K18金 ¥3320
プラチナPT950 ¥3200
【 5月28日即買値】
ーコラムー
かれは高校三年生。学年も年も
ひとつしか違わないにの、ひど
く大人びて見えた。
一週間後の日曜日、彼はその本を
図書館に返却したあと、私に差し
出してくれた。
「僕からは、お返しに、これを」
家にもどっておそるおそる開い
てみると、なんとその本は、女
の子がらの告白を受けて「イエス」
と返事をする男の子の物語だった。
私はただちに次の本を選んで、、彼
に「読んで」とすすめた。
図書館で知り合ったふたりが大切
に愛を育ててゆく、すがすがしい
恋の物語。
翌週、彼から私に手渡されたのは、
まさにそのつづきにやってくるよ
な、甘くてほろ苦い、でも幸せな
ラブストーリー。
私たちはまるで競い合うようにし
て、ふたりの「恋愛」を先へ先へ
と進めていった。
けれど、私たちに残さた時間は、
それほど長くなかった。
ある日、彼から私に差し出され
た本には、高校を卒業して男の
子が大学生になり、遠い大都市に
引越してしまい、ふたりは離れ
離れになってしまう、そんな
悲しい物語がつづられていた。
そんな悲しい物語がつづられて
いた。
何度も読んで、私は泣いた。
泣きながら、次の本を選んで、
三月の終わりの日曜日に―――
これが最後のデートになると
わかっていた
意を決して、彼の胸もとに押
しつけるようにして差し出した。
「最後にひとつだけ、お願いが
あるの」
これから遠い異国の旅立って
しまう恋人に、その本の主人公
の女の子は言うのだ。
「忘れられないキスをして、
フランス風のキスがいい。あ
なたとのキスの思い出があれば、
つらい別れも乗り越えていける
から」
私のすぐそばで、彼女がくすくす
笑っている。
「なんて可愛い、なんてキュートな、
嘘みたいな本当のお話ね、もしか
したら、本当みたいな嘘のお話、
かしら?」
「さあ、どっちでしょう。ご想像に
お任せあします」
彼女は「お礼に何か奢るわ」と言い
ながら、カウンターのはしっこに
置かれたカクテルメニューを
右手で取り上げ、
「ところでもひとつ、質問」
左手を、小さく挙げた。
「はい、なんでしょう」
「フランス風のキスというは、
どこにしてもらったの?唇なの?
それとも、ほっぺ?」
「鋭い質問です。その答えは
・・・・」
初老のバーテンダーさんが私の
顔を見て、えくぼを浮かべた。
カクテルの「フレンチキス」に
は二種類があって、ウオッカに
生クリームを加えてつくる、た
っぷり甘くて、うっとりするく
らいなめらかなお酒―――これ
が、ディープなフレンチキス。
ジンジャービールとラズベリー
ビューレをベースにして、アプリ
コットブランディとシャンパン
で香りづけをした爽やかなお酒
これが、左右の頬にかわるがわる、
涼風みたいな口づけをするフラ
ンス風の挨拶のキス。
「どっちなの?」
「ふふふ、知っているくせに」
少女は、大人になった。どちらの
フレンチキスも、味わったことが
ある。
本当みたいな嘘のお話が人を
酔わせ、人を幸せにするとい
うことも知っている。
佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
ぴんころ地蔵側
~ヤナギダ~
☎0267-62-0220
プラチナPT950 ¥3200
【 5月28日即買値】
ーコラムー
かれは高校三年生。学年も年も
ひとつしか違わないにの、ひど
く大人びて見えた。
一週間後の日曜日、彼はその本を
図書館に返却したあと、私に差し
出してくれた。
「僕からは、お返しに、これを」
家にもどっておそるおそる開い
てみると、なんとその本は、女
の子がらの告白を受けて「イエス」
と返事をする男の子の物語だった。
私はただちに次の本を選んで、、彼
に「読んで」とすすめた。
図書館で知り合ったふたりが大切
に愛を育ててゆく、すがすがしい
恋の物語。
翌週、彼から私に手渡されたのは、
まさにそのつづきにやってくるよ
な、甘くてほろ苦い、でも幸せな
ラブストーリー。
私たちはまるで競い合うようにし
て、ふたりの「恋愛」を先へ先へ
と進めていった。
けれど、私たちに残さた時間は、
それほど長くなかった。
ある日、彼から私に差し出され
た本には、高校を卒業して男の
子が大学生になり、遠い大都市に
引越してしまい、ふたりは離れ
離れになってしまう、そんな
悲しい物語がつづられていた。
そんな悲しい物語がつづられて
いた。
何度も読んで、私は泣いた。
泣きながら、次の本を選んで、
三月の終わりの日曜日に―――
これが最後のデートになると
わかっていた
意を決して、彼の胸もとに押
しつけるようにして差し出した。
「最後にひとつだけ、お願いが
あるの」
これから遠い異国の旅立って
しまう恋人に、その本の主人公
の女の子は言うのだ。
「忘れられないキスをして、
フランス風のキスがいい。あ
なたとのキスの思い出があれば、
つらい別れも乗り越えていける
から」
私のすぐそばで、彼女がくすくす
笑っている。
「なんて可愛い、なんてキュートな、
嘘みたいな本当のお話ね、もしか
したら、本当みたいな嘘のお話、
かしら?」
「さあ、どっちでしょう。ご想像に
お任せあします」
彼女は「お礼に何か奢るわ」と言い
ながら、カウンターのはしっこに
置かれたカクテルメニューを
右手で取り上げ、
「ところでもひとつ、質問」
左手を、小さく挙げた。
「はい、なんでしょう」
「フランス風のキスというは、
どこにしてもらったの?唇なの?
それとも、ほっぺ?」
「鋭い質問です。その答えは
・・・・」
初老のバーテンダーさんが私の
顔を見て、えくぼを浮かべた。
カクテルの「フレンチキス」に
は二種類があって、ウオッカに
生クリームを加えてつくる、た
っぷり甘くて、うっとりするく
らいなめらかなお酒―――これ
が、ディープなフレンチキス。
ジンジャービールとラズベリー
ビューレをベースにして、アプリ
コットブランディとシャンパン
で香りづけをした爽やかなお酒
これが、左右の頬にかわるがわる、
涼風みたいな口づけをするフラ
ンス風の挨拶のキス。
「どっちなの?」
「ふふふ、知っているくせに」
少女は、大人になった。どちらの
フレンチキスも、味わったことが
ある。
本当みたいな嘘のお話が人を
酔わせ、人を幸せにするとい
うことも知っている。
佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
ぴんころ地蔵側
~ヤナギダ~
☎0267-62-0220