(さなぎ達の理事長兼ポーラのクリニックの院長)のエッセイをお届けします。
Sさんの最後のお話です。
過去のSさんシリーズも合わせてお読み下さい。
第1弾第2弾第3弾第4弾第5弾第6弾第7弾第8弾第9弾第10弾第11弾第12弾



Sさん 78歳と2か月。
死因:肺ガン 平成23年5月24日 朝8:46 山中死亡確認
第一発見者:Hヘルパー
状況:訪室時心肺停止。右側臥位。右顔下に缶コーヒー(全量摂取)
同行確認者:今野看護師
死亡場所:寿町内簡易宿泊所3階 自室

Sさん死亡前日の話。

Sさんひとつ年下の女性Tさん(77歳)は、寿に独り住まいしてずいぶん長い。
10年以上にもなるらしい。
生まれや背景はくわしくはわからないが、性格は優しく、気弱、邪心なくテレビでスポーツを見るのが大好き。
絵を描くのも大好き。
彼女の人物絵はいつも「目にお星さまがキラキラ」。少女漫画の世界。
一度私の肖像画をいただいたが、「オサム」とは似てもにつかない「ワタル君」のような美しい顔であった。
昔のマンガに出てくる「オサム」はたいてい青バナ垂らしているタイプ。

Tさんは数年前ドヤで心筋梗塞を患い一命とりとめ、回復後に多摩川に入水自殺を試み、退院した足で当院へ。
止めどない量の眠剤や抗精神薬を今でものんでいる。
爪が茶色に染まるほどの喫煙家であったが、1年前に禁煙した。よくできたもんだと感心する。
禁煙動機にSさんの存在があったかどうかは不明。
しかし、クリニックに通院して数年、ずいぶんとメンタル面に変化はみられる。
色がきれいになった爪をほめると恥ずかしそうに喜ぶ。 

Sさんとは長いつきあいらしい。
どうもTさんがSさんに一方的に憧れ、Sさんは距離感を持ってTさんを受けとめていた印象がある。
「Sさんはカッコイイ!。寿の男どもと質が違うのよ!」

このTについて、ひと月くらい前の往診時にSさんに聞いてみた。
「Tさんにはガンのこと告げたの?」
「いや! 言ったってしょうがないから」とひとこと。いかにもSさんらしい返事だった。
どうも、片想いのようだ。

その後もTさんはSさんのところに通った。簡易宿泊所にして100mくらいの距離である。
スイカやらなんやら、買い物をして通った。

昨日の朝、Tさんは夢で目覚めた。
「Sさんが大声で私を呼んでる夢。」
見に行ってみたら、Sさんは苦しそう。
「私には何もできないから。」
Tさんは大あわてでクリニックに来て訴えた。
そのTさんに私は本来してはいけないことを、した。

「あのね、Sさんの病気は肺ガンです。入院中は痛みが強かったんだけど、退院後はどんどん薬を減らしても痛みはでなかったの。本人はここで逝くことを希望してる。最期の苦しみだと思う。」
「もしTさんが 朝一番で訪問したときにSさんに更に変化があっても、決して救急車を呼ばないで山中を携帯で呼んで下さい」
患者自身の許可無く、Tさんに病状と近日中の可能性について説明するのは本来は法律抵触(医師法・個人情報保護法)行為である。
寿に限らず、生命倫理を尊重するならば、ある種の法律は飛び越えなければならないことがある。
「安楽死」を認容するのではない。
「尊厳死」という生命倫理を優先させるために。

Sさんはまだ温かかった。
空になった缶コーヒーと共に息をひきとっていた。
「どうしても不安になったり、苦しかったりしたら、このボタンを押してね」
クリニックの携帯電話のボタンに緑色のテープを貼り、ワンプッシュで山中につながるようにしていたが、Sさんは最期までそれを押さなかった。

児玉清、長門裕之、77歳で逝く人たちが相次いでいる。
みなさんに男の美学を感じる。
人の死に美学を与えられるのは、医療・家族・友人の思いやりの結果である。
圧死、津波死、瓦礫死。
この75日間日本人が見た死のかたちは、死の美学への大きな一石を投じるに違いない。

「寿でのみとり」は10年先を見据えた活動であったが、震災の影響で10年先ではなくなっている。
Sさんの死はまさしく「美学」であったと思う。
穏やかな顔を川崎もTさんも、かかわったみんなが確認できた。
大雨の今朝のことである。
午後は晴れるらしい。

合掌。





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Sさんの変化

2011年05月19日 | 日記
山中先生(さなぎ達の理事長兼ポーラのクリニックの院長)のエッセイをお届けします。
Sさんシリーズも第12弾になりました。
過去のSさんシリーズも合わせてお読み下さい。
第1弾第2弾第3弾第4弾第5弾第6弾第7弾第8弾第9弾第10弾第11弾




5/17 訪問診療:KMVP川崎、ポーラのクリニック山中・今野 3人で訪問
Sさん:「こんにちは。もう歩けなくなっちゃった。だからクリニックに行けなくなちゃったよ。薬も取りに行けないし・・・」
(もう一ヶ月以上も前から訪問診療している)

Sさん:「眠剤が無くなった。昨日は飲んでないから寝てない。」
(実際は服薬している)

Sさん:「今はベッドから落ちたら起きあがれないし。その時に左腕ぶつけて力が入らなくなって、立ち上がることはなんとかできます。車椅子に乗っても自分で運転できないし、だれかに押してもらわなくてはならないんです。」
(SヘルパーやKMVPの川崎がこの役目。
自分で動くこと、動けることへのこだわりは強い。
それができなくなったことへの焦り、狼狽を感じる)

Sさん:「おっきいの(便)はここのトイレで(ポータブルトイレ)やってます。やっぱりトイレでしたい。
なかなかベッドの上に起きあがることもできなくて・・・今おむつつけてます。」
(やはり自分で始末することができなくなっている歯がゆさ)

Sさん:「朝はミカンと液体の(エンシュア)1本飲みました。抹茶アイスが食べたい。冷凍庫に入れておくとカツカツになるから下の方に入れておいて下さい。」
(スイカやアイス等希望される)

Sさん:「夜は寝れてます。22:30~6:00まで。寝てるときが一番幸せ、楽しい。寝るのだけが楽しみ。寝てればなにも考えなくていいから。」
(これも本音)

山中:「不安や辛いところは??」
Sさん:「特にないです。かったるいだけ。川崎さんが来てくれて毎日助かってます。川崎さんだけが頼りです。Sヘルパーが突然来なくなっちゃったもんで。」
(ホントに有力なSヘルパーは突然退職してしまっていた!)

Sさん:「川崎さんに頼み事があるんです。買ってきて欲しいものがある。」
川崎が「何?」と私や今野の前で聞くと、知られたくないようで、
「ま、いろいろ」とお茶を濁して返事した。

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私たちが去ったその後、
川崎報告によると、頼まれたものは
餅10個、マルキンのカレーうどん10袋、そうめん2束、めんつゆ5本、本わさび4本、リポビタンD10ケース、鍋、トースターなどなど
「餅は非常用で長く持つから」というのが目的らしい。
(独りで生き抜くために覚えた非常食なのだろう)
「餅は先生から止められた」と、川崎が伝えると
「自己責任とるから買ってきて」
(どうも、餅を食べたいというより、これまで餅で独りでなんとかして来られたから、最期まで餅があれば何とかなる、と)

この日、これまであんなにクールで頼み事をしなかったSさんが、とうとう急に変化した。
川崎に「死ぬまで世話になるから。1日2回きてくれ」と懇願した。

これが、KMVPの本領である。
主治医は端役の脇役。
主役は患者、最大の助演はKMVP。





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「さなぎ達通信」

2011年05月19日 | 日記
すみません、少し更新が空いてしまいました

*お詫び*
年に4回発行しているニューズレター「さなぎ達通信」ですが、発行が大幅に遅れています。
大変申し訳ありません。
現在、発行作業も大詰めを迎え、来月初旬には発行できる予定ですので、もうしばらくお待ちください。
送付希望の方は、事務局までご連絡ください。(TEL:045-228-1055)
バックナンバーはこちらからご覧ください。


大分夏らしい気候になってきましたね。
夏に向けて体力を付け、また、紫外線や熱中症対策もしっかりしていきましょう!


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寿第一世代のじいちゃん

2011年05月13日 | 日記
山中先生(さなぎ達の理事長兼ポーラのクリニックの院長)のエッセイをお届けします。




83歳 の男性。 
最近定期的訪問診療をしている患者さん。
典型的な寿独居の、いわゆる 寿第一世代のひと。

訪問診察の後、処方薬をもって(家族がいないため)服薬指導に、男性看護師今野(こんの)君が再度訪室。
以下の語りを聞いてきた。 

個人の同定をされる内容ではないので、クリニックの電子カルテに記載された今野君の文章をそのまま記します。 
これが 第一世代の方々の語り です。 
ブログみて下さる方に、お伝えしたくて。
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経歴について簡単に話される。
俺ももうこんな歳だから死ぬって言われたら仕方ない。
でもまだもうちょっと生きたいんだよなあ。いろんな経験した
戦争に行って相手の国へ鉄砲玉を打ったりもしたよ。
いい経験したんだな。と思うよ。

俺さ、実は刑務所に入っていたときもあったんだ。
1年7ヶ月だったんだけど。
障害で相手が死んじゃって。
その時女と同居してたんだけどその女がたれ込みやがって、埼玉に住んでいたんだけど逃げて公園で寝てたら刑事が19人来て囲まれてさ。
何度か裁判したけれど、弁護士はダメだな。
あいつら金出さなくちゃ何にもやらねえ。
結局懲役刑を食らったよ。

埼玉と栃木の辺りにある刑務所に入ったんだけど、刑務所ってすごく待遇がいいんだよ(笑)
ご飯は美味しいし、雑居と独居どっちがいいって選べて。
もちろん独居を選んだけど。
仕事は紙袋をひたすら作っていたよ。
ちゃんと給料もくれるんだ。
仕事の時間は大体午前中で終わりで、午後は講堂で映画とか見せてくれてよ。
出所の時「なんていいところだったんだ」って泣けたよ。
こんなんじゃ犯罪繰り返すやつが多いって分かる気がする。
俺は野球やってて身体頑丈だと思ったんだけど、親譲りなのか胃腸が弱くてね。
胃薬出してくれてありがとう。
ちゃんと薬は飲むよ。

内服薬は4日分。
ヘルパー会社に預けて内服管理してもらうことになる。
ご本人も納得した。






BE WITH YOUさなぎ達

イオンの黄色いレシート

2011年05月10日 | 日記
皆さまは普段どこのスーパーで買い物をしますか?
皆さまのお住まいのお近くにイオンはありますか??
「イオンの黄色いレシートキャンペーン」をご存じですか???

*イオンの黄色いレシートキャンペーンとは
毎月11日はイオン・デーです。
「イオン・デー」から実施する「イオン 幸せの黄色いレシートキャンペーン」は、買い物客がレジ精算時に受け取った黄色いレシートを、地域のボランティア団体名が書かれた店内備え付けのBOXへ投函し、レシートのお買い上げ金額の合計1%をそれぞれの団体に還元するというシステムです。


「さなぎ達」はイオン本牧店(横浜市中区)でのキャンペーンに参加させて頂くことになりました。
周辺地域の皆さまに、寿地区やわたし達の活動を知っていただければと思っています。
皆さまから頂いたレシートで、食堂で使うお米を頂く予定です。
今月は、先月が震災キャンペーンに当たったため、今日10日と明日11日の2日間行われます。お近くにお住まいの方は、是非ご協力下さい!!


暑かったり、寒かったり、変わりやすい天候が続いています。
この時期は5月病という言葉があるくらい、体に不調が出やすい時期です
夏に備えて、しっかり体力をつけていきましょう~


BE WITH YOUさなぎ達