先日「クォーツ時計が動くしくみ」について説明しました。
その前に「時計が逆回転してしまう」という問題も受けましたので、何が原因なのかを推測ではありますが説明したいと思います。
結論から言いますと、「ステーターが変形しており、ローターと最も隙間の狭い部分が設計の狙いと異なってしまったため」と判断されます。
通常(コイルの電流OFF)では、この状態でローターが安定しているとします。
それは矢印の部分が、磁石でできているローターに最も近いために、吸引する力が働くからです。
それが、何らかのストレスを受けて変形して、この図のようになってしまうと、ローターの静止位置がずれてしまいます。
こうなってしまうと、コイルに電流が流れた際、近い方の回転、通常の反対方向に回転してしまうのです。
これが、時計が逆回転してしまう原因の一つと考えられます。
一般的に、部品にはガタがありますので、何かの衝撃で隙間の位置関係がずれて正常の回転に戻ることも考えられるのです。
よって、逆回転してしまう不良品に関しては、ステーターを逆組しても元に戻るとは言い切れません。
ステーターの変形を直し、ローターの静止位置を修正してやる必要があります。
今回は、クォーツ時計が動く仕組みについて説明したいと思います。
ごくシンプルな電磁石で動いていますので、コイル、電磁石、方位磁針をイメージできる方は、理解できるかと思います。
これがわかれば、ステーターをひっくり返すだけで、なぜ逆回転時計に改造できるのかが納得できるでしょう。
ここにモーターの構造を簡単に表した図があります。
本来はこれにコイルが付きますが、図では省略しています。
(パーマロイ材といって、磁場内では磁石になりやすく、磁場から離れると磁力が残りません)
青色がローターと呼ばれる磁石です。
(上部に歯車が付いており、回転して動力を伝えます)
青色のローターは方位磁針の様に、くるくると回ります。
さて、この状態でN極、S極はどこになると思いますか?
答えは、この様な状態です。
なぜでしょう?
それは赤い矢印の部分が最も近く、磁石が吸引して安定するからです。
方位磁針に金属を近づけると、正しい方角を指さないのと同じですね。
実は、このちょっと傾いた状態が回転方向を決定するのです。
次に、コイルに電気を流し、ステーターを強力な電磁石にします。
すると、同極同士が反発して、反時計方向にローターが回ります。
ステーター全体が強力な電磁石になりますので、隙間の大小にはあまり影響を受けません。
この後、コイルの電流をOFFにします。
パーマロイ材の特徴により、ステーターの磁気は消えます。
すると、ステーターとの隙間の少ない所に吸引し、安定します。
どこかで見た図に似ています。
そうです。
最初の図で、N極とS極が入れ替わった状態です。
ローターは1秒間に半回転し、あとはコイルに流す電流の向きを変えてやることで、同じ方向に歯車を回転させているんです。
ステーターをひっくり返すことで、ローターの静止位置が右に傾き、回転方向が逆になるんですね。
以上です。
ちょっと前に「私の時計も逆に回転してしまいます。HPの方法で修理可能でしょうか?」というメールを頂きました。
逆に回転する時計は、Youtubeでも見れますので、ごく低い確率で市場に出回っているのでしょう。
一般的な掛け時計ならば、私の方法で回転方法を変えることができますが、元々逆回転だったもの、途中から逆回転になってしまったものは、いつまた回転方向が変わるか予測できないので、改造はやめた方がいいと思います。
その逆回転時計は、とても珍しい貴重なものだと思って、そのまま逆回転を楽しむのが最も良い選択だと思います。
メーカーが一流ならば余計です。
膨大な公差計算と逆組防止等のポカヨケが盛り込まれた緻密な設計。
その規格通りに部品を作り上げる製造工場。
熟練された作業者が監視する中で、最先端の製造ラインで組み込まれた上に、数々の検査をかいくぐっての、まさかの逆回転時計の市場流出!
その時計を手にするなんて、なんて運の強い方でしょう!
みんなに自慢しちゃって下さい。